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しおりを挟む「ば、か......こんなところで...」
「あれ~、確かこの辺だったと思うんだけど...」
「どこ行っちゃったんだろ...」
!!
さっきの女性2人組の声だろうか。
人混みで上手く撒けたと思ったが、どうやら石畳を駆け抜けたところを見られていたらしい。
黒田も声のする方へ視線を投げかけ、動作をピタリと止めた。
「あ、こっち側って土手になってるんだ...!人も少ないし花火も良く見えそうだよ」
小さかった声が、どんどんこちらに近付いてくると、自然と身構えてしまう。
悪いことをしてる訳ではないのだから、息を潜める理由なんてないのに、お互いに口を開くことはない。
ガサガサ、と木の枝や葉を掻き分けた女性2人がようやく顔を覗かせると、俺を隠すように黒田の身体が近付いた。
「...あっ、!」
彼の大きな身体越しに見た女性2人の顔が、見る見るうちに赤く染まっていく。
「...」
彼女らのその表情を見るだけで、黒田をどんな気持ちで見ているのかが分かってしまい、彼の浴衣をキュッと掴んだ。
「あ、あの...私たち2人で行動してるんですけど、そっちも2人ですよね...?もし良かったら、一緒に見て回りませんか...?」
「...えっと...、」
頭を搔く黒田が、困ったように笑う。
「友達同士ですよね?だったら、私たち入れて4人で回った方が楽しいと思うし」
可愛い浴衣に調った容姿。
1人は大人っぽくて、もう1人は背が小さいカワイイ系。
友達同士
その言葉にチクリと胸が痛んだ。
指先を彩るネイルやキラキラと光るド派手なピアスがあまりにも女性らしくて、自分の指に視線を落とす。
どこからどう見ても男の手にしか見えない。
男だから当たり前なのだけれど...、そんな些細なことも癪に障る。
「何より凄く顔が好みなんです...!」
「初めて見た時からめっちゃカッコイイって思いました...!」
猛烈なアピールに苦笑を零す黒田は、どうにかして彼女らを傷付けまいと言葉を選んでいる様子だった。
「お願いします...!是非、私たちと一緒に...!」
「だめ」
彼女らの発言を真っ先に否定したのは、紛れもなく俺自身。
黒田の身体を背後からぎゅうと抱き締め、ぼっ立ちする女性2人を静かに見据える。
「俺のだから、あげない」
「「え...」」
一瞬何が起きたか分からなかったのだろう。
お互いに顔を合わせ、忙しなく視線を泳がせている姿を見ては、大きなため息を吐いた。
「せっかくいいところだったのに...」
わざとらしく黒田の浴衣の中に指を滑らせれば、今以上に顔を赤らめて慌てて逃げようとする。
「ご、ごめんなさい...!」
「そう言う関係だって知らなくて...、し、失礼します...」
「あ、待って。これ...貰いすぎたから少し食ってくれない?」
黒田から一旦離れ、土手の上に置いてあった大量の食べ物をいくつか2人に手渡せば案の定きょとん、とした表情を浮かべた。
「流石に男2人でも食いきれないから、貰ってくれたら助かるんだけど...」
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