119 / 312
119
しおりを挟む「ば、か......こんなところで...」
「あれ~、確かこの辺だったと思うんだけど...」
「どこ行っちゃったんだろ...」
!!
さっきの女性2人組の声だろうか。
人混みで上手く撒けたと思ったが、どうやら石畳を駆け抜けたところを見られていたらしい。
黒田も声のする方へ視線を投げかけ、動作をピタリと止めた。
「あ、こっち側って土手になってるんだ...!人も少ないし花火も良く見えそうだよ」
小さかった声が、どんどんこちらに近付いてくると、自然と身構えてしまう。
悪いことをしてる訳ではないのだから、息を潜める理由なんてないのに、お互いに口を開くことはない。
ガサガサ、と木の枝や葉を掻き分けた女性2人がようやく顔を覗かせると、俺を隠すように黒田の身体が近付いた。
「...あっ、!」
彼の大きな身体越しに見た女性2人の顔が、見る見るうちに赤く染まっていく。
「...」
彼女らのその表情を見るだけで、黒田をどんな気持ちで見ているのかが分かってしまい、彼の浴衣をキュッと掴んだ。
「あ、あの...私たち2人で行動してるんですけど、そっちも2人ですよね...?もし良かったら、一緒に見て回りませんか...?」
「...えっと...、」
頭を搔く黒田が、困ったように笑う。
「友達同士ですよね?だったら、私たち入れて4人で回った方が楽しいと思うし」
可愛い浴衣に調った容姿。
1人は大人っぽくて、もう1人は背が小さいカワイイ系。
友達同士
その言葉にチクリと胸が痛んだ。
指先を彩るネイルやキラキラと光るド派手なピアスがあまりにも女性らしくて、自分の指に視線を落とす。
どこからどう見ても男の手にしか見えない。
男だから当たり前なのだけれど...、そんな些細なことも癪に障る。
「何より凄く顔が好みなんです...!」
「初めて見た時からめっちゃカッコイイって思いました...!」
猛烈なアピールに苦笑を零す黒田は、どうにかして彼女らを傷付けまいと言葉を選んでいる様子だった。
「お願いします...!是非、私たちと一緒に...!」
「だめ」
彼女らの発言を真っ先に否定したのは、紛れもなく俺自身。
黒田の身体を背後からぎゅうと抱き締め、ぼっ立ちする女性2人を静かに見据える。
「俺のだから、あげない」
「「え...」」
一瞬何が起きたか分からなかったのだろう。
お互いに顔を合わせ、忙しなく視線を泳がせている姿を見ては、大きなため息を吐いた。
「せっかくいいところだったのに...」
わざとらしく黒田の浴衣の中に指を滑らせれば、今以上に顔を赤らめて慌てて逃げようとする。
「ご、ごめんなさい...!」
「そう言う関係だって知らなくて...、し、失礼します...」
「あ、待って。これ...貰いすぎたから少し食ってくれない?」
黒田から一旦離れ、土手の上に置いてあった大量の食べ物をいくつか2人に手渡せば案の定きょとん、とした表情を浮かべた。
「流石に男2人でも食いきれないから、貰ってくれたら助かるんだけど...」
20
お気に入りに追加
853
あなたにおすすめの小説



身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる