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「わぁ~...!」
到着して早々、ズラリと並んだ屋台や浴衣姿の人々に目を輝かせる。
「凄い...!大人になってから来ると、趣があるな...!」
「そうだね、思ってたほど人も多くないみたいだ」
「あっちは何があるんだろ...、あ!上には神社があるんだって、後で行ってみよ?取り敢えずお腹すいたからこっちに」
目を輝かせながら駆け出そうとする俺の腕を掴んだ黒田が、自分の元へと引き寄せる。
肩にあたる黒田の体温と匂いにドキリとした。
「鏡夜...オレから離れないで」
「うっ...、...わかってるよ...」
「離れ離れにならないように、手繋ごうか」
「え、や...それは...駄目だ...、先生が変な目で見られる...」
屋台の明かりで黒田の目が宝石のように輝く。
ルビー色に輝く瞳で見つめられれば、吸い込まれそうで、息をすることをも忘れてしまいそうだった。
「オレは君のことを自慢したいから見られても問題ないって」
「...、...ばか」
行き交う人みんなが、黒田を目で追う。
彼氏連れの女性も頬を赤らめ、振り返ってまで見ている。
こんなに綺麗な女性が沢山溢れる中で、俺に向けて言った言葉に、嬉しさが込み上げる。
女性特有の可憐さだって、高くて可愛らしい声だって、柔らかな肌だって持ち合わせていないのに、彼は真逆な俺を自慢したいと思っているのだ。
...ほんとは、俺だって手繋ぎたい...。
「みて、あの人超カッコよくない...!?」
「え!待ってやばい...!!」
?
少し遠くでこちらを見やる女性2人組がキャピキャピとはしゃいでいる。
「彼女と来てるのかな...?」
「いや、なんか向こうも男2人っぽい。しかも隣は綺麗系」
「マジじゃん!ちょ、声掛けよ」
人混みの間を通ってこちらへ向かってくる女性を目の当たりにしては、黒田の浴衣を引っ張った。
「せんせ...、早く行こ」
「ん?ああ、お腹すいてるんだもんね。食べたいものはあるかな」
何も知らない黒田の背中を押しながら早く早くと急かし、後ろから迫り来る女性から逃げる。
「あ」
「んぷっ」
少し行ったところで突然黒田が立ち止まり、目の前の大きな背中に衝突した。
何を見ているのかと、視線の先に目を向けてみると「生ビール」の文字がぶら下げられている。
なるほど、これか。
「鏡夜も何か飲むでしょ?」
「...ん。これがいい」
ビールとラムネの代金を支払った黒田に屋台の女性が「イケメンだからサービスね♡」などとほざきながら、通常より大きいサイズのコップにビールを注ぐ。
「はい、どうぞ♡」
「どうもありがとう。鏡夜、後は適当に食べ物でも買って座りながら食べよ」
「たこ焼き、焼き鳥、クレープ」
「はいはい」
2名の追っ手から隠れつつ、食べたいものを購入していき、さっさと石畳を通り抜ける。
「いやぁ、今日はやけに蒸し暑いな...」
「俺の綺麗な身体がベタベタする...お風呂入りたい...」
少し歩いたところに緩やかな土手を見付けては、芝生の上に座り込んだ。
にしても...
「どんだけオマケ貰ってんだ」
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