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しおりを挟む「もし先生がお望みなら...今まで身に付けるの避けてた紐みたいな下着、つけてあげてもいいけど...」
......って、あれ?
これじゃあ、マジで俺がこいつと一緒に行きたくて必死になってるみたいじゃね...?
うわ、何それ恥ずかしい。
せっかくのお祭りだから♡とか、浴衣デートしたいから♡って、女子か。
あんな下着を身に着けてまで黒田の浴衣姿を拝みたいってマジで変態に拍車がかかっている。
...そうだ、こんな時でも駆け引きを忘れてはいけないぞ、碓氷鏡夜。
がっつき過ぎると男は引くらしい、落ち着け。
「...コホン」
1つ咳払いをし、彼の身体から身を離した俺は、ぷいとそっぽを向いたまま小さく口を尖らせる。
「...やっぱ、行くのやめよ」
「鏡夜は色が白いから、浴衣がよく似合うんだろうな...。それに...あんなに嫌がっていた下着を穿いてまでオレと行きたいんだもんね...?いいよ?浴衣着よっか」
釣れた...、だと?
赤く染る頬に端正な顔を近づけた黒田がニコリと笑う。
この男も大概変態だったようだ。
まあ...、俺に女物の下着を買い与えてる時点でかなり悪趣味だし、変態なのは分かりきっていたことか。
にしても、あんな下着穿いてお祭りって...変なこと口走っちゃったかも...。
「楽しみだな...早く土曜日になって欲しい」
普段見せないような無邪気な笑顔に、胸がきゅう、と締め付けられる。
......恋愛の参考書にも、似たもの同士は長続きするって書いてあったし、こいつが楽しみなら...それでいっか。
「ね...、そう言えば今日はオレのこと可愛がってくれるんだったよね?」
「え?ああ...そう、だな...」
突然入った雄のスイッチに怯んだ俺の頭を、彼が優しく引き寄せる。
「やっぱり、オレが可愛がってもいい...?」
「それは...んむっ!」
発言しようとした瞬間唇を塞がれ、そのまま床へと押し倒されると、彼の手が服の中へと滑り込んだ。
ーーーーー
ーーーーーーーー
水曜日
「っ...」
「...碓氷先生?どうしたんすか」
「や...なんでも。次、こっちな」
月曜日以降、吉野は数学に目覚めたのか昨日、今日と勉強を教えて欲しいと頼み込んできた。
友人からの誘いも断り、ただ黙々と出された数式を解いていく姿に感心する以前に、心配になる。
なんか、嫌なことでもあったのかな...。
勉強しろ、勉強しろと常日頃口を酸っぱくして言っていたが、高校2年生の一時しかない青春全てを勉強に費やせと言ったわけではなかった。
きっと、俺が内申のことを口走ったせいでムキになってしまったのだ。
期末テストが近いとは言え、これから夏休みも始まるし、吉野の付き合いが悪くなったからと言って友達から省かれたりなんかしたら...流石にいたたまれない。
「その...悪かったな...、お節介なこと言って...」
「え...?...なんのことですか。今日ずっと顔赤いし、なんか変ですよ」
顔が赤い、と言われドキリとする。
見透かす様な目で見られるだけで、余計に身体が熱くなった。
「こんな暑い日にジャケット着て、ネクタイも上まで締めて...」
「...極度の寒がりなんだ」
「少し汗かいてますけど」
「っ、汗じゃない...。私語を慎まないなら、帰る」
そっ、と視線をノートに落とした吉野が、小さな声で「先生から話しかけてきたのに」と呟く。
夕方にもかかわらず青々とした空が広がっている窓ガラスに視線を向けては、忙しなく脚を組み直した。
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