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しおりを挟む「おいし?」
「...ああ」
「甘いもの好き?」
「...まあ」
パンケーキの上に散りばめられたミックスベリーが宝石のように色鮮やかで、メープルシロップがかけられたことにより一層のこと煌めく。
そのままパクリと口へ運び、目を輝かせた俺を見て、彼の口角は緩やかな弧を描いた。
「鏡夜のこと、もっと知りたいな。好きな食べ物教えてよ」
「...食べ物?......和菓子...、羊羹とか大福とか...」
「へぇ、和菓子か。美味しいもんね」
甘酸っぱいパンケーキをナイフとフォークで切り分ければ、ミルクティーを飲む黒田に突き出す。
「...あーん」
「ふふ...ありがと」
......前までは、こいつのことを知りたいとすら思わなかったし、誕生日とか血液型とか聞かれた時も何でそんなことって思ったけど...
「ん、甘いね」
確かに、今なら黒田のこと沢山知りたいって思う、かも...。
「黒田先生は...何、好き?」
俺から質問されるとは思っていなかったのだろう。
目をまん丸くした彼が、俺の腕に触れる。
「鏡夜」
「いや、そうじゃなくて。食べ物で」
「んー...食べ物なら、やっぱりお肉かな」
「嫌いな食べ物は?」
「嫌いって程じゃないけど、強いて言うなら豆類」
...なるほど。
お弁当を作る時、枝豆とか大豆は避けた方がよさそうだ。
魚とか煮物が多かったけど、今度は肉メインのお弁当も作ってみるか...
って、影響されるのが早すぎる!
「他には聞きたいことある?」
ソファーの上で気持ちよさそうに寝るきなことあずきのしっぽが、ゆらゆらと揺れる。
開け放った窓から爽やかな風が入り込むと、若葉の香りが室内に広がった。
「ない」
「ああ...無いんだ...。それより鏡夜、住むところはどうするの?」
数日間俺をストーキングしていた黒田は、黒焦げになり住める状態ではないアパートを見て驚愕したと言う。
そりゃそうだ。
「...部屋の物はほぼ燃えてしまったが、火事があった次の日に損害賠償金を振り込むって連絡があったし、礼金も返ってくるから明日辺りにでも物件探しに行こうかなって」
「...」
眉間にしわを刻み、不服そうな表情を浮かべた彼が、左右に頭を振った。
「...?なに」
「オレの家に住めばいいよ。家賃だってかからないし」
...住む?
黒田の家に...?
「オレとずっと一緒にいられるよ」
...!
「きなちゃんとあずちゃんも喜ぶと思うんだけどな」
......!!
良いことづくしの甘い誘惑に、まんまと手を取りそうになったが、一旦思考を停止して考える。
家賃だってかからない、とは?
衣食住もろともお世話してやるよ、的な?
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......ヒモ?
「...や...、やめとくわ」
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