85 / 312
85
しおりを挟む
20分後
「わかおうじ、聞いてる?お~い」
「僕外に出て煙草吸っていいですか、その人うるさいんで」
「だーかーらー、俺は神崎のあの態度がさー」
テーブルの上に肘を着き、ふわふわとする頭を細い腕で必死に支える
少しでも油断をすると顔面から倒れ込んでしまいそうだ。
辛うじてある意識を保ちつつ口を開いていると、隣の黒田も席を立った。
「じゃあ、オレも1本付き合おうかな」
そそくさと外に逃げ出すいい男2人。
残ったのは、ネコであろう35歳の姫神政宗だけ。
「う、碓氷せんせ...?」
「なぁに?」
揺らめく視界の中、姫神が困った顔を浮かべる。
俺の心配をしてくれているのか、空いたグラスに水を注いだ彼は、そのグラスをそっと差し出してきた。
「みず、や」
「あっ、こらこら...!それは黒田先生のお酒だって!君はお水!」
「やだ!...姫神せんせーのお酒1口ちょーだい」
「だめだよ、これ以上酔っ払ってどうすんの!」
「酔ってない!お酒ちょーだい。あっ、若王子の奴もらお~」
若王子の席に置いてあったグラスを奪い、姫神のグラスにごちんとぶつける。
「かんぱ~い」
「うん...、乾杯」
一気に酒を飲み干す姿を見て、姫神は頭を抱えた。
酒!うまい!
そう思ったところまでは、意識があったのに、それ以降の記憶がぷっつりと途絶えてしまった。
次に意識を取り戻したのは、23時頃。
頬をぺちぺちと叩かれながら俺の名前を呼びかける声に煩わしさを感じて、酷い眠気の中うっすらと目を開ければ、目の前にはあの黒田が居るではないか。
「碓氷先生、もうお開きだって」
「んー...」
「どこに帰るの、君の家...昨日行ったら黒焦げだったけど」
家...、ない。
ホテルまで代行...うーん、こんな状態だとチェックインすら出来なそう。
「...ひびき、れんらく...」
「響...?」
重い頭をなんとか持ち上げ、スマホを取り出す。
「あえ...?うー...、こうら...、や...ちがう...」
何度やってもパスコードが上手く入力出来ない。
「ぜろ...なな...ぜろ...な.........くぅ...」
「碓氷先生、寝ちゃダメだよ」
うつらうつらとしながら自分の誕生日を必死に入力したにも関わらず、無慈悲にもロックがかかってしまった。
「うっ...こわえた...」
「壊れてないから泣かないで」
朱に染まった肌を滑る涙を親指で拭い、黒田が優しく声をかけてくれる。
「お家に帰ろ?」
見るとドキドキする笑顔、大きくて安心する手に頭を撫でられた俺は、堪らず彼の胸にしがみついた。
「...くろだ」
記憶にしっかりと刻み込まれた彼の匂い。
煙草と黒田の匂いが混じったその香りは、俺の胸をきゅう、と締め付ける。
「...」
「あら、また碓氷先生潰れちゃったんですね。この前と言い、お世話役なんて大変じゃない?」
年配の女性教員が黒田に喋りかける声が、ぼんやりとした頭の中に届く。
黒田の匂いと体温が心地よ過ぎてうとうとしていると、ふわりと身体が宙を舞った。
「いえ、他の方には任せておけませんから」
お姫様抱っこで外まで運ばれ、車の後部座席に寝かされる。
「君の車も運ぶから、悪いけど鞄の中触るよ」
艶やかな髪が、街灯の明かりで煌めく。
鞄の中に手を突っ込み、車の鍵を探す彼の手をそっと、掴んだ。
「......、ゆめ...みたい...、ずっと一緒に...」
「わかおうじ、聞いてる?お~い」
「僕外に出て煙草吸っていいですか、その人うるさいんで」
「だーかーらー、俺は神崎のあの態度がさー」
テーブルの上に肘を着き、ふわふわとする頭を細い腕で必死に支える
少しでも油断をすると顔面から倒れ込んでしまいそうだ。
辛うじてある意識を保ちつつ口を開いていると、隣の黒田も席を立った。
「じゃあ、オレも1本付き合おうかな」
そそくさと外に逃げ出すいい男2人。
残ったのは、ネコであろう35歳の姫神政宗だけ。
「う、碓氷せんせ...?」
「なぁに?」
揺らめく視界の中、姫神が困った顔を浮かべる。
俺の心配をしてくれているのか、空いたグラスに水を注いだ彼は、そのグラスをそっと差し出してきた。
「みず、や」
「あっ、こらこら...!それは黒田先生のお酒だって!君はお水!」
「やだ!...姫神せんせーのお酒1口ちょーだい」
「だめだよ、これ以上酔っ払ってどうすんの!」
「酔ってない!お酒ちょーだい。あっ、若王子の奴もらお~」
若王子の席に置いてあったグラスを奪い、姫神のグラスにごちんとぶつける。
「かんぱ~い」
「うん...、乾杯」
一気に酒を飲み干す姿を見て、姫神は頭を抱えた。
酒!うまい!
そう思ったところまでは、意識があったのに、それ以降の記憶がぷっつりと途絶えてしまった。
次に意識を取り戻したのは、23時頃。
頬をぺちぺちと叩かれながら俺の名前を呼びかける声に煩わしさを感じて、酷い眠気の中うっすらと目を開ければ、目の前にはあの黒田が居るではないか。
「碓氷先生、もうお開きだって」
「んー...」
「どこに帰るの、君の家...昨日行ったら黒焦げだったけど」
家...、ない。
ホテルまで代行...うーん、こんな状態だとチェックインすら出来なそう。
「...ひびき、れんらく...」
「響...?」
重い頭をなんとか持ち上げ、スマホを取り出す。
「あえ...?うー...、こうら...、や...ちがう...」
何度やってもパスコードが上手く入力出来ない。
「ぜろ...なな...ぜろ...な.........くぅ...」
「碓氷先生、寝ちゃダメだよ」
うつらうつらとしながら自分の誕生日を必死に入力したにも関わらず、無慈悲にもロックがかかってしまった。
「うっ...こわえた...」
「壊れてないから泣かないで」
朱に染まった肌を滑る涙を親指で拭い、黒田が優しく声をかけてくれる。
「お家に帰ろ?」
見るとドキドキする笑顔、大きくて安心する手に頭を撫でられた俺は、堪らず彼の胸にしがみついた。
「...くろだ」
記憶にしっかりと刻み込まれた彼の匂い。
煙草と黒田の匂いが混じったその香りは、俺の胸をきゅう、と締め付ける。
「...」
「あら、また碓氷先生潰れちゃったんですね。この前と言い、お世話役なんて大変じゃない?」
年配の女性教員が黒田に喋りかける声が、ぼんやりとした頭の中に届く。
黒田の匂いと体温が心地よ過ぎてうとうとしていると、ふわりと身体が宙を舞った。
「いえ、他の方には任せておけませんから」
お姫様抱っこで外まで運ばれ、車の後部座席に寝かされる。
「君の車も運ぶから、悪いけど鞄の中触るよ」
艶やかな髪が、街灯の明かりで煌めく。
鞄の中に手を突っ込み、車の鍵を探す彼の手をそっと、掴んだ。
「......、ゆめ...みたい...、ずっと一緒に...」
20
お気に入りに追加
853
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。





塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる