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しおりを挟む「珍しいですね、黒田先生が僕たちに絡むなんて」
おい若王子、お前まで俺を無視して喋り出すな。
「普段はあまり喋る機会もないし、こういう時にでもと思ってさ。前回酔い潰れた碓氷先生を介抱するのも楽しかったし...、碓氷先生の普段見れないような姿、2人にも見せたかったよ」
ジンジャーハイを受け取り、一気に飲み干す黒田の太腿が、俺の脚にピッタリとくっつく。
「...その話はよしてくれ」
「えー、本当に面白かったから話したいのに、超陽気だったもんね」
こっちはそもそもに記憶がないんだよ...!
「ふふ、私も碓氷先生の普段見れないような姿は気になるな」
気になられても困るし、見たら見たで困るのは姫神自身だろう。
と、心の中で冷静に諭す。
...にしても、黒田の野郎、なんのつもりだ?
壁際になんか座るんじゃなかった、俺が姫神の隣に座れば良かった、なんて今更思っても遅いのに
隣に座ってるだけで、嫌になるくらい意識してしまう。
「碓氷先生のってお酒じゃないよね?顔赤いけど、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です...ちょっとこの部屋が熱いだけで...」
心配そうに眉を下げた姫神に息が詰まる。
今日は、神崎の舐め腐った態度とか、神崎が俺の言うことは聞かずに姫神の言うことだけを素直に聞くところとか、普段から溜まりに溜まった不満をさらけ出そうと思ったのに...!
黒田が隣にいるせいで早く帰りたい欲が高まる。
「黒田先生!?退いてください!てかなんで若王子先生がそこに座ってるんですか!?」
化粧直しから戻った石井が、黒田と若王子に文句を言い放つ声で現実に引き戻される。
すげぇメイク直ししてる...。
「オレ、今日はここの席座るから。君はあっちね」
若王子も黒田も退く素振りは一切見せず、おじさん教員の輪を指さすばかり。
数分睨み合っていたが、ガックリと肩を落とし背を向ける石井に勝利の笑みを浮かべる。
負のオーラを纏った姿は、いつもの華やかな彼女とは程遠い。
なんて自分の欲に忠実な男たちなんだ...女相手に大人気無さすぎる。
「黒田先生って、怒らなそうですよね。いつもほわほわしてます」
無邪気な笑顔で黒田に質問をする姫神を横目で見つつ、取り分けてもらったサラダを口へ運んだ。
こいつは見た目に反して怒りっぽい。
しかも怒った時の目力で人を殺めれるんじゃないかと思う程、冷淡な目付きをする。
まんまと騙されてるな、姫神。
「僕、黒田先生は腹黒いと思いますよ。いつも目が笑ってないですもん」
「はは、酷いなぁ。全然腹黒くないよ?」
真っ黒だわ。
それから他愛も無い、中高の部活動何やってた?とか、修学旅行どこだった?とか終わりの見えない会話を繰り広げ、酒も食も話も止まらなくなった男4人は大盛り上がり。
「姫神先生が茶道部なのは分かりますよ。若王子先生の雑草部って、なんですか」
「え、碓氷先生ご存知ない?もしかして、ジェネギャ?」
ジェネレーションギャップをジェネギャって略すな、腹立つ。
喋り過ぎて喉が乾いた。
烏龍茶の入ったジョッキを掴み、1口、2口と飲んだ俺は「ん?」とグラスの中身を覗く。
「...あれ、碓氷先生が飲んでるのって、オレのウーロンハイじゃない?」
あ、と小さく声を漏らした姫神と若王子。
少しだけ、距離を取られた。
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