秘めやかな色欲

おもち

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「珍しいですね、碓氷先生がこんな時間までテスト作成してるの」

月曜日の20時

石井は早々に帰宅したが残りの3学年の担任は全員テスト作成に追われていた。

「仕事してる時は何も考えなくて済むんで」

土曜日は恥ずかしながら泣き疲れて寝てしまったが、それとは反して日曜日は一睡も出来なかった。
1人で居たくなくて、出張から帰っていた東條と久しぶりに会ったものの、食事もほぼ喉を通らない。

その上、セックスをする気にもなれなかった。

ただ隣に居てくれる東條に罪悪感を感じ、結局は「もう会うのはやめよう」とまで伝えてしまう始末。


最低だ。


俺のことを好いてくれる人間を自ら切り離すなんて、どうかしている。

そうは思ったが、東條と黒田を比べてしまうのだ。

黒田の声はもう少し低くかった。
抱き締められた時や、頭を撫でられた時の安心感はもっと凄かった。
細かい気配りが出来て、俺がして欲しいことを何でもしてくれた。

何より、彼と一緒に過ごした日々はとても楽しかった。

例えそれが、彼にとって偽りだったとしても。

「社畜のセリフですね」

若王子のディスりにも反論せず、PCの画面を見つめる。


眠いけど、寝たくない。

寝たらまた、黒田の夢を見る。
夢と現実の区別がつかなくなることが怖くて、眠れない。

猫のぬいぐるみもあいつの家に忘れてきちゃったし...。

「碓氷先生、知ってます?」

「何がですか...」

つーか、いつも早く帰宅する若王子までテスト作成に時間かけてんじゃねぇ。

暴論を心の中で吐きつつ、目頭を解す。

向かいの席の姫神が見回りをするために懐中電灯を片手にした瞬間、タイミングを見計らっていたかのように若王子は張り付けた笑顔で口を開いた。

「この学校、出るらしいですよ。丁度今ぐらいの時間に」

出る...?

「えっ...幽霊ってことですか?...幽霊なんてそんな非科学的なもの信じられませんが」

「何人も見たって言ってました、首を吊った女性らしいです。去年、急に退職した国語の先生居たでしょ...どうやら見回り中にその霊見ちゃって...精神的におかしくなったんだってさ」

ガシッ

「ひゃっ!」

突然背後から肩を掴まれては、驚きのあまり3mくらい飛び跳ねる。

「おや、可愛らしい声が出ましたね」

若王子が楽しそうに笑う姿がシンプルに癪に障る。
こいつマジで食ってやろうかな。

「つつつ着いてきてください...碓氷先生」

「な、なんで俺が...!」

「だって、幽霊信じてないって言ったじゃないですか...!」

ガタガタと震える姫神が俺の身体を揺さぶる。

もう一度言おう、なんで俺なんだよ...!

若王子と仲がいいのだから、こいつに着いてきてもらえば良いだろうが...!

俺は怖いのが苦手だ!!

「し、信じてないですけど...もう帰るんで、お疲れさまです」

テストの作成を一旦切り上げた俺は鞄の中にありったけの荷物を詰め込み、慌ただしく職員室を後にする。

「......おっかねー...」

こんな気味の悪い夜の学校を見回ることなんて出来るか。
辺りをキョロキョロしながら暗い廊下を一目散に逃げ帰った。
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