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しおりを挟む「黒田先生、茶」
「はいはい、どうぞ」
グラスに注がれたお茶を飲み、2人の話す声を聞きながらテレビを見る。
そう言えば、きなことあずきの姿が見あたらない。
ふわふわ...抱っこしたい...。
「なんか気になる?」
キョロキョロ辺りを見渡していると、それに気付いた黒田が俺の耳に唇を寄せる。
「ねこ...」
「ああ、きなちゃんとあずちゃんは寝る時だけ別の部屋にいるんだよ。今は寝てると思うから明日抱っこしようね」
微かに香るお酒の匂い。
コクリ、と頷けば彼は微笑みながら俺の頭を撫でた。
あー......ムラムラする。
「鏡夜って、きなちゃんとあずちゃんに攻撃されないの?」
「されない。抱っこしてって寄ってくる、可愛い」
「マジ?僕なんか、噛まれて引っかかれて大変なんだから」
徐に差し出された腕へ視線を落とせば、引っかかれた箇所にうっすら血が滲み、皮膚が腫れ上がっている。
小さな歯型が並んだその腕は見るからに痛そうだった。
「光悦は威嚇されてるのに毎回触りに行くからだよ。ちょっとお手洗いに行ってくるね...お前は鏡夜に手を出さないように」
「はーい」
気の抜けた返事をした光悦は、黒田がリビングから出ることを確認した瞬間、俺の頬に触れる。
「!...おい、殺されるぞ...」
「バレなければ大丈夫。お酒、1口だけ飲む?」
「飲まない!」
「この前の少しだけ酔った鏡夜が可愛かったな、もう1回見せてよ」
「んっ...♡」
耳元で囁くな、ゾクゾクすんだろうが!
「ね、1口だけ...」
「んむっ!?」
またもや口移しで飲まされたお酒の苦さに顔を顰めた。
「は、...ぁ、ばかばか...!なんで飲ませるんだよ...!」
「ばかばか...かわいい...」
可愛くない。
光悦の太腿をぺちぺち叩いているとトイレのドアが閉まる音が聞こえ、咄嗟に身を離した。
片膝を立て、何事もなかったかのように酒を飲む光悦は短い前髪を掻き上げる。
「何もしてないだろうな?」
「もちろん。僕が椿の恋人に手を出すわけないよ」
嘘つくな。
身体、あちぃ...。
この前の店で飲んだものとは格が違う。
アルコール度数が高めの酒だったのだろう、酒が回るのが早く、頭がぼんやりする。
「何だか顔が赤いね。匂いで酔っちゃったかな。光悦、少し窓開けてくれる?」
「わかった」
胸元のぬいぐるみをギュッと抱き締めていると、俺を心配した黒田が顔を覗き込んでくる。
ああ、いい顔...。
「黒田...おめめきれい...」
「えっ、オレの目...?」
「うんっ、キラキラしてる...きれい」
「...お前、鏡夜に酒飲ませてないよね?酒飲んだ時しか黒田って呼ばないんだけど」
「僕は飲ませてない、鏡夜が勝手に飲んでた」
数分後、一口の酒で完全に気分を良くした俺はへらへらと笑いながら黒田のグラスに手をかける。
「ちょうらい」
「だめだめ、お酒はもうおしまい」
「うー...」
潤んだ瞳、白い肌は首まで朱に染まり、肩で息をする姿は黒田や光悦にとって目に毒でしかない。
熱い、熱いと舌っ足らずに口にする俺に彼らの喉がゴクリと鳴る。
それに水を差すかのごとく
「みて!ぬこ!」
先程まで大事そうに抱き抱えていた猫のぬいぐるみを高々と持ちあげ、2人に自慢すると、光悦がボソリと呟いた。
「めちゃくちゃ犯したい」
「殺すぞ」
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