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しおりを挟むどうやら今日の職員会議は、わざわざ場所を移して行うらしい。
心底面倒くさい。
ペンと資料を持ち、職員室を出た俺は足早に会議室へと向かう。
早めに行って1番後ろの席に座ろ、変な話振られないように。
3学年の担任全員を置き去りにし、会議室のドアを開けると案の定俺が一番乗りだった。
職員会議が開始するまであと15分。
窓際の1番後ろの席に座り、会議室の窓から校庭のグラウンドをぼんやりと眺める。
部活の風景や夕日があまりにも目に眩しい。
思わず掌で目を覆えば、聞きなれた声がドアの方から投げかけられた。
「あれ、碓氷先生早いね」
風のように現れた黒田の白衣が翻る。
「...」
俺の存在を確認した彼が、なんの迷いもなく隣の椅子に腰をかけるもんだから思わず息を飲んだ。
あんな抱かれ方をした後だから意識してしまう...。
「席、色んなところ空いてますけど」
資料とペンを置いた彼が卓上で指を組む仕草にさえドキドキするし、胸が苦しくなる。
黒田の匂い、声、視線...気にすれば気にする程、身体が熱くなった。
「...言わせたいの?君の隣がいいんだよ」
真っ白な白衣に夕日の光が集まれば、より彼が輝いて見えてしまい、身体だけじゃなく顔さえも火照って...
「っ、...」
心臓がうるさい。
「...今日のお昼も思ったんだけどさ...やっぱり鏡夜って」
彼の細い指がこちらにのびる。
身体を強ばらせ、彼の指から逃れようとした瞬間
「あー!碓氷先生ずる~い、そこの席譲ってくださいよ」
ぞくぞくと会議室に入り込む女性教員が俺の姿を見る度「ずるい!」「代われ!」とはやし立てやがった。
俺が元々この席に座ってたんだぞ、なんで譲らなきゃいけないんだ!
黒田も困ったように笑うばかりで、何も言わないし。
「黒田先生、こっちに座りませんか?」
「ああ、いやオレは」
「ここ眩しいから、反対側の席にしましょうよ」
彼の身体に触れる女の手、媚びを売る話し方、キツい香水の匂い。
全てがウザったくて、全てがムカついた。
「...ウザい」
黒田の身体を引っ張り、彼女らの手を振り払う。
「その大きく開いた下品な口、閉じていただけますか。俺が隣に座って欲しいと頼んだんです。だから、もうどっか行ってください」
ざわめく室内に、黒田の驚いた顔。
「お、おふたりってそんなに仲良かったでしたっけ...」
「えー...黒田先生と碓氷先生って正反対じゃない?そりとかあわなそう」
「月とスッポンよね...」
おい、しっかり聞こえてんぞ。
...あ?つーか、スッポンって俺のことか?こんなに美しいなら月だろうが!!
「碓氷先生、眉間にシワ寄ってる...。可愛いくて綺麗な顔が台無しだよ...?」
「「「!?」」」
周りを取り囲んでいた女性教員が別の意味でざわめきたつ。
今まで、黒田の口から「可愛い」「綺麗」と言った褒めるような単語が出たことはなかった。
自分たちが毎朝早起きして化粧をしたり洋服を選ぶのは、黒田に褒めて貰うためなのに、まさかこのスッポンに対して言うなんて
信じられない。
と、彼女らの顔を見れば書いてある。
少しだけ、いい気分。
「会議終わったら、お茶、飲みに行きます...保健室に」
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