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12時
死んだように眠っていた俺は頭の痛みで目を覚ます。
寝るのが遅かった且つ疲れているとは言え、12時に起きるとか学生かよ。
頭痛で顔を顰めた最中、横の大きな男が視界に入った。
カーテンの隙間から差し込む光が、気持ちよさそうに眠る彼の身体を照らす。
「おい、起きろ」
「...」
「おい」
「んー...も、朝...?」
昼だ。
ガクガクと揺さぶっていると呻きながら、もそりと身体を起こす。
俺の顔を見るなり寝ぼけ眼で笑った姿に、胸が高鳴ったことは言うまでも無いだろう。
「きょうや、おはよ...」
「...はよ。もう12時だぞ」
「...ほんとだね...」
ベッドの上で伸びをする黒田は天蓋のレースを掻き分け、ベッドから下りた。
黒田の後に続いてベッドから下りようとすれば、わざわざ片膝を着いて俺の足にスリッパを履かせてくれる。
俺のことをお姫様かなんかだと思ってんのか?
確かに便利な奴だけど、わざわざそこまでしてくれなくてもいい。
「身体は平気...?昨晩は無茶な抱き方をして悪かったね」
「いや...、元はと言えば約束を破った俺が悪い...こっちこそ、ごめん...」
めっちゃ気持ちよかったし、正直怒っている黒田は嫌いじゃない。
俺の手を引いて立ち上がったかと思えば、そのまま腕の中に抱きとめられた。
その温もりと彼の匂いに安心して、目を閉じる。
カップルが喧嘩した後にする仲直りみたいでいいな...こう言うのも。
「...」
まだ離れたくない。
許されるのであれば、もう少しだけ一緒にいたい。
「シャワー...浴びる」
「じゃあオレは帰るよ」
体を離し、背を向けようとした黒田のTシャツを軽く引っ張った。
不思議そうにこちらを見つめる黒田から顔を逸らし、聞こえるか聞こえないかくらいの声で「一緒に入れ」とぶっきらぼうに告げると、彼は驚きつつも笑う。
「べ、つに...用事があるなら帰っていいけど...」
「たった今なくなった」
2人でシャワーを浴び、朝食...ではなく昼食を作って食べた。
本来であれば狭い部屋に男2人なんて息が詰まるだろが、結構心地いい。
「これ鏡夜...?」
「あ、何勝手に卒アル見てんだよ...!しかも高校のじゃねぇか...!」
「へぇ、鏡夜にもこんな時があったんだね。超不良じゃん」
目を離した隙に本棚の卒アルを引っ張り出しやがった。
それは俺の黒歴史だ。
「この時からかわいいな...、1番美人」
きゅん
「...中学の時、周りの男共が見境を無くしてマワされそうになったんだ。結果、グレて...こうなった」
「は、何それ...同じ学校だったら守ってあげれたのに」
無理だろ、学年違うし。
卒アルをパタンと閉じたかと思えば、本棚に戻すわけでもなく、自分の鞄に詰め込みやがる。
「つーか...黒田先生さ、昨日石井先生と2人きりで食事に行ったんだよな」
「あー、まあ、そうだね」
「俺は光悦と食事に行ってお仕置きされてんだぞ。女と食事に行ったあんたはお咎めなしなんて...腑に落ちない。仮にも俺たちは恋人同士なんだし、女と2人きりでってなったら流石の俺も」
「なに、嫉妬したの?」
頬杖をつきながら口角を緩やかに上げた彼の言葉に、ハッとして口を抑える。
違...なに、言ってんだ...俺。
「そんなわけ...ないだろ」
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