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しおりを挟む「オレも石井先生と毎月ご飯行くほど暇じゃないんだけどな」
困ったように笑う黒田が珍しく毒づいたことにより、石井は小さな身体を震わせる。
「...話せる人、黒田先生しか居ないんだもん...」
「はぁ...オレって本当、君に甘いよね。少しだけだよ」
どんどん小さくなって行く声に、チクリと胸が痛んだ。
ご飯?石井と2人で?
俺にはダメって言っておきながら、自分は女と行くのかよ。
石井も嬉しそうな顔しちゃって...。
...内緒で絢斗と会う約束をして、禁止されていることに抗おうとしたのは俺なのに、何でこんなにイライラしてんだ。
自分だって同性の男と食事に行く約束をした。
であれば、黒田が女性と食事に行くことも当然許してやらなきゃいけないのに。
「...」
ムカつく。
女と2人っきりになって欲しくない。
俺以外に優しくしないで欲しいなんて
そう思ってしまうのは、都合がよくて自分勝手過ぎるのだろうか。
「夜さん?」
駅の改札前でスマホを弄っていると、大柄な男に声を掛けられた。
「...はい」
「良かった、こ...絢斗です。待たせてごめんね」
こ?
「いや、問題ない」
爽やかな短髪、タレ目、高い鼻。
あっさりした端正な顔立ちに反比例したセクシーな香水の香り。
鎖骨とTシャツの間からちらりと見えるネックレスがエロい。
かなりデカいな...。
何かあったら守ってくれそうな、男らしくてガッシリした身体から目が離せない。
俺のお眼鏡にかないすぎだろ...!SSRの男だ!
「店、予約してるから行こうか」
さりげなく車道側を歩き、階段を下る時は前に、登る時は後ろにポジションを置くこの男、絶対に紳士。
「ついたよ」
しかも店のチョイスがオシャレすぎる。
こんなの、その辺の男女共にイチコロだろうな...。
あー、この男とえっち出来ないのが憎い。
えっちしてくれない恋人(仮)の存在も憎い。
「予約してた姫神です」
ん?
...ひめがみ?あれ、どっかで聞いたことある苗字。
「お待ちしておりました。お席にご案内いたしますね」
ま、姫神なんて日本を探せば何人も居るだろうし、別に珍しくもないか。
「そこ、段差あるから気を付けて」
「ああ」
通された個室の大人っぽい雰囲気に圧巻されていると、目の前の男が目を細めて笑う。
「こう言うところ、あんまり来ない?」
差し出されたドリンクメニューを受け取りながら、小さく頷いた。
「酒、弱いしあんまり外食しないから...。俺、緑茶」
「お酒弱いんだ、酔ったらどうなるか見てみたい」
馬鹿言うな、酔っ払って黒田に「抱いて♡」って頼むような男だぞ。
絶対に酒は飲まん。
適当に料理を頼んで、2人で乾杯する。
「絢斗ってさ」
「...。あ、絢斗って僕か」
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