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しおりを挟む響とは、小学生の頃から一緒だった。
身体が弱く、外に出て遊ぶことより家の中で勉強している方が好きだった俺は、他の子と比べたら色白で華奢。
尚且つ、女の子とばかり遊んでいたせいもあって、からかわれる標的にはなりやすかった。
幼少期はどうしても善悪の区別がつきにくい。
何を言ったら相手が傷付くのか、どう言うことが罪なのか。
子供から大人へ成長して行く過程で「女みたいだ」なんて、心無い言葉に傷付いたこともあった。
ただ、中学に上がれば同性の友達も出来、順風満帆な学生生活を送れるようになった。
が、1つ
自分の中に感じた違和感
『鏡夜、お前好きな子出来た!?』
それは、ときめきを抱く対象が女子ではなかったこと。
『いや、俺は...好きな子って、まだよくわかんないかも』
『マジかよ、あの子とかめっちゃ可愛くね...?すれ違った時に超いい匂いすんの』
女子の匂いより、男子の匂いにドキドキした。
『抱き締めたら柔らかそう』
ふわふわとした身体よりも、がっしりとした身体に興味があった。
『気になる子もいないの?』
『気になる子...』
教室を見回せば、窓際で談笑する彼らの中で一際目をひく少年。
周りの子より背が高くて、基本は無表情。
ただ、たまに見せる笑顔が最高に可愛い。
『若王子くん...かな』
『ばっか、あれは男。お前ら小学校一緒だったんだろ?友達じゃないのか?』
『話したことない』
あまり勉強は得意じゃないらしいが、運動神経が良くて男女共に友達が多い。
他学年の女子生徒も響と仲良くなりたいがために、頻繁にクラスへ遊びに来る。
自分とは正反対な人間である彼は、俺の憧れだった。
自ら友達を作ることをしない俺に呆れた友達は、談笑している輪まで連れていき、憧れの彼へ声を掛ける。
『響と友達になりたいんだってよ』
『あ、そうなの?なんだ、早く言ってよ...俺も鏡夜とずっと友達になりたかったんだ』
ふわりと浮かべた笑顔が眩しくて、顔が熱くなった。
この時俺は、自分の恋愛対象が女ではなく男だと言うことに気付いた。
響のことが好きだと言うことも、自分が周りの人間と違うと言うことも。
「せ...先生、碓氷先生!」
「...!」
「テストの時間、過ぎてます」
「悪い...!答案用紙、後ろから回収して。寝てる奴は起こしてやって」
予鈴にも気付かないなんて、最近本当にどうかしてる。
テストを回収して教室を出れば、足早に職員室へ戻った。
今日はテストの最終日。
昼ご飯を食べてから採点に取り掛かろうと、鞄からお弁当を取り出しては電子レンジに突っ込む。
「碓氷せんせ」
小声で耳打ちをする石井に身体を向ければ「姫神先生、元気無くないですか?」と、クソほどどうでもいいことを言ってきやがった。
「あー...そうですかね、いつもあんな感じでは?」
「違いますよ!さっきだって何も無い所で躓いたり、女子トイレに入ろうとしてたり...絶対おかしいんですよ~...」
女子トイレは流石にやばい、懲戒解雇になり兼ねない。
この大事な時期に学年主任の失踪、担任の入れ替わりがあれば、生徒達の勉学にも支障が出るだろう。
「姫神先生」
「ふぁい...」
なんだその間抜けな返事は。
「お身体の具合が悪いのですか?」
「いえ、具合は悪くないです。ただ最近色々あって...イライラすることも多いし、葛藤と自己嫌悪との戦いを強いられてるって言うんでしょうか...」
「姫神せんせ...私がお力になれることがあったら、いつでも言ってくださいね!」
「え、あ...ありがとうございます、石井先生」
俺が口を出すまでも無いじゃねぇか。
眉を下げて笑う姫神。
姫神の手をがっしりと握る石井を置き去りにして駐車場に足を運ぶ。
葛藤と自己嫌悪、ね。
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