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しおりを挟む「...ぅ...」
重い...苦しい...。
あまりの寝苦しさに目を開ける。
ああ、もう朝か...。
夜中の雨は通り雨だったのか、外を見れば降られたような形跡すら残っていなかった。
しかしながら天気はあまり宜しくないようで、今にも泣き出してしまいそうな程、どんよりとした雲に覆われている。
もう一回降りそうだな...。
「......にしても、重い...」
完全に俺を抱き枕にしている黒田は未だにスヤスヤと寝息を立てていた。
力が強過ぎて抜け出せない。
本当は起きているんじゃないかと思うレベルでぎゅううう、と強く抱き締められている。
「女の代わりにしてんじゃねぇよ...」
「...」
彼の寝顔に目を向け、じっ、とガン見してみる。
男らしいハンサムな顔にかかる髪の毛を指で退かし、頬をそっと撫でれば微かに声を漏らしたため、ビクリと身体を震わせた。
いけないことしてるみたいで...ドキドキする...。
...休みの日の朝に、一緒のベッドで男の寝顔見るの初めてだ...。
こういうのって、普通の恋人同士なら当たり前の光景なんだろうなぁ...。
そのまま一緒に起きて朝ごはん食べて、家でダラダラして...って、その当たり前のことがどれだけ幸せなのか...それが好きな人なら尚更。
あんたも、こう言うことを当たり前にした女が居たのか...?
「...椿」
「......なぁに」
「っ!?!?お、ま...起きて...っ!」
やばい、起きてるとは知らず普通に名前呼んじまった...!
いきなり名前呼ぶとか気持ち悪いよなマジで....!!
「...おはよ。身体は平気?」
「う...、ん...」
「そっか、昨日は酷いことしてごめんね」
寝起きの笑顔が眩しすぎる。
「別に...」
「ふふ...あ、もう9時か...。まだ寝ていたいけど、ランニング行かなきゃ...」
眠い目を擦りながらもそもそと動き出し、ベッドの上でパジャマを乱雑に脱ぎ捨てれば、彼の背中に残った痛々しい引っ掻き傷が露になった。
それは昨夜のセックスが激しかったことを物語っている。
「鏡夜はもう少し寝ててもいいからね」
「...ん...」
顔まで掛けた布団から目だけを覗かせ、彼の肉体を凝視する。
...背中が広くて、腕も俺のと比べ物にならないくらい太い...そんでもって筋とか浮き出てて...雄っぽい。
この身体に抱かれたことを思い出すとと、どうも興奮してしまう。
ああ、なんかいいな......。
今度なんてない、1度だけ、と決めていたが、正直2度してしまった以上3度、4度と身体を重ねてしまうのは結局同じことで。
他人とは言え彼は職場の人間であり、切っても切り離せない関係なのだと、自分自身を納得させようとするのは
また彼に抱かれたいと、心のどこかで思っているからだ。
「黒田せんせ...」
「んー...?」
「どれくらいで戻ってくる...?」
クローゼットから取り出した服に着替えた黒田が、ベッドに腰をかけ俺の頭を撫でる。
「10時くらいかな。河川敷をぐるっと走るだけだから、そんなに遅くならないと思うけど...どうして?」
「...遅かったら、帰ろうと思って...。今日新しい男の人と会う約束してるし...」
身体を起こし、ベッドへッドに投げられたスマホに手を伸ばしかけたところで
「だーめ、ちゃんとオレの家で待ってて。家の中の物は好きなよう使っていいし、過ごしやすいようにしてくれていいから」
突然腕を引っ張られ、一瞬にして彼の腕の中へ閉じ込められた。
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