秘めやかな色欲

おもち

文字の大きさ
上 下
32 / 312

32

しおりを挟む

「...ぅ...」

重い...苦しい...。

あまりの寝苦しさに目を開ける。

ああ、もう朝か...。

夜中の雨は通り雨だったのか、外を見れば降られたような形跡すら残っていなかった。

しかしながら天気はあまり宜しくないようで、今にも泣き出してしまいそうな程、どんよりとした雲に覆われている。

もう一回降りそうだな...。

「......にしても、重い...」

完全に俺を抱き枕にしている黒田は未だにスヤスヤと寝息を立てていた。

力が強過ぎて抜け出せない。
本当は起きているんじゃないかと思うレベルでぎゅううう、と強く抱き締められている。

「女の代わりにしてんじゃねぇよ...」

「...」

彼の寝顔に目を向け、じっ、とガン見してみる。


男らしいハンサムな顔にかかる髪の毛を指で退かし、頬をそっと撫でれば微かに声を漏らしたため、ビクリと身体を震わせた。

いけないことしてるみたいで...ドキドキする...。

...休みの日の朝に、一緒のベッドで男の寝顔見るの初めてだ...。
こういうのって、普通の恋人同士なら当たり前の光景なんだろうなぁ...。

そのまま一緒に起きて朝ごはん食べて、家でダラダラして...って、その当たり前のことがどれだけ幸せなのか...それが好きな人なら尚更。

あんたも、こう言うことを当たり前にした女が居たのか...?


「...椿」

「......なぁに」

「っ!?!?お、ま...起きて...っ!」

やばい、起きてるとは知らず普通に名前呼んじまった...!
いきなり名前呼ぶとか気持ち悪いよなマジで....!!

「...おはよ。身体は平気?」

「う...、ん...」

「そっか、昨日は酷いことしてごめんね」

寝起きの笑顔が眩しすぎる。

「別に...」

「ふふ...あ、もう9時か...。まだ寝ていたいけど、ランニング行かなきゃ...」

眠い目を擦りながらもそもそと動き出し、ベッドの上でパジャマを乱雑に脱ぎ捨てれば、彼の背中に残った痛々しい引っ掻き傷が露になった。

それは昨夜のセックスが激しかったことを物語っている。

「鏡夜はもう少し寝ててもいいからね」

「...ん...」

顔まで掛けた布団から目だけを覗かせ、彼の肉体を凝視する。

...背中が広くて、腕も俺のと比べ物にならないくらい太い...そんでもって筋とか浮き出てて...雄っぽい。

この身体に抱かれたことを思い出すとと、どうも興奮してしまう。

ああ、なんかいいな......。

今度なんてない、1度だけ、と決めていたが、正直2度してしまった以上3度、4度と身体を重ねてしまうのは結局同じことで。

他人とは言え彼は職場の人間であり、切っても切り離せない関係なのだと、自分自身を納得させようとするのは


また彼に抱かれたいと、心のどこかで思っているからだ。


「黒田せんせ...」

「んー...?」

「どれくらいで戻ってくる...?」

クローゼットから取り出した服に着替えた黒田が、ベッドに腰をかけ俺の頭を撫でる。

「10時くらいかな。河川敷をぐるっと走るだけだから、そんなに遅くならないと思うけど...どうして?」

「...遅かったら、帰ろうと思って...。今日新しい男の人と会う約束してるし...」

身体を起こし、ベッドへッドに投げられたスマホに手を伸ばしかけたところで

「だーめ、ちゃんとオレの家で待ってて。家の中の物は好きなよう使っていいし、過ごしやすいようにしてくれていいから」

突然腕を引っ張られ、一瞬にして彼の腕の中へ閉じ込められた。





しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...