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しおりを挟む「...何のつもりでキスなんか...」
「欲しくなった」
「は...」
「鏡夜のことが欲しくなった、って言ったら...どうする?」
冗談とは思えない真剣な瞳で見つめられ、時が止まる。
何...言ってんだ、こいつ。
全く理解が出来ない。
こいつはノンケで、現在進行形で彼女を募集してて...気高くて綺麗な女がいたら結婚を前提にお付き合いしたいって言ってたのに。
一時の気の迷いとしか思えない。
「血迷っているのか...?ノンケのあんたが俺を?笑わせるな...」
酷く動揺する中、荷物を抱えた俺は逃げるようにして彼の車を降りた。
自分の車まで走りエンジンをかければ、振り返ることも無く、一目散で逃げ帰る。
家に着くなりスーツを脱ぎ捨てベッドに沈み、頭の中を占領する男のことを消し去ろうとした。
ただ、何度消し去っても彼の表情や身体は鮮明に思い浮かんだ。
「...っ」
初めて生で挿入れられて、中出しされた。
挙句、ファーストキスも奪われた。
屈辱以外の言葉が見つからないのに、その反面、秘密がバレて変態と罵られたことを思い出せば酷く興奮する自分がいる。
「...は、ぁ...」
どうせノンケは、女の方が良いと言うし、君だけだよなんて言っておきながら最終的には女の元へ帰るのだろう?
信じて好意を寄せるだけ、こっちが馬鹿を見るに決まっている。
オナニーなんてここ数年していない。
それは自分を慰める可哀想な行為であり、俺には必要が無いからだ。
周りを見れば俺のことを抱きたいと言う男は山ほどいる。
だからこそこうやって
おずおずと下半身に手を伸ばし下着越しに自分自身に触れることすら、苛立ってしょうがない。
「っ、くそ...うぜぇ...」
11時
窓から差し込む日差しに目を細めては、小さく舌打ちをした。
ーーーーーーーーー
あんなことがあったからだろうか。
日曜日は一日中ベッドの住人となり、何もせずに休みが終わった。
本当だったら買い物に行ったり、本屋に行ったりしたかったのに...。
完全に自堕落。
こんな過ごし方はよくないと思い、気を改めて早めに就寝したにも関わらず、今日は10分も寝坊した。
20年振りの寝坊に、一瞬理解が追い付かず、そのまま数分ぼーっとしてから慌てて支度を始める始末。
どっかおかしくなったのか...?
学校に着いてから黒田の姿を目の当たりにすると、反射的に身を隠してしまった。
キスされたし、俺のこと欲しいって言ってたけど...流石にちょっと警戒し過ぎ?
いやいやでも普通に生中出しされたんだぞこっちは、警戒して当たり前だろ。
「碓氷先生、なにしてんの」
「んゃっ!」
「なんだその声」
柱の影から黒田を見ていた俺の肩をポン、と叩いたのは先週様子がおかしかった神崎本人だった。
「黒田のこと見てんの?」
「ち、違う...!」
図星だ。
「ごほんっ...珍しいな、神崎から俺に話しかけてくるの。身嗜みを整える気になったのか?」
「いや、金曜日のこと謝ろうと思って。せっかく心配してくれたのに、素っ気ない態度とってごめんね」
うわ......めちゃくちゃいい子。
「俺の方こそ、突然触ったりして悪かった」
「...おかしい、なんか今日の碓氷気持ち悪いな...」
おい聞こえてんぞ。
ワイシャツの上にジャージを羽織りながら登校しやがって...まあ、今日は多めに見てやるか。
「おはようございます」
「っ...!」
背後から聞こえてきた例の男の声にビクリと身体を震わせる。
「黒田先生、おはよ。今から保健室行っていい?」
「んー?だめ、七王くんはサボり魔だから出禁」
「いいじゃん、俺以外にも女子いっぱい出入りしてんだから」
俺の横を通り過ぎた黒田と肩を並べて保健室の方へ向かっていく神崎の姿は、あっという間に小さくなってしまった。
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