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しおりを挟む「なるほど...しっかり線引きもしてるわけね」
「これ飲んだら帰る」
白湯を飲む彼がきょとん、とする。
「どうやって?」
「...は?どうやってって、そりゃ車で」
「君の車、店の駐車場に置きっぱなしだけど」
......最悪。
黒田は代行で家まで帰ってきたけど、俺は爆睡してたからそのまんま本体だけ持って来た、と。
緑茶を頼んだはずだったが、どうして記憶が無いんだ...?
確かにあの緑茶、ちょっと変な味したって言うか炭酸だったって言うか。
「石井先生のジョッキ奪って飲んで寝たかと思えば絡み酒って、凄いよね」
「...はぁあ...」
盛大なため息を吐いた俺は頭を抱えた。
記憶を飛ばした原因は石井のビールだったか。
「...あんたに変なこと...してないよな」
「ん?変なことって...?」
長い脚を組んで楽しそうに笑った彼が、小首を傾げる。
「耳元で抱いてってオネダリしてきたこと...?」
「っ!くそ...死にたい...」
「ふふ...まあ今日は遅いし、起きたら店まで送って行ってあげるから、そろそろ休もう」
ソファーから移動し、セミダブルのベッドへ腰を掛けた黒田は隣をポンポンと叩いた。
「おいで」
「ソファーで寝る、人と一緒だと寝れないんだ。寝息とかシーツの擦れる音とか微かな重みとか...気になって...」
「じゃあオレがソファーで寝るから、君はベッドを使うといい。風邪でもひかせたら大変だ」
......ふーん、優しいじゃん。
しかし、家主を差し置いてベッドで寝るのは流石に気が引ける。
ただ、他人と一緒だと眠れないのも事実。
んー...。
ちら、ちらとソファーとベッドを見比べた挙句、渋々ベッドへ潜り込んだ。
「寒くない?寒かったら掛けるものを持ってこようか」
「いや、掛けるものはいい...」
ベッドから立ち上がろうとした黒田の手をそっと掴む。
「...ソファーで寝て、保健医のあんたが風邪ひいたらどうすんだよ...」
「え?はは...一緒に寝てもいいの?」
ベッドに座り直した彼が、俺の髪に指を通す。
「眠れなかったら...俺がソファーに行けばいいだけだから」
「そう...」
静かにベッドへ横になる黒田から、ボディーソープの香りが漂った。
こいつの身体、まだ熱い...。
背後から包み込まれては身体の熱が伝わり、やけに落ち着かない。
別に女じゃないのだから、抱き締める必要なんて無いだろうに...。
シャツの隙間から入り込む手が胸に触れると、身体がピクリと反応した。
「んっ...何して...」
「さっき見て思ったんだけど、鏡夜の乳首って...陥没ってやつ?」
「うっ...陥没じゃ、なぃ...」
手探りで乳首を探す黒田が、陥没している割れ目に人差し指を差し込む。
「ん、ゃ...!」
「...声、ほんとかわいいね...胸はあんまり弄られたことないの?」
耳元で囁くな...ゾクゾクする...。
「っ、ぁ...、は、胸は感じないから、弄る必要ないし...」
「へぇ...そっか...」
指の抜き、ぎゅうっと抱き締めた黒田は背後で小さく「おやすみ」と呟いた。
少しでも他人の重みがあったり、寝息が聞こえてきたら眠れないって言ってんのに...この男ときたら。
向こう向いて寝てくれないかな...。
眉間にシワを刻んだまま目を閉じては、彼の呼吸音に耳を傾けた。
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