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しおりを挟む18時30分
教頭の乾杯の音頭で飲み会がスタートする。
欠席できなかった...。
欠席したいと教頭に伝えたが「いやいや、もうこの人数で予約取ってるから。前日とかならキャンセル出来たんだけどねー。今日キャンセルするならキャンセル料払って貰うよ、はい、100万」とかクソほどつまらんことを抜かしやがった。
既に薄くなっている毛根を丸ごと毟りとってやりたいと思ったことは言うまでもない。
つか朝礼で言えよ、飲み会があることぐらい。
「......」
「あれ~?若王子先生は飲まないんですか?」
「はい、僕は姫神主任をご自宅までお送りしますので。石井先生はジョッキで飲まれるんですね」
「だって、すぐ足りなくなっちゃうんだもん!」
「ああ...そうですか...」
しかもいつものメンツ。
俺の隣には若王子、前には学年主任の姫神と石井...飲み会にまで来て席順も一緒にする必要は絶対にない。
「若王子くん、もし良かったら席変わろうか?」
「いいえ、結構です」
姫神は一体何に気を遣っているのか...、そこだけ席替えしても意味ないぞ。
とにかく...早く帰ろう。
待ち合わせの時間を1時間遅らせれば、東條にも会える。
少ししたら東條に連絡を入れて、ホテルに急げば問題ないだろう。
...にしても神崎のあの様子が気になって仕方がない。
普段の飄々とした神崎とは打って変わった反応。
奴とは3年間の付き合いだが、あんな姿を見たのは初めてだった。
担任の姫神なら何か分かるだろうか、と意を決して口を開く。
「姫神先生、先生のクラスの神崎ですが」
「...?神崎ですか?」
突然の声がけにも動じない姫神は、神崎の様子がおかしいことを何も知らないようだった。
ここで変なことを言って心配させてしまえば、折角の休みにも影響が出るかもしれない。
姫神は心配性だろうし、月曜日に寝不足で勤務されても困るな...。
今言うのはやめて、週明けも神崎の様子がおかしかったら改めて聞くことにしよう。
そう思い、即座に話題をいつもの件に差し替える。
「ええ、彼の髪色、どうにかなりませんか。指導しても直さないし、反省文を書かせても「社会のルールに縛られた可哀想な大人へ」というタイトルの煽り文を作文用紙5枚に亘って綴ってきます」
自分で口にするだけで、正直かなり凹むんだが...。
今までの生徒でこんなしぶとい奴はいなかったため、もしかしたら自分が非力なんじゃないかと感じては、両手で顔を覆った。
「...神崎には私からも伝えてみます。いつもありがとうございます」
「姫神先生...!」
困ったように笑った姫神からお礼を述べられると、素直に嬉しかった。
ボケッとしてるなんて言ってごめん。
生活指導と言う立場は生徒から嫌われるし、周りの教員からも責められることが多いから「いつもありがとう」なんてそんな言葉、嬉しくないはずがない。
店員さんがテーブルに置いたジョッキを掴み一気に飲み干す。
私が頼んだ緑茶は、何やらパチパチと口の中で弾け、苦味の強い大人の味がした。
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