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皮膚
しおりを挟む「ひっ...!!」
「あれ、政宗さんってホラーダメでしたっけ」
ダメも何も大の苦手だ。
にこりと嫌味のない笑顔を浮かべているが、絶対に気付いていたであろう。
「怖い...?」
「う、うん...」
大きな画面に映る女性は、暗闇の中で視線だけを動かしている。
秒針の時を刻む音だけが響き渡り、女性はベッドに潜り込んだ。
息を殺して、目をギュッと瞑る姿が画面に広がる。
あ、やばい...なんかきそう...。
恐怖からそわそわと動く、落ち着きの無い手が彼の指に触れると、優しく包み込まれた。
「わ...」
温かい、なんか安心するかも...。
と思ったのも束の間、大きな音と共にベッドの下で不気味な顔をして笑う男が映し出され、ビクンと身体が跳ね上がる。
「っ!!!」
「もっとこっちにおいで...」
なんでよりにもよってカップルシートなんだ、と上映前に指摘したが、今ではこのシートで良かったと思った。
周りでカップルシートを利用している客が居ないのをいいことに、彼の首に顔を寄せる。
「、政宗さん...」
大きい音だけでも驚いてしまう私は、彼の手を強く掴み目を閉じる。
早く終われ、早く終われ...。
「ねぇ...噛みたい...」
「えっ!?」
唐突に言われたその言葉に顔をあげると、瞳が熱を持っていることに気付いた。
「いい匂いする...噛みたい、噛ませて」
映画見てないじゃん...!
シャツの襟を引っ張り、私の首元に唇を寄せた若王子は、熱い吐息を零しながら首筋を舐める。
「あっ...だ、め...」
「お願い...少しだけ...」
するりと服の中に滑り込む手。
背中を撫でながら、もう片方の手で太ももの付け根に触れる。
「んっ、ふ...りょう、くん...あっーーー!」
ガブッ
首の薄い皮膚に、彼の尖った犬歯が食い込んだ。
痛い
痛いけど
「はぁ、っ...♡」
気持ちいい。
「亮くん...っ、亮くん...」
もっと、酷くシて欲しい。
私の首から唇を離した彼は、画面に目を向けてしまう。
まだ止めて欲しくなくて擦り寄るも、一瞬微笑むだけでそれ以降何もしてくれない。
「...」
大人っぽい香水の香り。
第二ボタンまで開けられたシャツの間で煌めくネックレスに目を細めては、彼の肩に頭を預けた。
噛まれたとこ、熱いな...。
足を擦り合わせ、勃起した自身が治まるのを待つ。
もっと噛んでくれたら...ここが映画館じゃなかったら良かったのに。
お陰で怖さは吹き飛んだが、身体の熱は一向に引かない。
隣に座る彼の男らしい腕をなぞったり、太ももを撫でてみたりもしたが、よっぽどこの映画が見たかったのだろう。
私の誘惑には反応を示すことはなく、画面に釘付け状態。
「うう...怖い...」
結局私もこの映画を最後までしっかりと見るハメになった。
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