2人の男に狙われてます

おもち

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バスタブ

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「ここ...神崎の持ち物なの...?」

「うん」

「...」

彼は長い髪を後ろで纏め上げてからTシャツを脱ぎ捨てると、私の身体を軽々と抱えた。

「先、入ってて」

またもやバスルームに逆戻りした私は、身体をシャワーで流してから、モコモコの泡でいっぱいになったバスタブに脚を滑らせる。

丁度いい湯加減。

円形のバスタブは大の大人が1人入っても余裕があり、手足も自由に動かせる。

大きな窓からは夜景が一望出来て、その綺麗さに思わずため息が出た。

「政宗」

バスタブの縁に手を掛けていた私は後ろを振り向き、彼からグラスを受け取る。

「声掠れてる」

「あ、ありがと...」

服を脱いで身体を洗い流した神崎は、私の真向かいに座った。

外の明かりが彼の儚げな鎖骨やシュッとした身体の線を際立たせる。

バスタブに肘をかけ、横目で夜景を眺める姿があまりにもお似合いで、カッコよくて、彼から目が離せない。

どんな女の子も神崎のことは放っておかないのに...なんで私みたいな男とお風呂に入ってるんだろ...。

「...なに、見惚れた?」

ばち、と目が合った瞬間、不敵な笑みを浮かべた彼にまたしても胸がきゅんとする。

カッコイイ...。

「過去の彼女は、神崎が彼氏で自慢だっただろうね」

「...?いや、そうでもないと思うよ。女の子の扱い、正直かなり雑だったから」

「雑って?」

「前も言ったけど、女の子を取っかえ引っ変えしたりとか。他の女と話さないで、こまめに連絡して、私を1番優先してって束縛される度、その子のことが面倒になっちゃって」

グラスに入った水を飲みながら、彼の言葉に耳を傾ける。

「その都度、声掛けてくる女の子を片っ端から味見してったら、当時付き合ってた彼女は当然のことに大激怒したわけ。だから、彼女っていう存在を作らないようにした。色々トラブって俺も懲りたからな...」

「ふぅん...」

「でも、彼女はいらないけど、恋人っていう存在は欲しいよ...?」

私の頬に指を滑らせ、目を細める。
夜景の光で淡く輝く彼が、眩しい。

幻想的な空間。

電気をつけていないにも関わらず、ビルの光だけで部屋中が照らされ、きめ細やかな泡が光を帯びてキラキラと光る。

「政宗こそ、そろそろ独り身やめたら?向いてないんだよ、あんたに1人って」

「で...でも、妻からは幸せな家庭を、娘からは父親を奪った私が、他の人を好きになる資格も、好きになって貰う資格も...ない、から」

父に言われた言葉を思い出しては、俯いた。

「はー、くだらね...好きになるのに資格がいるかよ。あんたのこと好きになる好きにならないなんて、あんたが決めることじゃないし」
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