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否定
しおりを挟む「ちょ、ちょっと...すぐキスしないでよ...」
「すみません、うれしくて」
...嬉しい?
私はケーキを選んだだけなのに...こんなに喜んでくれるのか。
箱の中からチョコレートケーキを取り出し、付属のフォークで口に運ぶ。
「うん...美味し」
目を細めて微笑む彼の声は、酷く優しい。
そんな姿を見てしまえば、胸がギュッと締め付けられた。
今日、来て良かった......かも。
「ほら...あーんして」
「え!?い、いらない」
「口移しがいいんですか?」
いや、それは違う。
首を左右に振ると、じゃあ開けろと言うものだから仕方なく小さく口を開ける。
その中にチョコレートケーキを突っ込まれると、口の中に甘さが広がり思わず頬を手で覆った。
「おいし~!ね!若王子くん!」
「...」
「若王子くん?」
「...付き合ってるみたいですね、僕達」
頬杖をつきながら、そんなことをポツリと呟いた彼は、やけに真剣な瞳をしている。
「なんなら、本当に付き合っちゃいます...?」
一瞬何を言われているのか理解出来なかったが、少し考えた後にめちゃめちゃ動揺した。
「な、なな何を言ってるんだ君は...!!私はノンケだし、そもそも君のこともあまり得意に思ってないし...!!」
動揺する私を横目に、彼はケーキを食べ進めていく。
自分とは正反対に落ち着いている彼を見てヤケになった私は、缶チューハイを一気に飲み干し勢いよくテーブルに置いた。
「君と私が、つ、付き合うなんて絶対にない!!」
「...ほんと、かわいいね」
「!?」
今度は箱からモンブランを取り出し、嬉しそうに食べる彼を見れば、なんだか否定することも面倒になった。
勿体ないからと言って、2つのケーキを残した彼は冷蔵庫へとしまい、またコントローラーを握る。
「...と、思ったけどゲームはいつでも出来るし...」
ギシ、とソファーのスプリングが軋む。
メガネを片手で外し、私の腰をそっと抱き寄せれば、この一室の空気が変わった気がした。
なんだかピンクっぽいような... 。
「同じシャンプー使ってるはずなのに、すげぇいい匂いする...」
頭を撫でながら髪に鼻を寄せられ耳朶を噛まれれば、やはりこう言うことになったか、と思う自分がいた。
「あっ、...やだ...」
「嫌...?でもこういう事されるって分かってましたよね」
今度は首筋を噛まれて身体を反応させる。
「今更帰してなんて言われても、帰してあげませんよ」
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