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2- ③【改稿版】
しおりを挟む“女同士の友情は男が絡むと壊れるし厄介だ。”
と、誰が言ったか知らないけれど、そんな言葉が頭に浮かぶ。
それほど簡単に事が片付くのならそんな言葉を言う人など居なかっただろう。
そう、色恋沙汰と言う物は往々にして拗れる問題だという事なのだ。
△▽△▽△▽△▽△
会話も無く俯いたまま私達は教室に戻った。
二人共自分の席に着くと同時に休憩時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
そして、それが起こったのは次の授業が始まってすぐの事だった。
教科担当の教師が出席を取り、授業を始めるために生徒達に教科書を開くように指示を出したのだが、教室の後ろの方が何やら騒ついている。
授業中に後ろを振り返る訳にもいかず、『何だろう?』と思っていたら、その騒めきが伝播して行くように広がり、大きくなっていく。
前の方の座席に座っている私は、まさかという思いと共に不安に堪えきれなくて振り返り、視界に入ったその光景に驚愕した。
ロザリーが俯き肩を震わせ声を殺して泣いている!
彼女の周囲に座っているクラスメイト達が心配して声を掛けたりしているが、小さく首を横に振るばかり。
教室中の視線が彼女に集まる中、教科担当の先生も当然授業を続けられるような状況ではなく、かと言ってこのままという訳にもいかない。
けれど事情を話さない彼女に、仕方なく保健室へ行って休むか帰宅するかを問うた。
彼女が帰宅すると答えた為、迎えが来るまで保健室で休むように告げると、友人達の中で彼女と特に仲の良い二人が付き添いを買って出た。
それを受けて彼女達に付き添いを頼むと先生は授業を再開した。
ロザリーの涙の理由が私の婚約話の事だと想像がついた私は何も考えられず、授業内容も頭に入ってこなかった。
△▽△▽△▽△▽△▽
彼女が休んでいる間、心配だった私は手紙を送り、出来ればお見舞いに行きたいと伝えたものの、彼女からの返事は〖気にしないで〗や〖登校したらまた一緒にお喋りしたり、ランチしたりして楽しもうね。〗と書かれていたので、心配ではあったけれど学校で再会出来る日を待つしかなかった。
あの時無理にでも会いに行けば良かったと今は後悔しているのだけれど、その時の私は喩え以前のようにいかなくても表面上は普通に接して貰えると甘く考えていたのだ。
“女同士の友情は男が絡むと壊れるし厄介だ。”
と言う言葉があるほどそんな都合の良い事など無いというのに……。
△▽△▽△▽△▽△
ロザリーが暫く体調不良で欠席していた間、徐々に友人達と私の関係に何処か違和感を感じるようになっていった。
それは彼女が次に登校して来た日に決定的となり、ぎくしゃくしだしたかと思うと まるで坂道を転げ落ちるように悪い方へと転がり出した。
そうなると早い物で、あっという間にクラス中に広がり、今現在私はクラスの中で遠巻きにされ、友人達と居る時は“針の筵”状態である。
あるクラスメイト達は不快さを露わにし、又あるクラスメイト達は遠巻きにひそひそと…。
友人達も何処か他人行儀というか余所余所しくて、私が何か一言でも話すとピタリと会話が止むのだ。
そして友人達に理由を聞くも、彼女達は顔を見合わせ言葉を濁す。
「気の所為よ。」等と言って……。
私の婚約の件が絡んでいるのは間違いないと思うのだが、ロザリーには登校して来た日に謝った。
謝ったからそれでいい(終わり)という訳ではないけれど、彼女も「貴族家には政略結婚は当たり前だから仕方ないわ。だから貴女が悪い訳じゃないから、謝る必要も気にする必要も無いわ。」と言ってくれていたのを有難く思っていた。
けれど、暫く経ってから気付いてしまったのだ。
何時からかロザリーが私から見えないように、隣に居る友人の影に隠れるように俯きその袖口をそっと摘まんでいた。
まるで私と顔を合わせるのを避けているみたいだった。
やっぱり大丈夫な風を装っていても彼女は深く傷付いていたのだろう。
「政略が前提の婚約だから仕方がない。」
その言葉に噓はないと思う。でも、(恋)心は別である。
どんなに頭でわかっていても心の中では割り切れない思いでいっぱいだったのかもしれない。
そして、その事に気付いてしまったらもう同じグループには居られないと思ってしまった。
少なくとも彼女の傷が癒え、再び私に話し掛けてくれる時まで距離を置くしかないのかもしれないと。
それ以降私は一人で居る事が多くなり、そうなると自然クラスから浮いた存在になってしまう訳で……。
同じクラスに居る婚約者は如何した?
と思う人も居たかもしれないけれど、彼は偶に私の方を見ている事もあったが、それも初めのうちだけで今はそれすら無く、以前ほどではないけれど時々ロザリーの方を見ている事があるものの常と同じだった。
恐らく彼も今の状況をわかっていて静観しているのかもしれない。
それはそうだろう。
いくら婚約したと雖も、二人一緒に居ればロザリーに見せつけていると受け取られかねないし、私もこれ以上彼女に誤解されるのも傷付ける事になるのも嫌だった。
時が経つのを待つしかないと思ってはいるけれど、終わりの見えないこの状況は正直キツい物がある。
△▽△▽△▽△▽△
そんな中でも婚約したのだから交流の為のお茶会はあった。
初回時は「婚約者なのだから何かあったら頼って欲しい。」と言ってくれていたけれど、学校では話し掛けて来られるような状況ではない。
かと言って、時が経つのを待つ以外何を如何する事も出来ない。
そんな状況の中での婚約者同士の交流をしたところで、会話らしい会話の無いお茶会となってしまうのは言うまでもなく、後ろ向きな気持ちになってしまいそうになる中、誰が悪い訳でもない事もわかっている。
強いて言えば、タイミングが悪かっただけ。
何時まで続くかわからない状況の中、それでも時は流れているのだとわかるようにほんの少しづつではあるが変化があったのだった。
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