【改稿版】それでも…

雫喰 B

文字の大きさ
上 下
54 / 60

54. 事件の真実

しおりを挟む
*今話の中で、出てくる薬物は、飽くまでも想像であり、実際にあるかどうかまでは分かりません。
    万が一、あったとしても(勿論、なくても)、自分や他者に対して、使用する行為を認めていませんし、推奨している訳でもありません。
    また、後催眠に関しても上記と同様です。
    実際にそんな事が出きるかどうか、分かりません。想像であり、フィクションです。
    なので、上記の行為や、それに類する行為を他者や自分に対して行わないで下さい。

*内容が内容なだけに、苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いします。
~~~~~


    その恐ろしい事件の真実とは…。

    リビルド伯爵令嬢のローザリンデの母親が呪術師と呼ばれる一族の生き残りで、ハリーがその呪術をかけられていたと言うのだ。

    呪術と言っても、毒性の強い薬物を用い、譫妄せんもう状態にした上で、後催眠を掛けるという方法で、他者を操るらしく、それを危険視した先々王や、先王の代でその呪術師の一族と薬物、薬物の製造法等を根絶やしにした筈が、それを掻い潜って生き残った者がいた。

    その生き残りこそが、ローザリンデの母親で、流石に、薬物の製造法までは知らなかったようで、逃げる際に薬物を持ち出していたと考えられる。

    が、ローザリンデは正確に呪術を使えた訳ではなく、母親が呪術を使っているを見て、そのやり方を真似ていたのではないか…と結論付けられた。

    人を操る事の出来る呪術も恐ろしいが、それに用いられる薬物は更に恐ろしく、悍ましい物だった。

    リビルド伯爵家が捜索され、押収された薬物は三種類あり、成分が同じだった事から、製法は同じとみられた。

    そして、押収されたのは、液体、粉末、元になった薬草を乾燥させた物の三種類で、一番毒性が高かったのは、高濃度で抽出、精製された液体の物だった。

    使用方法は、液体は経口摂取、薬草を乾燥させた物は、香と同様の使い方で、煙を吸引させる。
    粉末の物は、経口摂取、煙の吸引の両方の使い方をされる。

    更に恐ろしい事に、その強い毒性の為、毒が体外に排出されず、体内に蓄積され、経口摂取した場合は内臓が、煙を吸引した場合は呼吸器や脳の細胞が破壊される。

    そして、ローザリンデによってその薬物を摂取させられたランディ王太子、ハリー・クリムト、リチャード・フォラスの3名は、何れも死亡している。

    元王国騎士団団長のアクシオン・フォラスとその息子のリチャード・フォラスが、その身を犠牲にして呪術と薬物の存在を訴えたからだった。

    ローザリンデの母親が、過去にその呪術を使った時の犠牲者が、アクシオン・フォラスの婚約者で、当時、彼は婚約者の死を不審死だと訴えたが、それを退けられた。

    だが、ハリー・クリムトの事件でローザリンデが関わっていた事と、捕縛される前と後の彼の状態が、その婚約者の時と同じだった事で、独自に調べていた。

    それを知った、リチャードが親友の為にローザリンデに近付き、その罪を暴こうとするも、ミイラ取りがミイラになってしまう。

    そして呪術をかけられ、リンジー・カスペラードを襲ってしまう。

    アクシオンが、リチャードの様子がおかしいと報告を受けた時には、既に事件が起こった後だった。

    息子が起こした事件によって、侯爵家が取り潰される事が避けられないと判断した彼は、個人的な恨みと共に、元凶を取り除くべくローザリンデを斬り捨てた。
    
    半分は私情で動いた彼に、国王は怒ったが、事件の後、何人かの貴族家の当主や身内の者が不審死した事で、その怒りを解いた。
    その不審死した者達が、ローザリンデやその母親と親しかったからだった。

    そして、これらの事実は王家の名に於いて、伏せられる事となり、秘匿される事と決められた。

    ただし、カスペラード辺境伯家、ハリー・クリムト、彼を引き取ったアンネーメン家に、ジョシュアが知らせる事は認められたのだという。

    その話を聞いたハリーが、ランディ王子に会う事と、リンジーに謝罪する事を願った。

    けれど、リンジーに謝罪する事は叶ったが、ランディ王子に会う事は叶わなかった。
    
    というのも、彼がここに着いた時には、自力で立つ事が出来なくなっていたからだ。
    そして起き上がる事も出来ず、ベッドに横たわったままではあったが、リンジーに謝罪する事が叶ったその翌日に死亡した。

    彼の亡骸は、一族の墓がある墓地に埋葬する事を拒否され、この地にある墓地に埋葬された。

    彼の遺志だったとして、タークスとジョシュアがランディ王子に面会したのだが、王子はリンジーと同じ紅茶色の髪の鬘を被り、鏡に向かってうっとりとした表情で、何かぶつぶつと呟いていて、鏡の中のと会話していたのだが、その顔は頬が痩け、眼は落ち窪み、身体もガリガリに痩せて枯れ木みたいになっていた。

    その姿を見て衝撃を受けた二人は、背筋が寒くなり、絶句した。

    面会後、塔の警備責任者に話を聞くと、牢内でリンジーに会わせろと暴れる王子に国王が、彼女が死んだと告げ、その証拠として彼女の髪を渡すと泣き崩れ、それ以降、食事も摂らず、ずっと鏡に向かって話しかけているという。

    そして、鬘に見えた彼女の髪は、鬘ではなく紐で束ねただけの物で、息子が本当に愛していたリンジーと結ばれないのを不憫に思った国王が与えた物だった。

    その彼も、彼等が訪れた3日後に死亡したという。



    

    

    
    

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。 恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。 アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。 側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。 「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」 意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。 一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」 *** ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。 しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。 ――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。  今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。  それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。  これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。  そんな復讐と解放と恋の物語。 ◇ ◆ ◇ ※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。  さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。  カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。 ※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。  選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。 ※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

君の小さな手ー初恋相手に暴言を吐かれた件ー

須木 水夏
恋愛
初めて恋をした相手に、ブス!と罵られてプチッと切れたお話。 短編集に上げていたものを手直しして個別の短編として上げ直しました。 ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...