【改稿版】それでも…

雫喰 B

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28. 帰郷

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*いつもお読み頂きありがとうございます。
*今話は、視点がコロコロ変わりますのでご注意下さい。

    部屋で荷物を纏めていると、キースがやって来た。

「よぅ!俺も除隊してきたぜ。で?明日何時に出発するんだ?」

    まさか彼が本当に除隊すると思っていなかった俺は、頭を抱えた。

「何だよ、冷てぇなぁ。友達だろ。」
「 ………だ。」
「 え?何だって?」
「朝食後だ。」
「OK!明日からよろしく頼む。」

   そう言うと、鼻歌を歌いながら部屋から出ていった。

    荷物を纏めていた手を止めて、リンジーから来た手紙を広げて見た。

    ここから彼女がいる別荘まで、馬車で五日かかる。
    この距離が遠いのか近いのか…今の俺にはとても遠く感じられた。

    手紙を折り畳み、鞄に詰めた。

    食料と水は、麓の村で調達すればいいだろう。
   
~~~~~

    そして翌日、朝食後キースと連れだって麓の村へと向かった。
    村長の家に行く前に、水や食料、それと、お別れの挨拶用に焼き菓子や酒を買った。  
    正直、リゼには顔を合わせ辛い。けれど、ケリを付けないまま帰る訳にはいかないのだ。

    そして、村長の家に着いた。

    テーブルに座り、お茶を出された後、故郷へ帰る事を話した。
    村長夫妻も姉妹も驚いていたが、リゼが泣きながら俺を引き留める。

    けれど俺は、故郷に帰らねばならない用事が出来たから帰る以外の選択肢は無い。そう話したら、自分も連れて行けと言い出した。
    彼女のその言葉を聞いて、シャロが泣き出した。

    村長も最初は止めていたが、リゼの姿に同情したのか、連れて行ってやってくれと言う。

    ほとほと困り果てた俺を見て気の毒に思ったのか、村長の妻が二人を窘めた。
    
「リゼ、恩人を困らせるような事を言うんじゃありません。それから、あなたも。リゼを本当の娘として幸せを願うのはいいけれど、リゼが幸せならいいんですか?ローランドさんの気持ちはどうでもいいって言うんですか?」

    それを聞いて、二人は俯いてしまった。
が、それでも俺の事が好きなのだと言う彼女に、ずっと前から心に決めた人がいる事、その人以外考えられない事を話した。だから、リゼの気持ちは受け入れられないと…。

    リゼはまだ納得がいかないようだったけど、村長は分かってくれたみたいで、「困らせるような事を言ってすまなかった。」と言ってくれた。

    やっと、この件に何とかケリが付いたので、俺とキースは故郷へと出発した。

    けれど、やはり納得いかなかったのだろう。俺が故郷に着いて暫くして、家出したリゼが押し掛けてきたのだった。

~~~~~

    あれから五年経った。私の身体に付いた大きな傷痕は赤茶色になったが、肉が盛り上がり醜いまま残っている。

    事件から三年経った頃、事の顛末を聞かされた。
    何も思わなかったと言えば嘘になる。でも、後ろを振り返りすぎて前に進めなくなるのが嫌だった。

    だから、私なりに頑張った。

    その甲斐があったのか分からないけれど、 立てるようになった。歩き始めた幼子みたいによたよたと、ほんの2,3歩だけど立って歩けるようになった。
    まだ車椅子は手放せないけど、それが無くても歩けるようになりたい。

    そうなるまでに五年、長かった。

    だけど、ここまで回復した事を、彼に伝えたかった。見て欲しかった。

    だから、勇気を出して手紙を書いた。

    けれど、気付くべきだった。

    私にとっての五年間があったように、彼にとっての五年間があったのだという事に…。

~~~~~

    久しぶりにローランドに会える事に浮かれていたの。
    だから、信じられなかった。彼がいなくなるなんて。
    私は泣いた。泣いて「行かないで!」って言ったわ。でも、彼は「帰る以外の選択肢は無い。」って、今まで見た事も無いような冷たい顔で言うの。

    あのいつも優しかったローランドが…。
    なんで?なんで急にそんな事言うの?

    こうなったら、彼について行くしかない!

    そう思った私は「一緒に行く!」と、我が儘だと分かっていたけれど、諦めるなんて無理よ!こんな事で諦めてたまるものですか!

    けれど、義両親は反対するし、妹は泣き出した。
    でも、暫くしたら義父が味方に付いてくれた。

    なのに、義母が「恩人を困らせるような事を言うな。」と言う。
    この人は、私がローランドと一緒になりたい。という想いを知っていて反対する。
    思えば、最初から反対していたようだった。

    義母から窘められたら、義父はあっさり態度を変えた。信じられない。

    そんな私の耳に聞きたくもない話が入ってきた。
    彼には心に決めた相手がいて、その人以外考えられないから私の気持ちは受けら入れられない、。

    ローランドはそう言ったけれど、嘘よ。嘘だわ。私に諦めさせる為の嘘に決まっている。

    私は納得いかなかったけれど、その代わり、いい事を思い付いた。

    そうだわ。追いかければいいのよ!

    その為に、ここは一度引き下がり、後を追う為にこっそり準備をした。

    待っててね。ローランド。

~~~~~
    
    お  ~  い !
    俺って放置されたまま?
          by  キース
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