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17. 一人ぼっち

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    その後は、部屋に戻ってベッドに入って眠った。

    それからは、ルークから色々な話を聞いた。
    その殆どが、彼とヘティーの思い出話だったけど、この世界の中にある魔力が少ないから、私の中に居て姿を現さないようにしていると言っていた。

    そして大昔と違って現在は、彼が魔法使いと認識できる程、大きな魔力を持つ者は感知できないと言う話だった。

    それがどの程度か分からないと私が言うと、分かりやすく言えば、指先にほんの小さな火を灯すぐらいの魔法を使えるレベルの人が数人居るだけだそうで、しかも、1,2回使えるかどうからしい。

    大昔は魔法使いが体内で魔力を精製していたから、世界に魔力が満ちていたんだろうね。と、何となく寂しそうだった。

    そして、一番気になっていた質問をしたら、顔を見られたくなかったのか、背中を向けて、ポツリと言った。

「幾つか、休眠している仲間は居たけど…動いているのはボクだけみたい…。」

    胸が引き絞られるみたいにズキズキと痛かった。
    まるで自分の事のようにショックだった。

    彼はまだ若く、生命力溢れる状態で、あのガラスのような筒の中に、長い年月閉じ込められていた。

    しかも、魔力は消費せず、循環されていたから減る事は無かった。

    休眠している仲間を、起こす事が出来ないのか聞いたら、魔力を貯めた状態の鉱石などがあれば可能かもしれないという答えだった。

    でも、見つけるのも、掘り出すのも大変なんだそうだ。

    この世界に完全に一人ぼっちって…想像できない。
    どう慰めていいか分からなかった。

    けど、

「ヘティーと同じ色の魔力を持っている君がいるから大丈夫だよ。」

    なんて、健気な事を言うから、ぎゅうって抱き締めたら、

「痛い!苦しい!」

    と怒られた。

    … 何で …?

    
    ルークから口止めはされなかったけど、彼の本当の名前を知った事と、契約して精霊魔法が使えるようになった事は誰にも言わずにおこうと思っている。

    そう…例えお兄様でも…。

    思えばお祖母様は、私にしかあのお話に出てくる妖精の名前を言っていなかった。 
    お兄様にさえ…。

    そして今、お兄様は、この国を取り戻す為に戦おうとしている…。

    言えば、ルークは嫌でも協力させられてしまうと思う。
    だから…誰にも内緒にしたい…。

~~~~~

    今日のルークは人型じゃなくて、動物の姿をしていた。

    その方が魔力の消費が少ない上に、僅かだけど大気中の魔力を取り込めるそうで、仕草なんかも完全に動物だった。
    その方が人間に見つかっても、しゃべる事が出来ないふりが出来るから、何かと都合が良いらしい。

    しかし…可愛い…可愛すぎる!

    ん~っ!モフモフしたい!!

    因みに、ルークは手の平サイズのポニーみたいな姿。しかも、毛足が長くて柔らかそう。
    そして、たてがみと尻尾は、サラサラロング。

    で、さっきからモフモフしたくて、ウズウズしている。

「何でさっきから、手がワキワキしてるの?」

    ルークが、訝しげな視線を私に向けて言った。

    駄目もとで言ってみようか、どうしようか悩む。

    思い切って言ってみた。

「ルーク、お願い!触ってもいいかな?」
「 … 」

    眉間に皺が寄っているような感じがする。

『あ、コレってダメ!なやつ?』

「ね、お願い!お願いします!!」
「…しょうがないなぁ…いいよ。」

    そっぽ向いて、投げ遣りに言うルークを余所に、何処から触ろうか悩んだ。

    先ずは無難に、頭撫で撫でから…?

    そう思って、恐る恐る手を伸ばして頭を撫でた。

「ふわ~っ!モフモフ最高~」

    頭を撫でた後、そう言って思わず、むぎゅ~っ!ってした。

「ぐえっ!」

    あ、ヤバッ!

「苦しいんだけど!」

    怒って姿を消してしまう。

    しまった!モフモフが…。(泣)

    その後、何度も呼んだけど、ヘソを曲げて姿を現してくれなかった。


    
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