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16. 精霊の名前

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「ね、僕の名前知りたい?って聞いたんだよ。知りたいの?知りたくないの?」

    また揶揄うように、鼻先まで飛んできた。

    信用出来るかどうか…。
    
    精霊の目的が、“相性の良い器”だと分かっているから、尚更、答え辛い。
    
「…一つ聞いていいかしら?」
「何だい?」
「契約を結んだら、この身体の主導権は、私?…それともあなた?」
「君って、おバカ?僕達精霊は、名前で縛られるって言ったよね。」
「けど、その名前が本当の名前かどうか分からないじゃない。」

    ふぅ。と溜め息を吐くと、少し怒ったように

「あのね、僕は君が気に入ったって言ったのは、器としてって意味じゃなかったんだけど。」
「そう…なの?」
「まぁ、紛らわしい事を言ったし、それが目的みたいな事も言ったけど…。それは、僕達が人間に騙される事が多かったからだよ。」
「じゃあ、試していたって言うの?」
「そうだよ。信用出来る人間にしか教えない。」
「そうなんだ…。」

    それでも悩んでいる私に

「早く決めてよね!」

    全くもって、せっかちな奴である。

「その前に教えて欲しいんだけど、名前を教える代わりに何か要求されたりするのかな?」
「 … 」

    … 図星なのね …

「先に、何を見返りに渡すのか教えてくれない?じゃなかったら、教えてくれなくていいから。」

    そう言ったら、「 チッ!」と舌打ちされた。
    ほんと、油断も隙も無いわね。

    ふと、お祖母ばあ様が幼い頃にしてくれたお話の中に、“悪戯好きで、捻くれ者の妖精”の話があったのを思い出した。

    確か…その妖精の名前って…

「… ロキ …だった…?」

    呟くと同時に、辺りが眩しい光に包まれた。
    でも、それは一瞬だけの事で、直ぐに元の暗闇に戻った。

「…今の…何?」

    目の前に、小さな光の球がある。が、さっきまでと違い、中をよく見ると小さな人形が…。

「…ねぇ、何でボクの名前が分かったの?」

    口を尖らせて、拗ねたように言う。

「昔、幼い頃に聞いたお話の中に出てくる名前を言っただけだったんだけど。」
「そのお話って、誰から聞いたの?」
「お祖母様だけど。」
「その人の名前は?」
「ヘンリエッタ。私はヘティーって呼んでたわ。」

    するとロキは、私の腕にしがみ付くと、両目から大粒の涙をポロポロ流した。

「ヘティーは?ヘティーは何処?何処に居るの?」

    袖をグイグイ引っ張って涙を流しながら聞いてくる。

「お祖母様は…お亡くなりになったわ。そのお話を聞いて暫くしてからだったと思うけど…。あなたに会う少し前…かな?」

    そこで一瞬、ロキの動きが止まって、眼を大きく見開いた。

「…そんな…」

    酷くショックを受けているみたいだった。

「ねぇ、まさかとは思うけど、お祖母様の事を知っているの?」
「…多分…」

    精霊はそう言うけど、お祖母様から精霊と会った事があるなんて聞いた事などなかった。

    もしかして…

「私と出会った時に、ガラスの筒に閉じ込められていたわよね。あれって、どのくらいの時間、閉じ込められていたの?」

    腕で眼を擦りながら

「分かんないや。でも…気が遠くなるほど、長い長い間だったから…。」

    それを聞いて納得した。

「あなたが出会ったのは、私のお祖母様じゃなくて、ご先祖様かもしれないわ。」
「え?何それ?」

    ロキはキョトンとしている。

「あのね。私のお祖母様は、幼い頃にその妖精のお話をお祖母様から聞いたんだって。そのまたお祖母様も。そして、ヘティーっていう名前も、そのお祖母様から貰ったんだって。だから、代々続いた名前なの。」
「そうなんだ。でも…やっぱり会えないんだね。死んじゃってるから…。」

    そう言って、袖に顔を埋めた。
    ツュプレッセは、何だか可哀想になって、暫く頭を撫で続けた。

    泣くだけ泣いて気が済んだのか、ガラスの筒に閉じ込められていた訳を話した。

    ヘティーと出会って何年か経った頃、一人の魔法使いに騙されて、ガラスの筒に入れられた挙げ句、灯台の灯りにされたらしい。

    そして、その魔力を動力に、ずっと灯台になっていたと言う。

    でも、その国が失くなった時に、灯台も壊され、波に流されあの洞窟に辿り着いたけど、誰にも見つけてもらえないまま長い年月が経った。って訳さ。と、明るく説明していた。

    魔法使いって、かなり昔の話で驚いた。
    だって、今はそんな強い魔法を使える、魔法使いなんて何処にも居ない。

    しかも、ロキの名前を聞いて契約した訳じゃない。
    精霊を閉じ込めるほどの魔法って…やっぱり、かなり昔の話だわ。

「ところで、本当の名前が分かったのはいいけど、その名前で呼ぶのって、凄く危険な事だと思うんだけど、なんて呼んだらいい?」
「ルークでいいよ。だって、ヘティーが付けてくれた名前なんだ。あ、ヘティーの子孫だから、見返りは要らないよ。」
「分かった。ルークね、よろしく。」
「こっちこそ、よろしく。」

    明るく言うルークを見ていて、複雑な心境だった。
    彼の話を信じるなら、彼はかなりの年月を閉じ込められて孤独なまま生きて来た。

    しかも、当時に比べて、妖精も精霊もほとんど居ない。もしかしたら、彼しかいないかもしれない。
    
~~~~~

すみません!!

投稿予約失敗してました。
本当にすみません!!


 

    
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感想 2

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