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10. 再会
しおりを挟む歩けど歩けど、いつまで経っても村や町がある所に辿り着けない。
おっかしぃーなぁ、方向音痴じゃなかった筈なんだけど…。
マズい、非常ーにマズい。やっぱり、迷った…かな?
「 …っ!? ど、どうしたの!? 」
びっくりしたー
エレナがいきなり立ち上がったのだ。
徐に、あっちこっちに顔を向けたかと思うと、あっち向いてスンスン、こっち向いてスンスンと、何やら匂いを嗅ぐみたいな行動をしている。
?????
「姫様、何か美味しそうな…?食べ物?のような匂いが…。」
「え?」
ツュプレッセも彼女と同じ様に、あっち向いてスンスン、こっち向いてスンスンとしてみたが
「???…そう?何の匂いもしないけど…スンスン…?」
何の匂いもしないんだけどなぁ…?と首を傾げたその時、不意に手首を掴まれた。
「…あっちだわ!」
そのまま手を引っ張られて、どんどん進むエレナに半ば引き摺られそうになりながら早足で歩いた。
と、突然視界が開けた。そこは、崖から落ちた後に休憩した小屋だった。
ツュプレッセは急いでエレナを自分の方に引っ張ると、木の陰に隠れた。
「誰かが小屋にいるわ。」
小さな声でエレナに言った。
そして屋根の上、煙突の方に顎をしゃくってみせた。
煙突からは細く長い煙が出ていた。
「…本当ですね。追手でしょうか?」
エレナの方を振り向こうとしたが、剣を突きつけられ、諦めの溜め息を吐くと、ゆっくり両手を上げた。
「立て。」
仕方がないので、相手の言葉に従って立ち上がる。
「姫様!?」
「「え?」」
恐る恐る振り返ると、ラルフ隊長の顔があった。
彼は剣を鞘に収めた。
ツュプレッセとエレナは、膝から崩れるように座り込んだ。
極度の緊張感から解放された為か、エレナが泣き出した。ツュプレッセも目尻に溜まった涙を指で拭った。
「ツュプレッセ姫、よくぞご無事で…。」
跪いて言うも、それ以上は言葉にならなかったようだった。2人の顔を見ながらただ頷いている。
ググゥゥゥ~
「「 ッ!? 」」
ラルフが大きく眼を瞠った。次の瞬間、吹き出した。
「ァハハハハ…。さ、お2人とも小屋の中に。」
立ち上がって、少し腰を曲げると、小屋に案内するみたいに手を指し向けた。
エレナを先頭に小屋の方へ歩いて行く。扉の前まで来ると、ラルフが3回ノックしてから扉を開けた。
「ツュプレッセ姫が見つかったぞ。」
言われて2人は小屋の中に入って行くと、中にいた騎士達が歓声を上げた。
口々にお互いの無事を喜び合った。
そして、ツュプレッセとエレナを椅子に座らせると、テーブルの上に大きな葉っぱを置き、木の実と果物と焼いた動物の肉を少し乗せた。
「「 わぁ!美味しそう!」」
「お腹が空いたでしょう。こんな物で申し訳ないのですが…。」
「いいえ、何物にも代え難いご馳走です。ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
ツュプレッセとエレナは笑顔で礼を言った。
「ですが、皆様は召し上がられたのですか?」
「ええ。自分達はもう食べた後です。だから、お気になさらず。」
「わかりました。ありがとうございます。」
そう言って、感謝しつつ久しぶりの食事を食べた。
食べ終わってから、皆と今後の事について話し合った。
そしてツュプレッセは、彼らに衝撃的な報告をした。両親、国王と王妃が首を刎ねられ、王宮前広場にその首が晒されている事、兄である王太子の身代わりになって、宰相の息子で王太子の側近でもある従兄のヒースが首を刎ねられ、同じ様にその首が晒されている事を…。
皆一様にショックを受けていた。
そして、彼女は兄である王太子のエルガーが生きている可能性が高い事を告げた。
兄が生きているという事は、側近のフェルト・ユーゲンブルムも生きている筈だと。
言われて、ラルフは彼を思い浮かべた。御前試合では毎回決勝まで残っている程の強者である。ならば、生きているだろう。
「国王と王妃の首を取り戻そうなどという事は考えなくてもいいです。あなた方も生き延びる事だけ考えて下さい。例え私を敵に差し出す事になったとしても…。」
顔色は悪く蒼白い。けれど、決意を秘めた眼には光があった。そんな彼女に皆が力強く頷いたのであった。
そして、今後の方針としては一刻も早くエルガー王太子達と合流する事にした。
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