悲劇にしないでよね!

雫喰 B

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51. 平手打ち

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*今話、暴力シーン、ゲス発言等の不適切な内容です。
苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いいたします。
*登場人物の発言内容にあるような事(「執着型……以下略」の部分)は、創作であり、フィクションです。仮にそのような気質や性格の方がいたとしても、揶揄したり、非難するものではありません。又、そのような分類も鑑定例もフィクションの為、あるかどうかすら分かりません。専門的な知識の無い創作です。



~~~~~



    肉体的にも精神的にも疲れた所為か、夢を見る事もなく泥のように眠っていた。

    目を覚ました私が眼にしたのは、見た事も無い豪華ゴージャスな天蓋だった。

    一瞬、王宮に泊まったのだろうか?と勘違いしてしまうほどの天蓋。

    記憶を辿りながら横を見た私は…

「ぎやぁぁぁ…!!」

    絶叫した。

「んな……なっ…何で?!」

    飛び起きてを指差した。

「んあ?……眼が覚めたの?」

    欠伸をすると、能天気にそう言った。

「何で、あなたが……ッ?!」

    ニヤリと笑うアルベルト。

「まさか忘れたのか?昨夜はあんなに……っぶ!?」
「どうしてあなたは一々……。誤解を招くような事ばかり言わないで下さい!」

    彼の発言に、から思わず枕を投げつけていた。

    ドンドンドンドンダンッ!!

    私の絶叫を聞いて駆けつけた使用人達だろう。

「な、何でもないわ!大丈夫だから!」

《申し訳ございません。確認の為、扉を開けて頂きたいのですが…?》

    アルベルトを見ると、くっくっと笑っている。

    ギッ!と睨み付けると、「仕方ないなぁ。」と言いつつ扉の方へ行き、(恐らく執事だろう)食事を部屋に運ぶように指示すると戻って来た。

「今、食事を部屋に運ぶように言ったから。」

    にこやかに私の頭をポンポンしながら言う。

「助けに来てくれてありがとう。」

    お礼をまだ言ってなかったから、そう言った。
  
「どういたしまして。」

    ニコニコしている彼には申し訳ないけど、何か、色々と聞きたい事が…。

「…けど、何で公爵邸ここ?」
「え?帰りたいって言ってただろ?」
「普通、帰りたいって言ったら伯爵邸自宅でしょ?」
「でも、公爵邸うちの方が近かったし…。」

    と、不思議そうに言われた。

「しかも何で同じベッドで寝てんのよ?」
「何で?って、君が俺の手を握って離さなかったからだよ。」

    何だか嘘臭い。

「けど、私達は婚約者同士でも恋人同士でもないんですけど?」
「たから、結婚しよ!!うん。問題解決だね。」
 「いやいやいや、無い無い、無いわぁ。絶対無い!」

    はっきりと拒否した。

「え?こんな事した仲なのに?」

    腹が立つぐらいいい笑顔で、寝衣の襟から見えている、彼が付けた痕を指で突く。
    そこで思い出した。

「あ、そうだ。それを見て王太子の様子が変わったんだけど…何で?」

    何故か溜め息を吐かれた。

「御守りだから。」
「御守り?何で?これって、いつからそんな意味になったの?」

「そこからかよ。」なんて言って、頭をぐしゃぐしゃしている。

「クラウスみたいに潔癖な奴って、こだわりが強いんだよ。現に君とフリッツの結婚も邪魔しただろ?」
「拘りって?」
「処女。純潔。」
「はあ”ぁ”?何それ…。」

    謎である。それがどうしたら所有痕と結び付くのか?

所有痕それを見て、俺と君が寝たと思い込ませたんだよ。」
「???………ッ!?」

    寝た=肉体関係を結んだ。という事が分かった。

「それで「乳繰り合った」とか何とか言ってたの?!」
「そう。君が拐われる可能性を考えて、それを見たら寝たと思い込むと思って付けたんだ。クラウスのような執着型の潔癖な奴は、それで手を出せなくなる。まぁ、賭けだった訳だけど…。」
 
    へぇ、そうなんだ。と納得しかけて、気づいた。

「ちょっと待って!なら…あの時、痕を付けるだけでよかったんじゃ…?」
「えと…我慢できなくて…。」

    バシッ!

『あ、ビンタ入れちゃった。…けど…。』

    そして、アルベルトとクラウスの会話で、何が引っ掛かったのか分かった。

「あと、クラウスとの会話で言ってた、“身も心も”って何?」

    いつもより声が低くなった。

「いや…だから……ほら、クラウスに勘違いさせたままの方が、何かと都合がいいから…というか何と言うか……。」

     ベシッ!『あ、またやっちゃった…。』

「ど・こ・が、都合がいいって?そんな関係になんてなってないでしょ!誤解されるような発言は止めてよね!」
「いいじゃないか。それに、もう同じベッドで寝た仲だ…イテッ!」

    ベシッ!

「胸に俺の付けた痕だっ……イテッ!」

    ベシッ!

「俺が付けた痕で、君の処じ……イテッ!」

    ベシッ!

「ひ、酷い。何でビンタ……。」

    私が再び手を挙げたのを見て、彼は口を閉じた。

「酷いのはどっちよ……。」

    確かに、婚約解消の書類にサインしたあの時にプロポーズされた。

    でもそれは、その後の行為に理由を持たせる為に言ったのだと思う。

    ここへ連れて帰ったのだって、その責任を取る為だけじゃないんだろうか?

    彼が愛していたのは……今も愛しているのは………ガートルードだけ…なのだから。


    

    
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