悲劇にしないでよね!

雫喰 B

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30. 逃亡

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*間違えて投稿されていました。
    なので、このまま公開します。
    29話を読んでいない方はお忘れなく。
ご迷惑をお掛けしてすみません😣💦⤵️

~~~~~

    見上げた先、フリッツの眼が、忌々し気に私を見下ろしていた。

    考え事をしていた間に、室内の空気が先程までとは、がらりと変わっていた。
    張り詰めた空気に、息が苦しい。

    サンドラに眼を遣ると、怯えながらも成り行きを見守っているみたいだった。

    私を小屋に案内した男が、フリッツの耳元で何か囁いている。
    と、彼の眉間に皺が寄る。

    振り返ってこちらをチラチラ見て、話していたかと思うと、私の方へと歩いて来た。

    屈むと、顔を背けた私の髪を鷲掴み、自分の方に向けさせた。

「時間切れだ…。俺はもう行く。」

    そう言って、突き放すように頭から手を離した。

    そして、男二人を伴い、小屋から出て行った。

『…助かった…の?』

    分からなかったが、取り敢えずサンドラの縄を解いてやった。

    そうしたら、猿轡を自分で外し、私に向かってギャンギャン喚く。
    要約すると、サンドラがこんな目に遭ったのは、私の所為らしい。

「あなたが、あんな男にホイホイ付いて行くからでしょ。そんな事まで私の所為にしないでよ。」

『サンドラよ、それは自業自得というものです。』

    扉をそぉっと開けてみた。
    外に男達がいるようには思えなかった。

『ひょっとして、逃げた?』

    が、帰ろうにも雨が降ってきた。しかも結構な雨量だ。
    仕方がないので、暫く小屋に居る事にした。

「サンドラ、何時からあいつと連絡取ってたの?」
「 … 」

    答えずに、イライラして親指の爪を噛んでいる。

「答えなさい。」
「 … 」
「聞いてる?」
「 … 」

    頑として答えない。

    どのくらいの時間そうしていたか分からないけど、何か外の様子がおかしいというか、何かの気配がする。

    窓から外を見たけれど、何も分からない。
また扉をそぉっと開けたら、剣を突き付けられた。

「「 ッ!?」」

    両手を上げ、相手の顔を見たら、私も驚いたけど、相手も驚いていた。

    彼奴じゃなくて、公爵家の騎士だった。

    犯人が中に居ると思ったようで、声を潜めて聞いてきた。

「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。大丈夫です。あと、あいつらなら逃げました。」
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