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27. 狩猟小屋での再会
しおりを挟む*今話は、暴力シーンあります。ヒロイン含め、侮蔑的な言葉が多数出ます。
苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いします。
~~~~~
狩猟小屋のある緑の森の入り口で馬車を降りた私は、そのまま戻るように御者に命じた。
「 帰りの事は心配しなくていいから」と。
御者は狩猟小屋で誰かと待ち合わせていると分かったのか、それ以上何も言わずに引き返して行った。
この後、私に出来るのは時間を稼ぐ事だけ。私一人でサンドラを助け出すのは無理だから。
どれだけの時間を稼げるか分からない。だから、なるたけ早く来てくれるといいんだけど…。
目の前に狩猟小屋が見えて来た。
そう思ったその時、一人の男が木の陰から現れた。
目付きの鋭い、見た目で鍛え上げられているのが分かる体形。恐らく傭兵だろう。
「付いて来い。」
仕方がないので付いて行く。
小屋の扉をノックして鍵が開けられると扉を開いて先に私を室内に押し込むみ、扉を閉めて鍵をかけた。
部屋の奥、暖炉の近くにあるテーブルとソファー、そこに誰かが座っていた。
「ようこそ。」
優雅にお辞儀する男。
「やっぱり生きていたのね。こんなくだらない事するなら、あの時に死んでおけばよかったのに。」
くっくっと、シニカルな表情で笑うその男の、横面を叩きたくなる。
「相変わらずつれないなぁ、フランは。もっと喜んでくれてもいいのに。」
「喜ぶ訳無いって分かってて言うの止めてくれないかしら。」
「あれを見ても、そう言えるのかな?」
顎を刳って指し示した方を見ると、後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされたサンドラの姿が…。
「やっぱり、死んでおくべきだったわね。」
「くっくっくっ…。フランは何処まで行ってもフランだね。」
相変わらず、他人を馬鹿にした態度に吐き気がする。
「で?昔を懐かしむ為に呼び出した訳じゃないわよね。さっさと目的を言いなさいよ。」
くっくっと笑いながら、「話が早くていいね。」と言った後、ソファーに座るように言ぅ。
仕方なく座ると
「あの男と婚約したと聞いたから、不感症のフランもやっと女になれたのかと思ったら、放置されてる…相手にもされてないってウケる。」
この馬鹿、まだ笑ってる。
「誤解を招く物言いしないでくれる?」
「ぶっ!そこなの?」
ゲラゲラ笑い出したフリッツにムカつく。と同時に、婚約者時代を思い出した。
昔も今も、調子がいいだけのクズな男。
「早く用件言ってくれない?とっとと帰りたいから。」
まだ笑い足りなそうだけど、そう言ったらやっと用件を言う気になったようだ。
「フランがあの男を落とせてたら、話は簡単だったんだけど、いつまで待っても落とせそうに無いから作戦変更する事になっちゃってさぁ。」
「人の預かり知らない所で、勝手に頭数に入れないでよ。」
「フランに拒否権は無いよ。」
そう言って、横で控えていた男に、顎を刳って指図すると、男はサンドラの首にナイフを突き付けた。
予想の範疇だから、驚きはしなかった。が、サンドラは違ったようで、眼を大きく見開き、猿轡を噛まされたまま何か唸っていた。
「あれ?サンドラの事、愛していたんじゃなかったっけ?“真実の愛”とか言ってたよね。」
「あの時はね。けど今は都合がいいから利用しただけ。」
「 あの時も、の間違いでしょ。いつも都合のいい時だけ人の事利用していたくせに。」
パンッ!
と、渇いた音が響く。
衝撃に、2,3歩蹌踉けた。
「ッつー…。」
頬を押さえたまま、フリッツを睨み付けた。
「ホント、相変わらずクソ生意気な眼で見るよね。」
そう言って睨み返すフリッツ。
「そっちこそ、相変わらずよね。都合が悪くなったら手を上げるの。」
口の中に鉄錆びのような臭いが広がる。
『口の中、切れたわ。』
こういう時、力で男に敵わないのが悔しい…。
サンドラと眼が合った。
先程からの、フリッツと私の遣り取りを見て驚いている。
サンドラは、彼の甘い顔しか知らなかったものね。
そりゃあ、驚きもするか…。
丁度いいから、彼の裏の顔も知っておけばいいと思う。
どれ程、甘い顔をして、甘い言葉を囁いても、裏でこんなクズな事が出来る奴なんだって…。
なのにあの時、やっと婚約破棄できると喜んでいたのに、邪魔した彼女の顔を思い出した。
思い出したくもなくて、頭を左右に振った。
あの戦闘があったから別れられて良かったって思っていたのに…。生きてたなんて…。
『ついてないなぁ。けれど、そんな感傷に浸っている場合じゃないのよね。』
「フリッツ。あなた結局何がしたくてこの国に戻って来たの?」
「よくぞ聞いてくれました。汚名返上したくてね。だから、戻って来たんだよ。」
「“汚名返上”ね…。あの時戦場で何があったの?」
「俺は悪くない!」
その言葉を皮切りに、彼は、あの時に戦場であった事を話し出した。
が、自己弁護ばかり、言い訳ばかりの話だった。その話を聞いて、力を入れて握った拳が怒りで震えている事に気付きもせずに、饒舌に話している彼は、自分の言葉に酔っているみたいだった。
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