21 / 76
21. 愛は無くとも
しおりを挟む
*今話は、フランとアルベルト、交互の視点で話が進みます。
~~~~~
公爵家へ向かう馬車の中、ミリィは窓の外を眺めながら溜め息を吐く。
「公爵家との結婚って、大変なんですね。妻になる為の勉強があるのって、王家に嫁ぐ時だけだと思ってました。」
「仕方無いわよ。爵位が上の家から、下の爵位の家に嫁ぐなら、そんな必要ないけど、その逆ってなるとね…。」
真実って、時に残酷…。
フリッツがあの時死んでて、王妃や王太子妃が言うみたいなミーハーな理由なら、まだマシだった。
そこに愛は無くとも…良い意味での何かが育ったかもしれないのに…。
何だか、今日は閣下に会う前から疲れちゃったみたい…。やだなぁ…。
恐らく、フリッツが捕まるか、あの時戦場で何があったか分かったら、この婚約、又は婚姻が無効になるんだと思う。
それまでは、この馬鹿げた舞台から降りる事など許されないんだろうな…。
そして今日も、顔に笑顔を貼り付け、大階段下で出迎えてくれている閣下に、私も貼り付けた笑顔で挨拶する。
『愛は無くとも…か。とんだ茶番よね。』
~~~~~
今日の彼女は、何処か様子がおかしかった。
元婚約者と連絡が取れて、何か思う所でもあるのだろう。
というよりも、彼がこの国に戻って来ると知って、この婚約が嫌になったんだろう。
そう、彼は既にこの国に密入国している。
元々、騎士団内で起こった対立へのカンフル剤的な意味合いの婚約だったのだから、頃合いを見計らって婚約解消なり、離縁なりする事が前提の婚約だった。
だから、それまでは彼女に我慢してもらうしかないな。
しかし、幾らそれらしく見せる為とは言え、“王命”はやり過ぎだろ。
愛は無くとも…なんて言葉があるが、愛する男が戻って来た以上、例え王命だったとしても、彼女と俺の間に、何か育つ事など無いのに…。
…?
これじゃあ、まるで彼女の元婚約者が居なかったら、何か育ったみたいな言い方になってしまうじゃないか。
俺の見た目や地位に群がってくる女達とは違うと思い込んで、少し期待していただけに、それを裏切られて彼女に対して悪感情ばかりになっていた。
とんだ茶番だな…。
そして俺は今日も、笑顔を顔に貼り付けて彼女を出迎える。
今日も交流の為のお茶会だ。
しかも、王家主催の夜会が近いから、ダンスの練習を二人でする事になっている。
ダンスは苦手だ。
夜会などで令嬢や未亡人達に群がられるが、色々なキツい香水の臭いが混ざり合って吐きそうになり、頭痛までする。
幸い(?)彼女は香水を使っていないのかと思うほど香水の匂いはしない。
が、元々の彼女の匂いか、ほんの少しだけ香水を使っているかのように、ふとした時にほんのりといい香りがする。
それはいいのだが…。
彼女とダンスをした事は無いが、やはり彼女も他の女達のように必要以上に、身体を密着させてきたり、胸を押し付けてきたりするのだろうか?
それを考えただけで憂鬱になる。
そう、ダンスなどというものを作った奴を怨みたくなる程に…。
ダンスなんて無くなればいい…。
~~~~~
お茶会の後、ダンスの練習があると聞いて眩暈がした。
近く、王家主催の夜会があるかららしいけど、私からすればとんでもない!
思わず「誰だよ、ダンスなんて考えた奴!」と、腹の中で悪態を付いてしまうくらい…。
ムスクをシャワー代わりに浴びたのか?と言いたくなる程キツいムスクの臭いと汗と煙草の臭いが混ざった臭いに頭痛と吐き気と眩暈に襲われながら、緊張して手汗で湿った手と手を繋ぎ合わせた上に、身体を必要以上に密着させて踊るなんて、何の罰ゲームだよ?と言いたくなる。
まぁ、閣下はキツいムスクの臭いも煙草の臭いもしないし、これまで傍に居る事があっても、汗の臭いを感じた事が無いのが救いと言えば救いではあるが…。
あの閣下の事だから、ムッツリスケベでもない限り、身体を密着させてくるなんて事も無いと思われる…。
逆に、私がダンスが苦手な所為で、舌打ちぐらいはされそうだ。
舌打ちだけで済めばいいが、+ 侮蔑したような冷たい眼でみられるのだろうな。
おまけに、足でも踏もうものなら…。“推して知るべし”である。
その様を想像しただけで憂鬱になる。
「はあぁぁぁ…。ホント誰だよ、ダンスなんて考えた奴。」
一人言ちた。
~~~~~
公爵家へ向かう馬車の中、ミリィは窓の外を眺めながら溜め息を吐く。
「公爵家との結婚って、大変なんですね。妻になる為の勉強があるのって、王家に嫁ぐ時だけだと思ってました。」
「仕方無いわよ。爵位が上の家から、下の爵位の家に嫁ぐなら、そんな必要ないけど、その逆ってなるとね…。」
真実って、時に残酷…。
フリッツがあの時死んでて、王妃や王太子妃が言うみたいなミーハーな理由なら、まだマシだった。
そこに愛は無くとも…良い意味での何かが育ったかもしれないのに…。
何だか、今日は閣下に会う前から疲れちゃったみたい…。やだなぁ…。
恐らく、フリッツが捕まるか、あの時戦場で何があったか分かったら、この婚約、又は婚姻が無効になるんだと思う。
それまでは、この馬鹿げた舞台から降りる事など許されないんだろうな…。
そして今日も、顔に笑顔を貼り付け、大階段下で出迎えてくれている閣下に、私も貼り付けた笑顔で挨拶する。
『愛は無くとも…か。とんだ茶番よね。』
~~~~~
今日の彼女は、何処か様子がおかしかった。
元婚約者と連絡が取れて、何か思う所でもあるのだろう。
というよりも、彼がこの国に戻って来ると知って、この婚約が嫌になったんだろう。
そう、彼は既にこの国に密入国している。
元々、騎士団内で起こった対立へのカンフル剤的な意味合いの婚約だったのだから、頃合いを見計らって婚約解消なり、離縁なりする事が前提の婚約だった。
だから、それまでは彼女に我慢してもらうしかないな。
しかし、幾らそれらしく見せる為とは言え、“王命”はやり過ぎだろ。
愛は無くとも…なんて言葉があるが、愛する男が戻って来た以上、例え王命だったとしても、彼女と俺の間に、何か育つ事など無いのに…。
…?
これじゃあ、まるで彼女の元婚約者が居なかったら、何か育ったみたいな言い方になってしまうじゃないか。
俺の見た目や地位に群がってくる女達とは違うと思い込んで、少し期待していただけに、それを裏切られて彼女に対して悪感情ばかりになっていた。
とんだ茶番だな…。
そして俺は今日も、笑顔を顔に貼り付けて彼女を出迎える。
今日も交流の為のお茶会だ。
しかも、王家主催の夜会が近いから、ダンスの練習を二人でする事になっている。
ダンスは苦手だ。
夜会などで令嬢や未亡人達に群がられるが、色々なキツい香水の臭いが混ざり合って吐きそうになり、頭痛までする。
幸い(?)彼女は香水を使っていないのかと思うほど香水の匂いはしない。
が、元々の彼女の匂いか、ほんの少しだけ香水を使っているかのように、ふとした時にほんのりといい香りがする。
それはいいのだが…。
彼女とダンスをした事は無いが、やはり彼女も他の女達のように必要以上に、身体を密着させてきたり、胸を押し付けてきたりするのだろうか?
それを考えただけで憂鬱になる。
そう、ダンスなどというものを作った奴を怨みたくなる程に…。
ダンスなんて無くなればいい…。
~~~~~
お茶会の後、ダンスの練習があると聞いて眩暈がした。
近く、王家主催の夜会があるかららしいけど、私からすればとんでもない!
思わず「誰だよ、ダンスなんて考えた奴!」と、腹の中で悪態を付いてしまうくらい…。
ムスクをシャワー代わりに浴びたのか?と言いたくなる程キツいムスクの臭いと汗と煙草の臭いが混ざった臭いに頭痛と吐き気と眩暈に襲われながら、緊張して手汗で湿った手と手を繋ぎ合わせた上に、身体を必要以上に密着させて踊るなんて、何の罰ゲームだよ?と言いたくなる。
まぁ、閣下はキツいムスクの臭いも煙草の臭いもしないし、これまで傍に居る事があっても、汗の臭いを感じた事が無いのが救いと言えば救いではあるが…。
あの閣下の事だから、ムッツリスケベでもない限り、身体を密着させてくるなんて事も無いと思われる…。
逆に、私がダンスが苦手な所為で、舌打ちぐらいはされそうだ。
舌打ちだけで済めばいいが、+ 侮蔑したような冷たい眼でみられるのだろうな。
おまけに、足でも踏もうものなら…。“推して知るべし”である。
その様を想像しただけで憂鬱になる。
「はあぁぁぁ…。ホント誰だよ、ダンスなんて考えた奴。」
一人言ちた。
0
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる