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20. 迷惑でしかない
しおりを挟む今日は報告の為に登城している。
国王の執務室に併設されている、応接間で報告をした。
アルバ伯爵家には、初めに接触があって以降、2度接触があった事が確認されている。
接触した伯爵家の使用人は特定されたが、その使用人が次に誰と、どの様に接触しているかが、未だ不明である。
「アルの婚約者の様子は?怪しい所は無いの?」
「怪しい…というか、フリッツ・エックハルト卿の名前を出したら動揺して、それを隠そうとした事くらいですね。それ以外は特に…。」
「本当にフラン…妹が、元婚約者と連絡を取り合っているのでしょうか?」
フランの兄が、信じられないとばかりに聞いた。
「まだ確証は無いから何とも…。だから、引き続き協力を頼む。」
「分かりました。」
アルベルトは考えた。いつも近くに居る兄でさえ、元婚約者との接触については、信じられないといった風だ。
以外と彼女は、そういった立ち回りが得意なのかもしれない…。だが、予断は禁物だ。今暫くは、様子を見るしかないだろう。
俺の考えが間違えていて欲しいと、彼女を信じたいと思っている。けれども心の奥に、何か黒い染みのような物が広がっていくような、そんな感じがした。
~~~~~
クラウディアが押し掛けて来た日から二週間後、今日は定例の交流お茶会の日。
お義母様と、サンドラに見つからないように馬車に乗り込んで、公爵邸までいざ出発。
エヴァの家で、私とユークリッド様とエヴァの3人でお茶会をして以降、やっぱりというか、ユークリッド様には四六時中王家の影が張り付いて、お出かけすると、ぞろぞろ付いて来て鬱陶しいらしい。
と、昨日、ユークリッド様から来た連絡が、
”本当は、またお茶会(報告会)をしたかったけど、ちょっと日にちを開けるわね。ただこれだけは渡したい!って思っている物(情報)があるから、クリスにお使い(伝言)頼んどいたわ。”
だから、人気パティスリーの新作スイーツをクリスが買って届けてくれたのね。
届けられた物を受け取った後、添えられた手紙を見て思った。
恐らく、ユークリッド様から私に届けられる物は、検閲を受けているとみて間違い無い。
だから、手紙に書かれた文章は、私達の間でだけ通じるように書かれているのだと思う。
そして、私にだけ分かるように
「抜け出して行っても、迷惑なだけだから、会わずにおくわ。だそうです。」
と言うと、優雅に丁寧な礼をして帰って行った。
王家の影にバレないようにした伝言…。
“会わずにおくわ。”は(会わない方がいい。)
恐らく、“迷惑なだけだから”はそのままの意味。
とすると、“抜け出して”は…?
今、私が会って迷惑にしか感じない人物は、勿論、元婚約者。
じゃあ、“抜け出して”も…そのままの意味だとすると…。
元婚約者が、”隣国を抜け出して、私に会いに来るから、会わない方がいい。”
あの馬鹿、迷惑にも程があるでしょ!!
っていうか、何だってこう次から次へと、頭の痛い話ばかり…。
にしても、この国によく戻って来れるわね。
何を考えているのか分かんないけど。
でも、いきなり私に会いに来るとも思えない。
ならば、先にサンドラと連絡を取る筈。
いや、隣国を抜け出しているなら、既に連絡を取っているに違い無い。
ミリィを呼んで、ここ最近のサンドラの様子で変わった事が無いか聞いた。
「変わった事ですか?そうですねぇ…あ、そう言えば、2,3日前にいそいそとお出かけしていました。しかも、急なお出かけで…。珍しく何も買わずに。思えば、その日から、なんかイライラしていますねぇ。」
どうりで、最近私の周囲が静かだった訳ね。
恐らく、その日に接触があったと思われる。
私は急いでエヴァに、“ユークリッド様が欠席なので、お茶会(報告会)は中止にしましょう。”と手紙に書き、出しておくようにミリィに頼んだ。
元婚約者が隣国を抜け出したとなると、閣下との交流お茶会は、腹の探り合いになるだけでなく、(氷撃が)被弾する可能性が高い。
そして、その覚悟を決めたのだった。
何故なら、元婚約者が私に接触して来る事を、見越した上で、王命が下され結ばれた婚約と考えられるから。
で、こんな事考え付くのって、お腹が真っ黒なあの方しか思い浮かばない。
王妃と王太子妃の話が無くても、王命での婚姻が決まっていたという事か…。
~~~~~
*上記会話中の、“ ” 内は彼女達だけに通じる(訳している)物です。
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