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4. 舞台裏 ①
しおりを挟む王命。
国王からの命令。
当然、その国王が治める国の国民から貴族、国王の身内に至るまで王命に逆らう事は出来ない。
そして、王命による婚姻の為の手順の一つである“顔合わせ”、つまり対面する日時がフォイエルバッハ公爵家とアルバ伯爵家の間で話し合われ決まった。
でもって、今日もまたユークリッド様とエヴァンジェリン(愛称・エヴァ)と三人でお茶会をしている。
勿論、公爵家に嫁ぐ為の勉強も始まっている。
けれど、はっきり言って、私に公爵夫人が務まるとは思えない。
ええ、これっぽっちも。
余計な事を言ってくれた脳内お花畑の彼女、王太子妃テレサに対して、沸々と怒りが湧く。
思えば、死んだ婚約者(夫?)と婚約解消が出来なくなったのも、彼女の余計な一言の所為だった。
しかも今回は、あの“氷撃の撃墜王”を巻き込んでくれた。
ほんと、勘弁して欲しい。
前回は、両家の有責だったから、痛み分けという訳でもないけど、話し合う事が出来た。
でも…今回は…
ここまでくると、私の事を社会的に葬りたいのか?と思ってしまいそうになる。
というよりも、家ごと抹消される。
悪意が無い(と私は思いたいが)分、質が悪い。
だから、劇で演じられているような悲劇じゃないのだ。
私と彼、死んだ婚約者のフリッツ・エックハルトは、学園に入ってから知り合った。
この国の貴族は、13歳から18歳まで学園に通う事が決められている。そして、二部制になっていて、13歳~15歳までと16歳~18歳までで分けられている。勿論、校舎も違う為、学年が違っていれば学園内で顔を合わせる事は無いと思う。
だから、フリッツの妹のローラが私と同じクラスで仲良くなり、侯爵家に遊びに行った時に初めて出会った。
社交的だった彼は友人も多く、会話も楽しくて、控え目に言っても、気の合う友人同士といった関係だったのだと思う。
その後、ローラが家に遊びに来た時、何故かフリッツも一緒に来た。
そして、それは起こった。
何故か、義妹がそれに混ざろうとしたので、
「サンドラの友人じゃなくて、私の友人だから、何であなたがそこに加わろうとするの?」
と、疑問に思ったから聞いたのだが、
「お義姉様だけあんな素敵な方と、お茶するなんてズルいぃ!」
そう言って、お義母様に泣き付いた。
「あなたねぇ、そんな意地悪な事、可愛い義妹に、よくできるわね。少しぐらい優しくしてあげれば良いじゃない。」
またか…。
と思ったけど、此処で私が譲らなければ後々面倒な事になるのが、いつものパターンなので渋々OKしたら、ローラとフリッツが並んで座っている、二人掛けのソファーに無理やり座ったのだ。
しかも、フリッツの隣に擦り寄って。
私よりも、見た目が格段に上の義妹だからか、終始にこやかだった彼。
すっかり目尻が垂れ下がり、蕩けそうな笑顔を見て、フリッツって、そんな顔もするんだ。と驚いた。
それ以来、ローラが家に遊びに来る時には彼が付いて来て、サンドラが当たり前に彼の隣に座る事が当たり前になった。
そして4人で居ても、私とローラが会話している前で、彼とサンドラがイチャこらしていた。
だから、侯爵家から結婚を申し込まれた時、有り得ない方向から、手斧が飛んできて、スコッと刺さったぐらいの衝撃を受けた。
『なんで?!』
そう、訳が分からない。
なんでサンドラじゃないの?!
本人にも詰め寄ったんだけど、口の中でモゴモゴ、ゴニョゴニョ言うばかりで要領を得ない。
だから、ローラを介して侯爵と侯爵夫人に直談判する事にした。
そこで私は衝撃の事実を知った。
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