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4.優しすぎる貴方
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あれから5日経ち、今日は両家の話し合いと言っても、婚約破棄の話し合いです。
そして、婚約破棄に伴う条件等を決める為のものです。
婚約破棄の話をする前に、彼が謝罪をしたいと言うので、それを聞く事にしました。
彼は私に向かって、不貞行為をして申し訳なかった。すまなかった。と言って頭を下げました。
けれど、次に続いた言葉に絶句しました。
「マグダレーナ、君の事を今でも愛しているんだ。彼女の事は、妹の様に思っていて、支えてあげたかっただけだ。けれど慰めているうちに、魔が差したと言うか、彼女に誘惑されてあんな事になってしまって、後悔している。もうこんな事は二度としない。できればやり直したい。お願いだ!本当に愛していて、妻にしたいのは君だけなんだ!!」
私は、一瞬彼が何を言っているのか分かりませんでした。
優しい彼は、私を傷つけてしまったから、その償いがしたいのでしょうか?
愛していると言っていましたが、家族や友人に対する、親愛や友愛の情でしょう。
本当に愛していて妻にしたいのは、彼女だけのはずです。
だって、私はあんなに熱い目を向けられた事などありません。
あんなに、愛おしくて、宝物の様に力強く抱き締められた事も…。
私には、罪悪感から償いをしたいと思っているだけなのです。
きっとそうなのでしょう。
優しすぎるぐらい優しい人なのですから。
でなければ、そう言った後でこんな信じられない様な事を言ったりはしないでしょう。
「ただ、離縁され身も心も傷付いて可哀想な彼女を、切り捨てる事など出来ない。勿論、彼女には愛情は無い。同情や家族に対する情しかない。妻にしたくて、一生側にいて欲しいと思って愛しているのは君だけだ。けれど、魔が差したとはいえ、関係を持ってしまった彼女を切り捨てる事など出来ない。責任をとる意味で結婚後、彼女を家族として、支えてあげる事を許して欲しい。」
やっぱり、彼は優しすぎるぐらい優しい人だわ。
私と彼女に、責任を取りたいと本気で思っているのね。
けれど、私には無理だわ。
貴族家の女として産まれたなら、愛人の存在も許してあげないといけないと言われても、心の狭い私には絶対に無理。出来ない。
たとえ、愛人にするのではなく、家族として支えたいと言われても…。
そんな狭量な私には、彼の様に優しい(優しすぎる)人と結婚するのはムリ。
だから、そう言う事にした。
「リンドブルム侯爵令息様。やっぱり貴方は、優しい(優しすぎる)人なのですね。けれど、無理なのです。こんな狭量な私には、貴方のおっしゃる事を全て受け入れる妻になる事は無理ですわ。」
「レーナ、君を愛しているんだ!…けれど、関係を持ってしまった今、彼女に対する責任もあるのを分かって欲しい。」
最後に私の愛称である、レーナと呼んでくださいますのね。本当に優しい方。
「ですから、婚約を破棄しましょう。私さえいなければ、彼女只一人を愛する事が出来るのです。そして、二人で幸せになれますわ。」
「嫌だ。君を失いたくない。」
「コンラート様、お願いします。最後のお願いなのです。私は、もうこれ以上、お二人の幸せの邪魔をしたくないのです。分かって下さい。」
そう言うと、彼の顔は青くなり、俯いてしまった。
けれど、嫌味でも何でもなく、本当にそう思っているのです。お二人には幸せになって欲しいと。
私は、婚約破棄の書類にサインをして、彼と話す事はもう無いと告げ、後の条件等の話し合いは両親にお願いすると、応接室から出て行った。
そして、暫く一人になりたいと侍女に告げ、自室に入った。
長椅子に腰掛け、肘置きに凭れ掛かって溜め息を吐いた。
酷い倦怠感を覚えた。精神的な疲労も…。
けれど、不思議と心は薙いでいた。
あんなに彼の事を愛していたはずなのに…。
私は本当は、冷たい人間だったのでしょう。
だって、優しい(優しすぎる)彼の、償いたいという気持ちを理解出来ないどころか、許せないのだから…。
ならば、あの時ドアを開けたのは間違いでは無かったのでしょう。
所詮、優しい(優しすぎる)彼の隣に居れる様な人間ではなかったのだから。
彼の気持ちを聞いた今では素直にそう思えた。
…終わったのだ。何もかも。
彼と私の未来なんて、最初から無かったのです。
この先、彼は彼女と結婚して、死ぬまでその愛を貫き、幸せな家庭を築いていくのでしょう。
そう思って、心が千切れる様な痛みを堪え、真実に愛し合う二人に幸せになって欲しくて、彼を諦めたのです。
なのに、これで終わりでは無かった…。
この時の私は、今は悲しくとも、いつか前を向いて、明日に向かって歩いていけると、本当に信じていたのです。
けれど、それは叶わなかった。
そして、婚約破棄に伴う条件等を決める為のものです。
婚約破棄の話をする前に、彼が謝罪をしたいと言うので、それを聞く事にしました。
彼は私に向かって、不貞行為をして申し訳なかった。すまなかった。と言って頭を下げました。
けれど、次に続いた言葉に絶句しました。
「マグダレーナ、君の事を今でも愛しているんだ。彼女の事は、妹の様に思っていて、支えてあげたかっただけだ。けれど慰めているうちに、魔が差したと言うか、彼女に誘惑されてあんな事になってしまって、後悔している。もうこんな事は二度としない。できればやり直したい。お願いだ!本当に愛していて、妻にしたいのは君だけなんだ!!」
私は、一瞬彼が何を言っているのか分かりませんでした。
優しい彼は、私を傷つけてしまったから、その償いがしたいのでしょうか?
愛していると言っていましたが、家族や友人に対する、親愛や友愛の情でしょう。
本当に愛していて妻にしたいのは、彼女だけのはずです。
だって、私はあんなに熱い目を向けられた事などありません。
あんなに、愛おしくて、宝物の様に力強く抱き締められた事も…。
私には、罪悪感から償いをしたいと思っているだけなのです。
きっとそうなのでしょう。
優しすぎるぐらい優しい人なのですから。
でなければ、そう言った後でこんな信じられない様な事を言ったりはしないでしょう。
「ただ、離縁され身も心も傷付いて可哀想な彼女を、切り捨てる事など出来ない。勿論、彼女には愛情は無い。同情や家族に対する情しかない。妻にしたくて、一生側にいて欲しいと思って愛しているのは君だけだ。けれど、魔が差したとはいえ、関係を持ってしまった彼女を切り捨てる事など出来ない。責任をとる意味で結婚後、彼女を家族として、支えてあげる事を許して欲しい。」
やっぱり、彼は優しすぎるぐらい優しい人だわ。
私と彼女に、責任を取りたいと本気で思っているのね。
けれど、私には無理だわ。
貴族家の女として産まれたなら、愛人の存在も許してあげないといけないと言われても、心の狭い私には絶対に無理。出来ない。
たとえ、愛人にするのではなく、家族として支えたいと言われても…。
そんな狭量な私には、彼の様に優しい(優しすぎる)人と結婚するのはムリ。
だから、そう言う事にした。
「リンドブルム侯爵令息様。やっぱり貴方は、優しい(優しすぎる)人なのですね。けれど、無理なのです。こんな狭量な私には、貴方のおっしゃる事を全て受け入れる妻になる事は無理ですわ。」
「レーナ、君を愛しているんだ!…けれど、関係を持ってしまった今、彼女に対する責任もあるのを分かって欲しい。」
最後に私の愛称である、レーナと呼んでくださいますのね。本当に優しい方。
「ですから、婚約を破棄しましょう。私さえいなければ、彼女只一人を愛する事が出来るのです。そして、二人で幸せになれますわ。」
「嫌だ。君を失いたくない。」
「コンラート様、お願いします。最後のお願いなのです。私は、もうこれ以上、お二人の幸せの邪魔をしたくないのです。分かって下さい。」
そう言うと、彼の顔は青くなり、俯いてしまった。
けれど、嫌味でも何でもなく、本当にそう思っているのです。お二人には幸せになって欲しいと。
私は、婚約破棄の書類にサインをして、彼と話す事はもう無いと告げ、後の条件等の話し合いは両親にお願いすると、応接室から出て行った。
そして、暫く一人になりたいと侍女に告げ、自室に入った。
長椅子に腰掛け、肘置きに凭れ掛かって溜め息を吐いた。
酷い倦怠感を覚えた。精神的な疲労も…。
けれど、不思議と心は薙いでいた。
あんなに彼の事を愛していたはずなのに…。
私は本当は、冷たい人間だったのでしょう。
だって、優しい(優しすぎる)彼の、償いたいという気持ちを理解出来ないどころか、許せないのだから…。
ならば、あの時ドアを開けたのは間違いでは無かったのでしょう。
所詮、優しい(優しすぎる)彼の隣に居れる様な人間ではなかったのだから。
彼の気持ちを聞いた今では素直にそう思えた。
…終わったのだ。何もかも。
彼と私の未来なんて、最初から無かったのです。
この先、彼は彼女と結婚して、死ぬまでその愛を貫き、幸せな家庭を築いていくのでしょう。
そう思って、心が千切れる様な痛みを堪え、真実に愛し合う二人に幸せになって欲しくて、彼を諦めたのです。
なのに、これで終わりでは無かった…。
この時の私は、今は悲しくとも、いつか前を向いて、明日に向かって歩いていけると、本当に信じていたのです。
けれど、それは叶わなかった。
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