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1.はじまり
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私の名前は、マグダレーナ・シュトラウス。子爵家の次女でございます。
平凡、ええ、至って平凡な、見た目も十人並み、要は平凡と言う事です。それこそ、何処にでもいるような。
だからと言うわけでもないのですが、髪の色も、瞳の色も、周りは見るからに貴族といったような、金髪碧眼な方ばかりの中で、地味な焦げ茶色という低位貴族や平民に多い、極々平凡な色でございます。
まぁ、私の容姿の事は兎も角、そんな私も学園卒業前に、18歳にして漸く婚約を結ぶ事が出来まして…。
浮かれておりました。はい。
と言うのも、婚約者の方がこんな平凡な私には不釣り合いなほどの、優良物件で。
コンラート・リンドブルム侯爵令息、リンドブルム侯爵家の御嫡男で、それはもう見目麗しい、金髪碧眼の貴公子、今で言うところのイケメンでございます。
おまけに、お若いのに騎士団の副団長で、将来有望、出世間違い無しと評判の優良物件。
何であんな地味な女がとか、卑怯な手を使ったとか、実家が投資して後押しした商会が利益を産み出した事から、実家の金で縛りつけた等と色々噂されておりますが、優しい婚約者様は、私を愛しているから婚約したのだから、気にする必要は無いとおっしゃって下さいます。
平凡で地味だと、ずっと言われ続けていても、イケメンで優しい婚約者様にそう言われると、私も一応、女なので、やはり舞い上がってしまいますわ。
思えばこの時が幸せのピークだったのですね。
まさか、後々になってあんなに苦しくて、悲しい思いをする事になるとは、すっかり舞い上がってしまっていた私は、夢にも思いませんでしたわ。
婚約当初は、コンラート様の様な素晴らしい方が私の婚約者になるとは思ってもみませんでしたし、一生結婚など出来ないと思っておりましたので、恋愛にもあまり興味はありませんでした。
それこそ、そのうち親が婚約話を持って来てくれるかも?と、暢気に構えていました。
だから、学園を卒業してすぐの春の舞踏会で、その噂を初めて耳にしました。
その噂を教えてくれたのは、学園時代からの友人、マリーカ・シュタインバッハ男爵令嬢でした。
彼女も婚約者が決まるのが遅くて、卒業パーティーの時に、やっと決まったのでした。
お相手の方は、騎士団に所属している方で、同じ爵位の男爵家の方で、卒業後にその方から聞いた話だった様です。
その噂というのは、騎士団の中では有名な噂だったらしく、騎士団の方々というのは同じ騎士仲間、つまり、身内の醜聞は外部者には洩らさないらしく、その所為で、私も友人から聞くまで知らなかったのでした。もっと早くにその噂を知っていたら婚約はしなかったかもしれません。とは言っても、後の祭り、今更です。
その噂とは、コンラート様には恋い焦がれた幼馴染みの伯爵令嬢が居られ、口約束ではあるものの、お二人は婚約していたそうです。そして、婚約が可能になる16歳になったら、正式に婚約するはずが、16歳になる直前に侯爵家との間で、正式に婚約を結ばれてしまい、お二人は泣く泣く別れた。と言う話でした。
それを聞いた私は、物凄くショックでした。
それはそうです。だって、お二人は想い合っていたのです。そして、引き裂かれて婚約、学園を卒業と同時にご結婚されたのです。
彼ほど真面目な方ならば、まだその方を愛している可能性は高いでしょう。
彼と婚約して、日に日に彼への想いが大きくなっていっていた私の胸は、小刻みに杭を打たれているみたいに、ズキズキ痛みます。
ああ、私はどうしたらいいのでしょう。
この婚約は、侯爵家から申し込まれた話。
爵位の低い子爵家からお断りする事など出来ません。
せめて、もっと早く、婚約する前ならば。と、悔やまれます。
願わくば、彼が彼女の事を忘れ、前向きに私との結婚生活を送る意志がありますように。
自分に都合の良い願いなのは分かっています。
けれどそう願わずにはいられませんでした。
平凡、ええ、至って平凡な、見た目も十人並み、要は平凡と言う事です。それこそ、何処にでもいるような。
だからと言うわけでもないのですが、髪の色も、瞳の色も、周りは見るからに貴族といったような、金髪碧眼な方ばかりの中で、地味な焦げ茶色という低位貴族や平民に多い、極々平凡な色でございます。
まぁ、私の容姿の事は兎も角、そんな私も学園卒業前に、18歳にして漸く婚約を結ぶ事が出来まして…。
浮かれておりました。はい。
と言うのも、婚約者の方がこんな平凡な私には不釣り合いなほどの、優良物件で。
コンラート・リンドブルム侯爵令息、リンドブルム侯爵家の御嫡男で、それはもう見目麗しい、金髪碧眼の貴公子、今で言うところのイケメンでございます。
おまけに、お若いのに騎士団の副団長で、将来有望、出世間違い無しと評判の優良物件。
何であんな地味な女がとか、卑怯な手を使ったとか、実家が投資して後押しした商会が利益を産み出した事から、実家の金で縛りつけた等と色々噂されておりますが、優しい婚約者様は、私を愛しているから婚約したのだから、気にする必要は無いとおっしゃって下さいます。
平凡で地味だと、ずっと言われ続けていても、イケメンで優しい婚約者様にそう言われると、私も一応、女なので、やはり舞い上がってしまいますわ。
思えばこの時が幸せのピークだったのですね。
まさか、後々になってあんなに苦しくて、悲しい思いをする事になるとは、すっかり舞い上がってしまっていた私は、夢にも思いませんでしたわ。
婚約当初は、コンラート様の様な素晴らしい方が私の婚約者になるとは思ってもみませんでしたし、一生結婚など出来ないと思っておりましたので、恋愛にもあまり興味はありませんでした。
それこそ、そのうち親が婚約話を持って来てくれるかも?と、暢気に構えていました。
だから、学園を卒業してすぐの春の舞踏会で、その噂を初めて耳にしました。
その噂を教えてくれたのは、学園時代からの友人、マリーカ・シュタインバッハ男爵令嬢でした。
彼女も婚約者が決まるのが遅くて、卒業パーティーの時に、やっと決まったのでした。
お相手の方は、騎士団に所属している方で、同じ爵位の男爵家の方で、卒業後にその方から聞いた話だった様です。
その噂というのは、騎士団の中では有名な噂だったらしく、騎士団の方々というのは同じ騎士仲間、つまり、身内の醜聞は外部者には洩らさないらしく、その所為で、私も友人から聞くまで知らなかったのでした。もっと早くにその噂を知っていたら婚約はしなかったかもしれません。とは言っても、後の祭り、今更です。
その噂とは、コンラート様には恋い焦がれた幼馴染みの伯爵令嬢が居られ、口約束ではあるものの、お二人は婚約していたそうです。そして、婚約が可能になる16歳になったら、正式に婚約するはずが、16歳になる直前に侯爵家との間で、正式に婚約を結ばれてしまい、お二人は泣く泣く別れた。と言う話でした。
それを聞いた私は、物凄くショックでした。
それはそうです。だって、お二人は想い合っていたのです。そして、引き裂かれて婚約、学園を卒業と同時にご結婚されたのです。
彼ほど真面目な方ならば、まだその方を愛している可能性は高いでしょう。
彼と婚約して、日に日に彼への想いが大きくなっていっていた私の胸は、小刻みに杭を打たれているみたいに、ズキズキ痛みます。
ああ、私はどうしたらいいのでしょう。
この婚約は、侯爵家から申し込まれた話。
爵位の低い子爵家からお断りする事など出来ません。
せめて、もっと早く、婚約する前ならば。と、悔やまれます。
願わくば、彼が彼女の事を忘れ、前向きに私との結婚生活を送る意志がありますように。
自分に都合の良い願いなのは分かっています。
けれどそう願わずにはいられませんでした。
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