18 / 26
── 第一章 ──
17. 一夜が明けて
しおりを挟む一夜明けて、ルイーゼと顔を合わせたら、真っ赤になって照れている。
「可愛いよ。」
そう言えば、耳まで真っ赤になって背中を向けて恥ずかしがっている。
益々可愛くて後ろから抱き締める。
そうすると、身体を縮めて恥ずかしそうにして…。の繰り返し。
可愛い。
こんなに幸せでいいのだろうか?
逆に、幸せすぎて怖いぐらいだった。
すると、ルイーゼが俺が思っていた事と同じ事を言った。
驚いた俺がそれを言うと、同じ事を感じていた事に彼女も驚き、不安そうにしているから、思わず強く抱き締めた。
暫くお互いの体温と心臓の鼓動を感じてその幸せを噛み締めた。
だが、この時に感じた俺とルイーゼの不安が、後日とんでもない形で現れるとは思ってもみなかった。
この半年後、ルイーゼが妊娠、ウルリッヒが婚約とライテンバッハ公爵家ではお祝いムード一色だった。
両親も俺も、そしてウルリッヒも、本当に幸せで、浮かれていた。だから気づかなかったのだ。
オトフリートとフランツの中で限界まで膨れ上がった妬み、嫉み、憎悪に…。
そして、それが何を齎すのかを…。
その事を知るのは一月程経ってからだった。
~~~~~
━ ウルリッヒの回想 ━
その日は嫌になるぐらいの青空だった。
こんな日はギーゼラ(愛称・ジジ)と一緒に遠駆けでもして、彼女の膝枕で日向ぼっこでもしながら微睡みたい。などと呑気な事を考えていた。
一月程前、彼女にプロポーズをしてOKを貰い、俺達は婚約した。
来年には結婚だ。少しずつだが、その準備も二人でしていく。
幸せってこういう事なんだと実感していた。
新婚の兄夫婦の所も、義姉上が身籠ったという話だし、目出度いと浮かれていた。
まさか、あの二人に奈落の底に突き落とされるなど、これっぽっちも考えていなかった。
彼女は、王国騎士団の第三騎士団団長である俺の副官を勤めていた。
なのに、始業時間になっても顔を見せないどころか連絡もない。
第三騎士団団長の副官は、彼女を含めて3人いる。
残りの2人、ジークフリート・リッテンハイムとワルター・バッケスホーフに、連絡が有ったかどうか聞くと共に騎士団本部にも確認させた。
が、連絡は無かった。
嫌な予感に、彼女の実家であるリンツ伯爵家所有のタウンハウスに連絡をさせると、昨夜から帰っていないと言う。
俺と一緒かもしれないと、ライテンバッハ家に連絡をしたところだと言われた。
応対した執事に、彼女が職場に顔を出していない事を伝え、直ちに行方を探す事と、事が事だけに内密にするようにと言い含めた。
貴族社会では、未婚女性がトラブルに巻き込まれただけでも瑕疵がつく。
傷物扱いされるのだ。例えそれが被害者の側だったとしても…。
万が一、彼女に危害が加えられるような事があったら…。
そう考えただけで気が狂いそうだった。
「ルリ、ジジだって伊達に騎士やってる訳じゃないから…」
「んな事わかんねぇだろ!って…すまない。」
「いや、お前の言う通りだ。騎士だからって安心できるもんでもないし…。」
と、そこにノックも無く扉を開けて入って来たのは、ヴィルヘルム・ライテンバッハ元帥…祖父だった。
「おい!ジジちゃんの行方がわからなくなった、ってのは本当か!?」
「爺様、俺も(ジジを)探しに行っていいか?」
「やっとその一言が出たか。遅すぎるわい!」
そのまま、執務室から駆け出そうとして、立ち止まると
「悪い。ジーク、後の事は頼む!」
言うが早いか、執務室から駆けて行った彼の姿は、あっという間に見えなくなる。
直ぐに見つかるものと思われていたが、彼女の居場所が特定されるまで、更に3日を要したのだった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる