願わくは…

雫喰 B

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── 第一章 ──

15. 初夜 ① (R18)

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    いつまでも終わりそうに無い披露宴を、途中退席した二人は自分たちの部屋まで一緒に歩いていた。

    ルイーゼの部屋の扉の前、二人は見詰め合う。

    アルフォンスは、いつも以上に美しいルイーゼに鼓動が速くなり、今すぐ抱き締め、その白い首に顔を埋め、胸の中を彼女の匂いで満たしたくなる。

    ルイーゼは、うっとりとアルフォンスの顔を下から見上げた。
    男にしておくには惜しいほど整った顔。太過ぎず、細過ぎない弓形の凛々しい眉、赤みがかった紅茶色の瞳、スッと通った鼻筋に丁度いい高さの鼻。そして、唇は…と、唇から眼が離せない。形のいい艶めいた唇。その唇で口付けられ、名前を紡がれたら…。

    そう考えたのが彼に見透かされたようで、顔に熱が集まるのが自分でもわかった。

    そして、彼の顔が近づいてくる。ドキドキと煩い鼓動が、彼に聞こえてしまうかと思うと、更に速くなったような気がする。

    アルフォンスは、ルイーゼの額に口付けを落とすと、

「また後で…。」

    そう言って自分の部屋の方へ歩いていき、ドアノブに手を掛けると、ルイーゼの方を見る。

    ドアノブに手を掛けたまま、彼の背中を見送っていた彼女は彼と眼が合った。

    ドキり、とする。

「また後で…。」

    唇の動きだけで伝える。
    彼の唇も同じ形に動いた。いや、動いたと思いたい。

    そして二人は、ほぼ同時に部屋に入った。

~~~~~

    ルイーゼが部屋に入ると、彼女付きの侍女達が手ぐすね引いて待っていたみたいで、あれよあれよと言う間に、ドレスを脱がされ、身体中を磨かれ、香油を塗られた。

    バスローブを羽織らされ、部屋に戻ってくると、下着が用意されていたのだが…。

「え?…ちょ、 ちょっと待って…。えぇぇ?! こ、これを着るの?…本当に?」

    幼い頃から、ルイーゼに付いている侍女のクラリスに半信半疑で聞いた。
    聞かれた彼女は、

「何を言ってるんですか当然です。これでも地味な方なんですよ。」

    と、自信たっぷりに言われる。

    疑いの眼差しで見るも、それ以外の下着を出してくれそうにない。
    諦めて用意された下着を着けるしかなさそうである。

『着けるのに、勇気がいるって、どうなのよ?』

    そして、勇気を出して着けたものの、透けるほど薄すぎるそれは、何とも心許ない感じがして、酷く落ち着かない。

    ベッドの上にある、ガウンが眼に入った。いい考えだとばかりに手を伸ばすと、クラリスも手を伸ばしていた為、ガウンを掴んだまま眼が合った。

    すぅっと、眼を細めるクラリス。お願い、取らないで!と、眼で訴えるルイーゼ。
    仕方ないなぁ…。と、クラリスが手を離してくれた。

「ありがとう。」

    お礼を言ったが、自分でも驚くほど声が小さくなった。

「お嬢様、夫である旦那様に全てお任せすれば大丈夫ですから…。それでは、私はこれで失礼しますね。」

    そう言って彼女は下がっていった。

    ベッドに腰掛けたまま、所在無げに部屋の中を見渡す。サイドテーブルの上には軽食やフルーツ、ワイン、ワイングラス、水差し、グラスが置かれている。

    この部屋に入るのは、当然、初めてで、落ち着かない。
    水差しに入っている水を、グラスに入れて一口飲むと、水ではなく果実水だった。

    グラスをサイドテーブルの上に置くと、部屋の奥の扉を小さくノックする音が聞こえた。

「ど、どうぞ…。」

    上擦った声が出てしまい、恥ずかしくなる。

    静かに扉が開くと、恐る恐るアルフォンスが部屋に入って来た。
    心なし顔が赤いような気がする。

    眼が合うと、お互い顔が赤いのを見て照れてしまう。

    隣にアルフォンスが座ったのが分かると、顔が熱くなった。心臓の鼓動が、ばくばくと煩い。何を言ったらいいのか分からず、口を開くも言葉が出て来ない。
    顔を上げて夫の顔を見た。

    彼も湯浴みをしたのか、濡れた前髪を後ろに流すように上げている。
    いつもは前髪で隠れている額が見える所為か、凛々しく、精悍な顔つきに感じられる。おまけに、妙に色気まであるような…。

    格好良すぎて、鼻血が出そう…。などと、変な事を考えて、テンパってしまった。
    余計に、何を言って、何をしたらいいのか分からなくなり、俯き、一人わちゃわちゃしている。

    と、肩を抱かれた。
    緊張に身体を固くする。
    頤に手を掛け、顔を上向かせられた。

    目の前にアルフォンスの顔が…。

    優しく微笑む彼の顔が近づいてくる。
    唇と唇が触れ合う。チュッとリップ音がする口付けから、啄むような口付けに変わる。
    何だかふわふわとした感じがして何も考えられない。
    額から頬、鼻の頭、唇に口付けを落としていく。
    片腕で彼女の背中を支え、空いた方の手で髪を
梳いている。
    そして、抱き締め、首筋に顔を埋め、そこにも口付けていき、後頭部を支えるようにすると、何度も角度を変え、口付ける。 

    段々と、その口付けが深く長くなっていくに従って、ふわふわした感じも強くなってきて、身体を支えていられなくなると、そぉっとベッドに身体を横たえられた。

    唇から名残惜しそうに離れ、ルイーゼの顔を見ている。

「綺麗だ。ルーイ…ルイーゼ、愛してる。」
「私も。愛してるわ、アル。愛してる…アルフォンス。」
「あぁ、ごめんねルーイ。もう俺から逃がしてあげられないよ。ずっと…。」
「いいの。謝らないで…私が望んだ事なのだから…。」
「ずっと…この先も、ずっと俺の腕の中だけど…。」
「嬉しい…。」

    見詰め合い、お互いの気持ちをもう一度、確かめ合った。

    アルフォンスがルイーゼに口付ける。深く…長く…。
    そして、彼女が羽織っていたガウンを脱がせ、
ベビードールのリボンを解く。
    そこから手を入れ、肩に沿わせるようにして手を動かし、片側を脱がせ、反対側も同じように脱がせた。



~~~~~

*次話も引き続き、R18入ります。
苦手な方は、全力で回避して下さい。読まれる方は、自己責任でお願いします。
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