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19.ライアン・ガーネット③
しおりを挟む*今話もセンシティブな内容となっております。
(ダーク&シリアスな鬱展開の話です。)
*精神面に不安を抱えた方、不安定な方は読まない方がいいかもしれません。
あと、苦手な方も。
上記に思い当たる方は全力で回避して下さい。
読まれる方は自己責任でお願いします。
~~~~~~~~~~~~~~
*あと、ネタバレとなってしまうのですが、注意喚起の意味で書いておきます。
現実世界において、精神的に辛い思いをし、苦しみから自傷行為や自殺、自殺未遂をしてしまう方や繰り返してしまう方がいらっしゃいます。
その方々は本当に苦しんでいます。
この話に登場するラフレシアは、一回目と二回目は本当に自死を図っていますが、それ以降は、ライアンを逃がさない為、ライアンを手に入れる(結婚する)為の手段として、自死を装っている(フリ)だけです。
( あくまでも作者の空想物語内での話です。 )
なので、現実世界で辛い思いをして苦しんでいる方々と同列で考えるのはお止め下さい。
くれぐれも誤解等の無いようにお願いします。
読まれる方は、それらを踏まえた上でお読み下さい。
~~~~~~~~~~~~~~
ラフレシアが泣き崩れた時に、父親である男爵と交代すればよかったと後悔するも後の祭りであった。
あれ以降、彼女に依存されてしまい、どうしたらいいのか、どうすればこの泥沼から抜け出せるのか分からない。
彼女が元気になるまでと考えていた俺の考えは甘かった。
東部辺境伯リカルド・フローライト卿から内々に“寄子である男爵家令嬢ラフレシアを元気づけてあげて欲しい。”といった内容の私信が送られて来た。
ラフレシアの家族からも
「気晴らしに何処かへ連れて行ってあげて欲しい。」
などと言われた事もあり、それで元気になれるならと仕方なく彼女を連れて出掛けたりしていた。
父の仕事を手伝う傍ら只でさえ時間が無い中、彼女や男爵から度々呼び出され、
「元気づけて欲しい。」
とお願いされて要求に応じていた。
その所為でニアへの手紙の返事も徐々に減り、彼女とのお茶会の日時が決まっても、偶然なのか男爵家からラフレシアが死のうとして泣き喚いているから止めて慰めてあげて欲しい。等トラブル発生の連絡(呼び出し)が来る。
そうこうしているうちに、“ 婚約者以外の女性と親密になっている ”という不愉快な噂が立ち、彼女の方も元気を取り戻したと言ってもいいような状態になった事で、冷たい人間だと思われようと、ニアに誤解されたくないと考え、付き添いを断る事にした。
だが、断った直後に彼女が自死を図ったと連絡が来て、急いで駆けつけたが男爵夫妻から俺の所為だと責められた。
そんな事が繰り返され、毎回責められる俺は精神的に参っていた。
他に相談しようにも、「男爵家の醜聞が広まるのは娘達の将来に影響すると困る。」との理由で、「どうかご内密に。」と言われてしまえば誰にも相談できない。
そんな中、ニアからの手紙もとうとう届かなくなってしまった。
確かに俺から出す手紙は減っていたが、それでも月に一回だけでも何とか出したいと思い書いていた。
会いに行く事もできず、誕生日プレゼントや月に一回手紙を送るだけの婚約者は彼女に見捨てられてしまったのだろうかと不安になる。
それでも俺は、ニアがまだ俺の事を婚約者だと思ってくれていると信じたかった。
だが、誰が真実を知り得ただろうか。
彼女への誕生日プレゼントも月に一度の手紙も届いていなかったなどという事を…。
そして、とうとう彼女から俺に最後通告の手紙が届く。
(以下、カレドニアからライアンへの手紙)
**************************************
ライアン・ガーネット様
ライアン様におかれましては益々ご健勝の事と喜ばしく思っております。
領主としての執務等、お忙しい事と思いますが、私達二人の婚約について話し合いたいと思っています。
私としては婚約の継続は難しいと考え、解消の方向でお願いしたく思い、つきましては、ご都合の良い日時をお知らせいただければ幸いです。
カレドニア・カーネリアン
*************************************
酷く他人行儀過ぎる文言と婚約解消の文字にショックを受け、震える俺の手から便箋が落ちる。
足に力が入らず膝を突いた。
未だにラフレシアの付き添いを断り切れず、噂話一つ払拭する事が出来ない俺の所為だという事は分かっている。
腑甲斐なくて情け無くなる。
俺はどうすれば…。
俺とラフレシアの噂の事は知っている。最初にそれを知った時には、他人からはそんな風に見えるのだと苛立った事もある。
だが、面と向かって言われた訳ではない。
聞こえよがしに言っている奴等に、聞かれもしない事に一々言い訳をしたり、理由を説明してやる義理や義務など無い。
と、放っておいた。
すると、今度はそれに尾鰭が付くだけでなく、噂の内容は盛に盛られていく。
噂話などそんな物だと分かっていたつもりだった。
だが、その噂話が広まるのが異様に速く、まるでラフレシアの味方をしているようにも、後押しをしているようにも思えたりもした。
ふと、心に湧いた疑惑…。
俺は度々繰り返される彼女の自傷行為は嘘なのではないかと思い、大急ぎで信用できる副官達に調べさせる事にした。
というのも、恋人同士のように振る舞わなかった時など人目のある所や人目の多い所(外)でだけ泣き喚くのだ。
彼女が外出するようになり恋人同士のように振る舞う事を要求しだしたのと、噂が流れ出したのがほぼ同じ時期だった。
おまけに、自死しようとしたと連絡が来て駆け付けてみれば、医者が処置した後と言うのだが、医者を呼んだ形跡が無い。
そして、これまでに副官達が調べた事で俺が思っていた通りだという結果が出ている。
後は、辺境伯家に仕えている者の中で誰が男爵家やラフレシアと通じていて情報を流しているのか突き止められれば…。
だが、内通者は中々尻尾を掴ませない。
調査している事を気取られる訳にもいかず、俺はそれまでと同じ態度を取るしかなかった。
合同訓練が始まるまでに彼奴らの尻尾を掴みたかったが思うに任せない。
焦りばかりが募る中、合同訓練が始まってしまった。
当初、ラフレシアを訓練に参加させないよう東部辺境伯家から要請があったと聞き、やっとニアと話ができると喜んでいた俺の元にラフレシアから手紙が来た。
“ 領主から今回の訓練への参加を認めず ”と、通達があったから合同訓練には参加できない。
そう書かれた手紙を手に、思わずガッツポーズをした。
なのに後日、ニアがいる先発隊の到着日に合わせたタイミングでラフレシアがサプライズとばかりに南部辺境伯領に入ったと連絡が来た。
「何の冗談だ!」
あろう事か、領都との中間にある町まで迎えに来いと言うのだ。
おまけに、ご丁寧に“ 来てくれないと悲しくて死んじゃうかも ”などという巫山戯た文言まであった。
ダァンッ!!
便箋をグシャッと握り潰した手を机に叩き付けた。
俺はニアを出迎え、抱き締める事も彼女とゆっくり話をする事もできないのか!
握り締めた拳に爪が食い込む。
だが、ここで短気を起こせば折角掴みかけた敵の尻尾を逃す事になる。
俺とラフレシアの並ぶ姿を目の当たりにして傷付くニアの顔が、刃となって俺の心に刺さる。
「 …くっ… 。」
何とか心を鎮め、呼吸を整えるとラフレシアを迎えに行った。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
お気に入り、しおり、エール等本当にありがとうございます。
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