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3.噂
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ここ最近になってリアルな噂が流れ出したという事は、姉が卒業してライアン様が跡継ぎの勉強を終えた後の事なのだろうか?
辺境伯家に生まれた者は成人すれば国境の守り等に忙しくなるので、見聞を広める目的もあって学園に入園するのが殆どだ。
ライアン様とは、私が学園を卒業と同時に結婚する事が決まっていた。
当時、学園を卒業したライアン様は辺境伯の仕事を引き継ぎ中であった。
ライアン様も在学中は、長期休暇時に辺境伯領に戻って辺境伯家の仕事を手伝っていた。
勿論、私も長期休暇時には辺境伯領に戻り国境の守り等、辺境伯家の仕事を手伝う事になっている。
長期休暇時に会う以外は王都と辺境伯領に離れ離れになってしまうが、ライアン様もそうやって頑張っていたのだから私も頑張るつもりだ。
そして、卒業したらライアン様と結婚して、死が二人を分かつまで支え合って生きていくのだと。
そう思って頑張っていた。
その噂を聞くまでは…。
いや、噂を聞いてもそれを目にするまでは…。
ライアン様を信じていた。いや、それ以上に信じたかったのだと思う。
噂と言っても、それまでに耳にした事のある噂は、
“辺境伯家の長男であるにも拘わらず遅い婚約だったのは、中々本人が首を縦に振らなかったらしい”
“気難しいから。”
“心に決めた人がいる。”
“私を婚約相手に選んだのは、度重なる見合いにウンザリして半ば投げ遣りに決めた。”
などという真偽のほどは定かではない噂ばかりだった。
けれど、ここ最近になり噂の内容ががらりと変わった。
何処其処でライアン様が女性と一緒にいたのを見た、何処ぞのご令嬢と二人で観劇していた等に始まり、より具体的な内容に、その上特定のご令嬢の名前まで囁かれる程のリアルな物になったのだ。
それまでは然程気にしていなかった私も、彼方此方でライアン様と共に目撃された相手の名前が噂されるようになると、その女性の事が気になりだした。
『どんな人なの?』
あと二年で卒業と同時に結婚という時期になって囁かれるリアルな噂…その名前。
私よりも二歳上の姉が学園に在学中はそんな噂は無かったらしい。
確かにライアン様が在学中に仲が良さそうな女生徒は何人かいたらしいが、二人きりでいるところなど見た事は無いと言う。そんな噂を聞いた事も。
そして、卒業後は辺境伯家に戻られて、跡継ぎとしての勉強をお父上の仕事を手伝いながらしていた筈である。
おまけに当時は月に一度は婚約者である私と交流のお茶会をしていた。
そんな時間等無かったように思う。
『……???
……どゆ事…?』
なんだかキツネに摘ままれたような感じだった。
けれど、ここ最近になってそんな噂が流れ出した事は事実であり、卒業したライアン様が跡継ぎの勉強を終えた後、この一年ほどの間の事なのだろうか?
その考えは当たっていた。
…が、嬉しくとも何ともない。
そして、お相手は昨年の春に卒業した王国東部フローライト辺境伯家の家門であるカーバイト男爵家の令嬢(長女)、ラフレシア・カーバイトという女性であった。
二歳上の姉よりも一つ上の学年ではあるが顔の広い姉の事、もしかしたら知っているかもしれないと思い駄目もとで聞いてみた。
私からその名前を聞いた姉は、腕組みをして眉間に皺を寄せ頻りに首を傾げている。
『ひょっとすると知らなかったりして…。』
だが、漸く姉の口から出た言葉は意外なものだった。
「おかしいわね。確かそのご令嬢には相思相愛と言われている婚約者がいらした筈だけど…。」
「えっ?じ、じゃあ不貞…っていう…事?」
「…わからないわ…。大体、学年も違うし彼方の爵位も低いから交流自体無かったもの。」
そうなのだ。
辺境伯家と繋がりがあっても他の家門でしかも男爵家。
爵位が違う段階で普通は接点が無い。
おまけに学園では高爵位の校舎と低爵位の校舎は違うのだ。
けれど、何故その名前を知っていたかと言うと、姉の顔が広いのは勿論のこと、件の令嬢は異性との距離が近い方だったらしい。
それこそ相手に婚約者が居ようが居まいが…。
その事に嫌な思いをしたご令嬢達がかなり居て、彼女の婚約者が気付く度に引っ剝がしてまわっていたという話だった。
「だから“相思相愛”なのだと囁かれていたのに。」
と姉は不思議がっていた。
「ただ単に距離が近いだけだろうから心配しなくていいんじゃない。」
と言われ、暫く様子を見る事にしたのだが…。
辺境伯家に生まれた者は成人すれば国境の守り等に忙しくなるので、見聞を広める目的もあって学園に入園するのが殆どだ。
ライアン様とは、私が学園を卒業と同時に結婚する事が決まっていた。
当時、学園を卒業したライアン様は辺境伯の仕事を引き継ぎ中であった。
ライアン様も在学中は、長期休暇時に辺境伯領に戻って辺境伯家の仕事を手伝っていた。
勿論、私も長期休暇時には辺境伯領に戻り国境の守り等、辺境伯家の仕事を手伝う事になっている。
長期休暇時に会う以外は王都と辺境伯領に離れ離れになってしまうが、ライアン様もそうやって頑張っていたのだから私も頑張るつもりだ。
そして、卒業したらライアン様と結婚して、死が二人を分かつまで支え合って生きていくのだと。
そう思って頑張っていた。
その噂を聞くまでは…。
いや、噂を聞いてもそれを目にするまでは…。
ライアン様を信じていた。いや、それ以上に信じたかったのだと思う。
噂と言っても、それまでに耳にした事のある噂は、
“辺境伯家の長男であるにも拘わらず遅い婚約だったのは、中々本人が首を縦に振らなかったらしい”
“気難しいから。”
“心に決めた人がいる。”
“私を婚約相手に選んだのは、度重なる見合いにウンザリして半ば投げ遣りに決めた。”
などという真偽のほどは定かではない噂ばかりだった。
けれど、ここ最近になり噂の内容ががらりと変わった。
何処其処でライアン様が女性と一緒にいたのを見た、何処ぞのご令嬢と二人で観劇していた等に始まり、より具体的な内容に、その上特定のご令嬢の名前まで囁かれる程のリアルな物になったのだ。
それまでは然程気にしていなかった私も、彼方此方でライアン様と共に目撃された相手の名前が噂されるようになると、その女性の事が気になりだした。
『どんな人なの?』
あと二年で卒業と同時に結婚という時期になって囁かれるリアルな噂…その名前。
私よりも二歳上の姉が学園に在学中はそんな噂は無かったらしい。
確かにライアン様が在学中に仲が良さそうな女生徒は何人かいたらしいが、二人きりでいるところなど見た事は無いと言う。そんな噂を聞いた事も。
そして、卒業後は辺境伯家に戻られて、跡継ぎとしての勉強をお父上の仕事を手伝いながらしていた筈である。
おまけに当時は月に一度は婚約者である私と交流のお茶会をしていた。
そんな時間等無かったように思う。
『……???
……どゆ事…?』
なんだかキツネに摘ままれたような感じだった。
けれど、ここ最近になってそんな噂が流れ出した事は事実であり、卒業したライアン様が跡継ぎの勉強を終えた後、この一年ほどの間の事なのだろうか?
その考えは当たっていた。
…が、嬉しくとも何ともない。
そして、お相手は昨年の春に卒業した王国東部フローライト辺境伯家の家門であるカーバイト男爵家の令嬢(長女)、ラフレシア・カーバイトという女性であった。
二歳上の姉よりも一つ上の学年ではあるが顔の広い姉の事、もしかしたら知っているかもしれないと思い駄目もとで聞いてみた。
私からその名前を聞いた姉は、腕組みをして眉間に皺を寄せ頻りに首を傾げている。
『ひょっとすると知らなかったりして…。』
だが、漸く姉の口から出た言葉は意外なものだった。
「おかしいわね。確かそのご令嬢には相思相愛と言われている婚約者がいらした筈だけど…。」
「えっ?じ、じゃあ不貞…っていう…事?」
「…わからないわ…。大体、学年も違うし彼方の爵位も低いから交流自体無かったもの。」
そうなのだ。
辺境伯家と繋がりがあっても他の家門でしかも男爵家。
爵位が違う段階で普通は接点が無い。
おまけに学園では高爵位の校舎と低爵位の校舎は違うのだ。
けれど、何故その名前を知っていたかと言うと、姉の顔が広いのは勿論のこと、件の令嬢は異性との距離が近い方だったらしい。
それこそ相手に婚約者が居ようが居まいが…。
その事に嫌な思いをしたご令嬢達がかなり居て、彼女の婚約者が気付く度に引っ剝がしてまわっていたという話だった。
「だから“相思相愛”なのだと囁かれていたのに。」
と姉は不思議がっていた。
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