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4.アマリリス・カーバイト
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ライアン様の噂のお相手は昨年の春に卒業した王国東部辺境伯領フローライト辺境伯家の家門であるカーバイト男爵家の令嬢(次女)ラフレシア・カーバイトという方だとわかったのはいいが、後日その事に関してちょっとした騒動になった。
というのも…来られたのだ彼女の妹であるアマリリス・カーバイトが…私のクラスの教室に。ご友人方を引き連れて。
ライアン様とラフレシア嬢の噂を聞いた私は、お相手が何処の誰か気になってはいたが、それがわかったとしても東部・南部辺境伯領と王都と距離が離れ過ぎているから如何する事もできない。
おまけに私は学園に通っている学生である。現状、姉に話を聞く以上の事はできなかったし、策を講じるつもりも無かった。
それは部屋で一人、その事を考えると思考がネガティブな方にいってしまいそうだったので、ぶっちゃけた話逃げた(考える事を放棄した)のだ。
そうしたら、相手側が痺れを切らしたのか、私の目の前に現れたという状況に。
その日の休憩時間に友人達と会話していたニアだったが、クラスメイトから「私を呼ぶように言われた。」と声をかけられ、彼女が視線を向けた先に何人かのご令嬢達がいた。
面識の無い令嬢達だったが、制服のリボンの色て下級生らしいとわかった。
仕方がないので其方へ向かう。
彼女達は広げた顔を寄せ合い何かを囁き合いながら、ニアを見てクスクス笑った。
『あ…なんか嫌な感じ…。』
一歩前に出た少女がニアに向かって口を開いた。
「あなたがカレドニア・カーネリアン?」
『?!』
なんと、いきなり呼び捨てである。
しかもフルネーム。
「失礼ですがどなたでしたかしら?面識は無いですわよね。先ずは名乗られるのが筋では?」
少し刺のある言い方をしたが相手は気にした様子も無い。
目の前に立つご令嬢は、お日様の光を反射して輝き波打つ金髪、何処までも続く晴天の空のような青い瞳。
透き通るように白くきめの細かい肌。
スレンダーな割に巨乳、大きく括れた腰という不埒なダイナマイトボディー。
『そのような世の殿方が喜びそうなダイナマイトボディーは、ハッキリ言って反則だよね!』
思わず自分の体を見てしまう。
特に胸を…。
それに目ざとく気付いた彼女が小馬鹿にしたようにクスッと笑う。
「華麗なるカーネリアン一族だと聞いていたけれど、やっぱり以前から言われていた噂は本当だったみたいね。あの方があなたみたいな何の取り柄もないお子様と婚約するなんておかしいと思ったのよ。」
腕組みをして更に胸を強調する。(ように私には見えた。)
「…へ?…お子様?…え?噂って…?」
名乗りもせず、勝ち誇ったように言い放つ相手とその規格外のバストに戸惑った。
そんな私を見下し(実際は下から斜に構えて睨んできて)ふふふ…と嗤う。
「何度も繰り返されるお見合いと大量の釣書にウンザリして投げ遣りに決めたって噂の事よ。」
「…あぁ、その噂は知ってます。」
実際、その噂は知っていたのでそのまま答えた。
それを聞く度に、私自身ライアン様の婚約者になれた事が不思議で仕方ないのに。
そんな事を考えていたら、何か気に障ったらしい。
『あ…、いかんいかん。眉間に皺が入っていたようだ。
まぁ、いいか…。
それにしても、かなり失礼な奴だけど、ほんと誰だろう?』
何時の間にか傍に来ていたらしい友人のラズベリー・ラピス侯爵令嬢がつんつんと袖を少し引く。
其方の方を見ると、『大丈夫?』と目で問いかけてきたから小さく頷いた。
「何とか言ったら如何?
それとも、あの方に不釣り合いだって自覚があるから何も言えないのかしら?」
憎々しげに睨めつけて言う。
『いや、自覚はあるけど何故に上から目線?』
と、その時
「一体何様のつもりかしら。もう一度礼儀を一から勉強して出直してきなさいな。」
この声は…。
背後を振り返らなくても誰だかわかるところが恐ろしい。
後ろからかなりのプレッシャーをビリビリと感じる。
『エマ様、かなりお怒りのようで…。』
心臓が凍りつきそうな冷たい声音で言いながら、後ろで怒りの炎を纏った威圧を放ちまくっている。
私の友人である彼女は、歯に衣着せぬ物言いで有名なエマ・ベリル様。
筆頭公爵家のご令嬢である。
「っな!何よ、私よりも容姿も中身も優れているラフレシアお姉様の方が、あなたなんかより遙かにライアン様に相応しいわ!」
『あ…スルーした…。』
有名なエマ様に言い返せないからって、スルーした上で私を詰るはの止めていただきたい。
同じ室内なのにこの辺りだけ急激に温度が下がったような気がする。
ライアン様とラフレシア嬢の噂の事は知っていたが、まさか、話によく聞く婚約者に妾が別れろと言いに来るというアレなのか?
(この場合、身内だけど。ら)
しかし、本当にそういう(相応しい)相手がいるなら、ライアン様が婚約の解消なり破棄なり言ってきそうなものなのだが……。
「なっ!?…。」
何か言おうとしたラズベリー様さえも無視して、
「まぁいいわ。ちょっと顔を見に来ただけだから。心配するほどの事も無い、取るに足らなさ過ぎて話にならなかったけど。今の内に次を探しておいた方がいいんじゃないかしら。とは言っても、あなた相手じゃ誰もいないかもだけど。では、ごめんあそばせ。」
ラフレシア嬢の妹(らしき人)は言いたいことだけ言うとご友人方と一緒に帰って行った。
当然周囲にいた生徒達は、私達の方をチラチラ見ながらひそひそと囁き合っている。
私の隣にいた同じ家門のラピス伯爵家令嬢ラズベリー様が憤慨して言う。
「何ですのあれ?案外、あの噂話も彼女が流したのでは?」
「やっぱりそう思うよね。」
噂を聞いている筈の私のところに敵情視察というか、品定めをしにきたといったところか。
そしてコレならば勝てると自信を持ったのだろう。
『確かに容姿だけじゃなく、あの胸にも勝てませんわ。』
「結局、名乗りもせず私の事もスルーでしたわね。」
エマ様が微笑んでいる。
『『こ、怖い!怖すぎる!!』』
私とラズベリー様は寄り添って震えた。
(ちなみに、エマ様は一部では“エンマ様”と呼ばれ恐れられている。)
その日以降、好奇の目で見られる事となりった。
『全く以て、ありがた迷惑な話である。』
というのも…来られたのだ彼女の妹であるアマリリス・カーバイトが…私のクラスの教室に。ご友人方を引き連れて。
ライアン様とラフレシア嬢の噂を聞いた私は、お相手が何処の誰か気になってはいたが、それがわかったとしても東部・南部辺境伯領と王都と距離が離れ過ぎているから如何する事もできない。
おまけに私は学園に通っている学生である。現状、姉に話を聞く以上の事はできなかったし、策を講じるつもりも無かった。
それは部屋で一人、その事を考えると思考がネガティブな方にいってしまいそうだったので、ぶっちゃけた話逃げた(考える事を放棄した)のだ。
そうしたら、相手側が痺れを切らしたのか、私の目の前に現れたという状況に。
その日の休憩時間に友人達と会話していたニアだったが、クラスメイトから「私を呼ぶように言われた。」と声をかけられ、彼女が視線を向けた先に何人かのご令嬢達がいた。
面識の無い令嬢達だったが、制服のリボンの色て下級生らしいとわかった。
仕方がないので其方へ向かう。
彼女達は広げた顔を寄せ合い何かを囁き合いながら、ニアを見てクスクス笑った。
『あ…なんか嫌な感じ…。』
一歩前に出た少女がニアに向かって口を開いた。
「あなたがカレドニア・カーネリアン?」
『?!』
なんと、いきなり呼び捨てである。
しかもフルネーム。
「失礼ですがどなたでしたかしら?面識は無いですわよね。先ずは名乗られるのが筋では?」
少し刺のある言い方をしたが相手は気にした様子も無い。
目の前に立つご令嬢は、お日様の光を反射して輝き波打つ金髪、何処までも続く晴天の空のような青い瞳。
透き通るように白くきめの細かい肌。
スレンダーな割に巨乳、大きく括れた腰という不埒なダイナマイトボディー。
『そのような世の殿方が喜びそうなダイナマイトボディーは、ハッキリ言って反則だよね!』
思わず自分の体を見てしまう。
特に胸を…。
それに目ざとく気付いた彼女が小馬鹿にしたようにクスッと笑う。
「華麗なるカーネリアン一族だと聞いていたけれど、やっぱり以前から言われていた噂は本当だったみたいね。あの方があなたみたいな何の取り柄もないお子様と婚約するなんておかしいと思ったのよ。」
腕組みをして更に胸を強調する。(ように私には見えた。)
「…へ?…お子様?…え?噂って…?」
名乗りもせず、勝ち誇ったように言い放つ相手とその規格外のバストに戸惑った。
そんな私を見下し(実際は下から斜に構えて睨んできて)ふふふ…と嗤う。
「何度も繰り返されるお見合いと大量の釣書にウンザリして投げ遣りに決めたって噂の事よ。」
「…あぁ、その噂は知ってます。」
実際、その噂は知っていたのでそのまま答えた。
それを聞く度に、私自身ライアン様の婚約者になれた事が不思議で仕方ないのに。
そんな事を考えていたら、何か気に障ったらしい。
『あ…、いかんいかん。眉間に皺が入っていたようだ。
まぁ、いいか…。
それにしても、かなり失礼な奴だけど、ほんと誰だろう?』
何時の間にか傍に来ていたらしい友人のラズベリー・ラピス侯爵令嬢がつんつんと袖を少し引く。
其方の方を見ると、『大丈夫?』と目で問いかけてきたから小さく頷いた。
「何とか言ったら如何?
それとも、あの方に不釣り合いだって自覚があるから何も言えないのかしら?」
憎々しげに睨めつけて言う。
『いや、自覚はあるけど何故に上から目線?』
と、その時
「一体何様のつもりかしら。もう一度礼儀を一から勉強して出直してきなさいな。」
この声は…。
背後を振り返らなくても誰だかわかるところが恐ろしい。
後ろからかなりのプレッシャーをビリビリと感じる。
『エマ様、かなりお怒りのようで…。』
心臓が凍りつきそうな冷たい声音で言いながら、後ろで怒りの炎を纏った威圧を放ちまくっている。
私の友人である彼女は、歯に衣着せぬ物言いで有名なエマ・ベリル様。
筆頭公爵家のご令嬢である。
「っな!何よ、私よりも容姿も中身も優れているラフレシアお姉様の方が、あなたなんかより遙かにライアン様に相応しいわ!」
『あ…スルーした…。』
有名なエマ様に言い返せないからって、スルーした上で私を詰るはの止めていただきたい。
同じ室内なのにこの辺りだけ急激に温度が下がったような気がする。
ライアン様とラフレシア嬢の噂の事は知っていたが、まさか、話によく聞く婚約者に妾が別れろと言いに来るというアレなのか?
(この場合、身内だけど。ら)
しかし、本当にそういう(相応しい)相手がいるなら、ライアン様が婚約の解消なり破棄なり言ってきそうなものなのだが……。
「なっ!?…。」
何か言おうとしたラズベリー様さえも無視して、
「まぁいいわ。ちょっと顔を見に来ただけだから。心配するほどの事も無い、取るに足らなさ過ぎて話にならなかったけど。今の内に次を探しておいた方がいいんじゃないかしら。とは言っても、あなた相手じゃ誰もいないかもだけど。では、ごめんあそばせ。」
ラフレシア嬢の妹(らしき人)は言いたいことだけ言うとご友人方と一緒に帰って行った。
当然周囲にいた生徒達は、私達の方をチラチラ見ながらひそひそと囁き合っている。
私の隣にいた同じ家門のラピス伯爵家令嬢ラズベリー様が憤慨して言う。
「何ですのあれ?案外、あの噂話も彼女が流したのでは?」
「やっぱりそう思うよね。」
噂を聞いている筈の私のところに敵情視察というか、品定めをしにきたといったところか。
そしてコレならば勝てると自信を持ったのだろう。
『確かに容姿だけじゃなく、あの胸にも勝てませんわ。』
「結局、名乗りもせず私の事もスルーでしたわね。」
エマ様が微笑んでいる。
『『こ、怖い!怖すぎる!!』』
私とラズベリー様は寄り添って震えた。
(ちなみに、エマ様は一部では“エンマ様”と呼ばれ恐れられている。)
その日以降、好奇の目で見られる事となりった。
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