【短編集・遅すぎた◯◯】

雫喰 B

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前編・遅すぎたRegret

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作中に残酷な描写、表現等があります。また、作中にて行われる行為について容認する物でも許可する物でも教唆する物でもありません。
 センシティブな内容の為、苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いします。


 ~~~~~~~~~


 今日はめでたい筈の結婚式。

 けれど新郎である彼の顔は不機嫌そのもので、眉間には深い皺がくっきりと刻まれている。

 まあ、あからさまに不機嫌そうなお顔。貴族として生を受けたのならば、そこは上手く取り繕って欲しかったですわ。

 私の事を一切見ず、誓いの口吻も触れそうで触れない距離。

 思わず笑ってしまいましたわ。

 幸いにも参列した方々は幸せな気持ちで笑ったと勘違いして下さいました。

 嬉しい誤算とでも言うのでしょうか。
 
 披露宴の時も私を見る事も無く、二人の視線が合う事も無かったですわね。

 いいえ、責めている訳ではないのです。

 ただ…ここまで貴方に嫌われているのだと思っただけの事。



 そう……貴方から嫌われている事は頭ではわかっていたつもりでした。
 
 でも諦めきれなかった。
 いつか……それでもいつか振り向いてくれる時が来るのではないかと有りもしない夢を……。
 馬鹿ですよね。
 自分勝手に夢を見て……だから思い知らされたのでしょう。


「これまで君には口に出さずとも態度で伝わっていると思っていたんだ。俺が君の事を心底嫌っているのだと…。だから…もう俺には期待しないでくれないか。男女の間にある情を求めるのも押し付けるのも。大体聞かない君を愛する事など未来永劫無理だ。俺の愛は彼女だけの物。初夜ではあるが君を抱くつもりなど無い。勿論それはこの先もずっと変わる事など無い!」

 ええ、わかっておりましたわ。
 貴方が愛しているのはあの方だけ……。
 この先…一生貴方に愛される事も無く、貴方が私と離縁したくて仕方ない事も…。

 貴方の気を惹きたくて着た訳ではありませんが、こんなヒラヒラしたスケスケの初夜用の寝衣を着た私は、さぞかし滑稽で見苦しく貴方の目に映った事でしょうね。

 全て…わかっているのです。
 いいえ、今ハッキリとわかりましたわ。喩えこの世が終わりを告げようと、表面上ですら貴方が私を愛する事など無いと……。

 何も言わない私に苛立った貴方は、言いたい事だけ言うとあの方の元に行ってしまった。

 なんと残酷な事でしょう。

 私達の結婚式とあの方の出産が同じ日になるなんて……。

 未明から産気づいて生まれ月よりも出産に、いても立ってもいられず苛立っていらっしゃいましたものね。
 
 いっそ行かないでと泣いて縋ればこの気持ちも少しはマシになったのでしょうか?

 …いいえ…余計惨めで醜悪になっただけでしょう。


 でも……、
 貴方は知っていたのでしょうか?
 あの方には貴方以外にもがいらっしゃった事を。

 せめて祈らずにはいられませんわ。
 生まれ落ちた御子様が貴方に似ていますようにと……。

 

 貴方は忘れてしまわれたでしょうが、まだ二人とも幼かった頃、子息・令嬢達の交流目的で開かれたお茶会。

 それに出席していた私が転んで泣いてしまった時、貴方は絵本に出て来る王子様のように手を貸し助け起こしてくれただけでなく、ハンカチで優しく涙を拭いて下さいました。

 私は今でも鮮明に覚えていますわ。

 あの時から私は貴方以外の誰にも嫁ぐ気など無くなったのです。
 嫁ぐなら是非貴方の元に……そう強く願いました。

 その想いを叶えようとしてくれた父のお陰で幼い頃に結ばれた婚約……けれど学園に通うようになった頃、貴方は愛するあの方と運命的な出会いをされたのでしたね。

 それ以降、誕生日も季節の挨拶も学園時代の思い出も……全てあの方だけを優先させた貴方。

 それでも私は貴方を愛しておりましたのよ。

 
 そして学園を卒業……。

 喩え、貴方に愛され無くとも貴族として生を受けたのならば必要最低限だけでも婚約者として、又、妻として遇していただけると信じて結婚に望みを賭けた私……。

 でも……全て無駄に終わりましたわね。



 貴方はご存知だったのでしょうか?

 もう私には帰る所など無いという事を……。

 父からは
「初夜に情けを掛けられなかった時は再び家の敷居を跨げると思うな!」

 と叱咤されていた事を……。

 そして、貴方の御父君である侯爵様から
「初夜の完遂を以て婚姻の成立とする。」

 と申し付けられていた事を……。


 実家の伯爵家から既に籍は抜かれ、嫁いだ先の侯爵家では婚姻が成立していない私は、今現在何処にも存在していないのだという事を……。

 勿論、書類上での話ですけれど。

 でも、その書類でしか私の存在を証明する事ができないのもまた事実……。
 何とも頼りない存在ですわね。

 まるで幽霊のよう…。
 
「ふふふふふ……。」

 嗤えてしまいますわ。
 
 ……。
 
 ……。

 ……。

 ……だから……もういいの……。

 愛していましたわ。
 あの方と御子様と三人でお幸せに。
 さよなら。




 △▽△▽△▽△▽△▽△




 俺には真に愛する女性がいる。

 なのに、

 望まぬ結婚式を挙げなければならなくなった俺の怒りがお前にわかるか?

 わかる訳など無い!

 温々ぬくぬくと親に甘やかされ、のほほんと生きてきたお前に俺の怒りや悲しみがわかってたまるか!!


 未明に産気づいたとしらせが届き、産み月よりも早過ぎる出産に不安で仕方ない。
 一刻も早く彼女の元に駆け付けようとした俺に父が言った。

「結婚式を挙げない。初夜もしない。そうしたければすればいい。あの女と子供がどうなってもいいと言うのなら。」

 彼女と子供を人質にするなど卑怯だ!

 そもそも婚約からして無理があるだろう。
 まだ何もわかっていない幼い頃に結ばれた婚約に何の意味がある?

 学園に通いだして暫く経った頃、廊下の曲がり角で彼女とぶつかった事が縁で知り合った。

 婚約者と同じ髪の色をしていたので、てっきり彼女だと思ったが、彼女とは違う瞳の色。吸い込まれそうな宝石みたいな美しい瞳が俺を映していた。

 近すぎる距離に、顔を真っ赤にして慌てている姿が可愛くて……幼い頃にお茶会で好きになった少女を彷彿とさせた。

 その時はお互い謝罪しあっただけで会話も無かったのだが、それ以降幼い頃に出会った少女を思い出しては溜め息を吐いていた。


 その後、友人の婚約お披露目パーティーに出席した時に廊下でぶつかった彼女と再会した。

 彼女から目が離せなくて、思い切って話し掛けてみたら、幼い頃にお茶会で転んだ彼女を俺が助け起こしたのだと言う。

 そしてその時から俺を好きになり、俺との未来を思い描くようになったと頬を染めて恥じらうように言う彼女に心を奪われた。

 当然だ。
 俺はその時助け起こした少女が気になって仕方なかったのは、恐らく一目惚れしていたからなのだろう。

 お茶会の時に少女を助け起こした後、宝石のような目からぽろぽろと零れ落ちる涙は真珠のようで、ありがとうと言って笑った笑顔は天使のように愛らしかった。

 一目惚れしてぽぅっと見蕩れていた俺は、少女の名前を聞くのを忘れていたが、髪と瞳の色を覚えていたからすぐに見つかると思っていた。

 だが、それっきりあの時の少女には出会えなかった。

 だから友人の婚約お披露目パーティーで再会した彼女の話を聞いてやっぱりあの少女だったのだと好きになった。

 そして彼女は俺が想像していた通りの女性で、くるくる変わる表情、無垢な微笑み、なのに時に艶っぽさがあり、会話も楽しくて口数が少ないと言われている俺も彼女の前でだけは饒舌になった。

 当時、彼女には婚約者がいなかった。が、彼女の婚約者の座を狙っている男子生徒は多かった。

 だから焦った俺は、何度も父に今の婚約者とは婚約解消したいと言っていたのにけんもほろろで聞く耳も持って貰えなかった。



 そして今、一刻も早く彼女の元に駆け付けたいのに、挙げたくも無い結婚式を挙げさせられ苛ついていた。

 誓いの口吻の時にベールを上げた俺は初めて彼女を見た。

 愛する彼女と出会って以降、忙しいという理由で交流もせず、誕生日や季節の挨拶等は婚約者よりも彼女を優先させたからなのだが……。

 顔を上向かせているものの、目を閉じているから瞳の色はわからないが、髪の色は皮肉にも彼女と同じ色だった。

 触れそうで触れない距離まで顔を近付けて誓いの口吻のだけした。

 直後に彼女が微笑んだ。

 何故笑える?

 端から見れば、俯き目を伏せたその女の笑みは恥じらっているように見え、参列者達を何とか誤魔化す事ができたようだが、俺の目には計算した上での笑みに見えて余計に苛立った。

 次期侯爵夫人の座に執着しているこの女の所為で俺の愛する人と子供が肩身の狭い思いをこの先もするのだと思うと怒りで血が沸騰しそうになる。

 そして初夜、俺の気を引く為にその女は破廉恥なヒラヒラでスケスケの寝衣を着ていてまるで娼婦のようだった。

 こんな擦れた女に付き合っていられるか!!
 純潔など疾うの昔に失っている阿婆擦れではないか。
 なのに俺がこの女を抱くと、愛すると思い込んでいる。

 そう思った俺は、勘違いしているこの女に思い知らせてやりたくなった。

「これまで君には口に出さずとも態度で伝わっていると思っていたんだ。俺が君の事を心底嫌っているのだと…。だから…もう俺には期待しないでくれないか。男女の間にある情を求めるのも押し付けるのも。大体聞かない君を愛する事など未来永劫無理だ。俺の愛は彼女だけの物。初夜ではあるが君を抱くつもりなど無い。勿論それはこの先もずっと変わる事など無い!」

 そう言っても傷付きもせず何も言い返さない。
 動かない女をそのまま放置して俺は彼女の元へと向かった。

 あの女だったら、初夜が行われなかったなどと言わずに、どうとでも取り繕うだろう。
 
 そう判断したからだった。



 俺が愛する彼女の元に駆け付けると、何故か友人の内の一人が彼女の傍で嬉しそうにしている。

 他の友人達は離れた所からその様子を見ているが、心なしか顔色が悪いように思えた。

 何なんだ?

 理由は生まれた子供を一目見てわかった。
 生まれ落ちた子供の髪も瞳の色も彼女の隣で喜んでいる友人と同じ色だったからだ。

 
「どういう事だ!?」

 真っ青な顔色をしている彼女に詰め寄る。

「それはこっちのセリフだ!それにお前までそんな事を言うのか。」

 彼女を庇うように前に出て来た友人との間で押し問答が始まる。

 すると彼女が泣きながら言った。

「ごめんなさい!全部私が悪いの。なんて無かったけど、皆に誤解されるような態度を取っていた私が悪いの!」
「君は何も悪くない。悪いのは勘違いした此奴らだ。」

 そう言って彼女を抱き締めながら庇う友人を見てそういう事か……と納得した。

 信じたくはないが、彼女は取り巻きである友人達とも関係があったのだろう。

 顔色の悪い友人達と目が合うが、お互い気不味くてフイっと視線を逸らした。
 
 彼女の初めて捧げてくれたのだと浮かれていたあの時の俺を殴ってやりたい。

 落ち込んでいる俺に、彼女の衝撃的な言葉が追い打ちを掛ける。

「それにしても可哀想よね。一途に貴方の事を想い続けていたのに、ずっと放置された挙げ句、大切な初夜まですっぽかされるなんて……。」

 え?
 一途?
 何が…どう…?

 色々告げられた話に頭が追い付かない。

「何でも幼い頃からの初恋なんですって。そう言えば貴方も幼い頃の初恋の話をしてたわよね。」
「もう…その辺りで…。」

 彼女の隣にいた友人が止めた。

「なん…だと…?」

 俺はこんな女を信じて愛していたのか。それでも俺を見捨てず、結婚してくれた彼女に酷い仕打ちを……。

 足元がフラついた俺を友人達が支えてくれた。

「だ、大丈夫…か…?顔色が悪いぞ。」

 その中の一人が心配そうに俺の顔を覗き込んでそう言った。

「あの子、あれだけ酷い扱いを受けても貴方の事を好きだったんでしょ?なら、これからは大切にしてあげてね。」

 そう言った後、きゃらきゃら笑う彼女。

 その笑顔は幼い頃一目惚れした少女とは似ても似つかない。

 今まで俺の全てだった彼女はまがい物だった?

 それに……、

 好き…?
 あの女が俺を?
 そんな素振りなどされた事……?

 違う。そうじゃない。

 俺はあの女の我が儘で婚約が結ばれたと思っていた。
 
 そして、目の前で友人と赤ん坊と一緒に幸せいっぱいに笑っている女から聞かされた婚約者の悪い噂を信じて虐げ蔑ろにし続けた。

 幼い頃からずっと俺の事が好きだったのか?
 だから結婚を……?

 なら、俺が彼女にした仕打ちは……!?

 俺はあまりの衝撃にフラフラとその場から出て行った。

 今更謝っても赦して貰える筈など無いとわかっている。
 だが、謝罪し続け、彼女が謝罪を受け容れてくれたら…その時は…彼女の望む通りに……。

 乗って来た馬に跨がり邸へと急ぐ。

 俺は馬鹿だ!
 初夜をすっぽかされた花嫁が婚家でどんな扱いを受けるか…知らなかった訳じゃ…。

 だが、まだ間に合う。
 彼女が望むなら初夜だって……。

 そして、帰り着いた俺は真っ直ぐに寝室へと向かった。

 深夜だから小さく扉をノックした。

 ……。
 ……。

 暫く待ったが返事は無い。

 眠ってしまったのか?

 ドアノブをゆっくり回すと鍵は掛かっていなかった。
 音を立てないようにそっと扉を開いて中に入った。

 ベッドサイドに置かれたランプの灯りだけが灯った部屋の中は薄暗い。

 だがベッドの上に横たわる人影が見えた。

 やはり眠ってしまったのだろう。

 足音を忍ばせてベッドの傍まで行くと、ベッドの上で仰向けで足を真っ直ぐ伸ばし、胸の上で手を組んで眠る彼女。

 起こさないようにそっとベッドに上がると彼女の傍に座ってその姿を見た。

 俺が酷い言葉を浴びせ、あの女の元へと行ったからだろう。
 寝衣は初夜用ではなく、ごく普通の物に着替えられていた。

 その時、胸の上で組まれた手に何かが握られている事に気付き、組まれた手を解いて抜き取ったらハンカチだった。

 何故こんな物を?

 訝しく思いながらハンカチを広げて見た。

 ドクン!!

 心臓が嫌な音を立てた。
 鼓動は速まり、息が苦しくなる。

 何故彼女がこれを!?

 見覚えのあるハンカチ……。

 それは幼い頃のお茶会で、あの子の涙を拭いてあげたハンカチだった。

 震える手で彼女の頬に触れた。

 少し冷たいような気がした。
 上掛けを掛けずに寝てしまったからだと思ったが、何だか嫌な予感がした。

 ふと、ベッドサイドの小さな丸いテーブルに目が行った。

 四角くて白い物が……。

 それが封筒だと気付いた俺は、彼女の両肩を掴んで揺すった。

 だが、彼女は目を覚まさない。

 心臓が引き絞られるように痛い。

 彼女の鼻と口に触れるほど近くに耳を寄せたが、息をしていなかった。

 体がガクガクと震え出す。

 ベッドから降りて部屋の入り口まで走ると、扉を開けて大声で使用人を呼んだ。

 そして再びベッドの上に戻ると、彼女の名を呼び体を揺するもその目が開かれる事は無かった。

 彼女の体に縋り付き、その名を泣き叫ぶ俺は、医師を連れて来た執事に羽交い締めにされ、彼女から引き剥がされた。

 放心して床に座り込んでいる俺の前に屈んだ医師が告げた。

「御臨終です。死後二、三時間といった所でしょう。ご愁傷様です。」

 頭に入った筈の言葉が理解できない。
 
 ただ…もう俺は彼女に謝る事すらできないのだという事はわかった。

 と、いきなり襟首を掴まれ強引に立たされた俺の左頬に激痛が走るとともに床に叩き付けられたような衝撃を受けた。

「馬鹿者が!あれほど彼女を大切にしろと言っていただろう!!」
 
 声のする方を見上げると、髪を振り乱し額に青筋を立て、顔を真っ赤にした父が肩で息をしながら握り拳を握って立っていた。
 

 
 △▽△▽▽△▽△▽△



 その後、父の指示で邸内は落ち着きを取り戻し、明るくなった部屋で見た彼女の顔色は白かった。

 眠っているようにしか見えないのに、頬に赤味が無い事で死んでいるのだとわからされた。

 俺は放心したまま彼女の顔をずっと見ていた。

 目を開けてくれるのではないか……そう思いながら……。



 急に部屋の外が騒がしくなったと思ったら、いきなり扉を開けて彼女の両親が入ってきてベッドに駆け寄る。

 彼女の母親は泣き崩れ、それを抱き止めた父親は憎しみを滾らせた目で俺を睨んだ。

「これは、どういう事だ?世界中で一番幸せな筈の花嫁が…何で…こんな……。」

 涙を流し、声を詰まらせ俺に問うた。

「申し訳…ありません…。全て俺の所為です。」

「あ、貴方が…貴方が…殺したのよ!返して、あの子を返して!!」

 髪を振り乱し、泣き叫び俺の体を拳で叩きながら彼女の母親は喚いた。

 そのまま気を失った母親は、すぐに部屋から運び出されて今は客間で休んでもらっている。



 △▽△▽△▽△▽△▽△



 あの後、両親と俺と彼女の父親は応接間のソファーに向かい合って座っている。

 使用人達は寝室の扉の前に立っている侯爵家の騎士と、彼女の母親に付いている侍女と医師と看護師以外の使用人達は自室に下がらせた。

 執事がお茶を淹れ、それぞれの前に置いた後、扉の前まで下がった。

 
 父が懐から三通の封筒を出すと、彼女の父親の前と俺の前と自分の前に置いた。

「彼女が遺した物です。これを読まない事には彼女に何が起こったのかわからないので…。読んであげましょう。」

 父が言った後、それぞれが封筒を手に取って開け、中に入っていた便箋を広げて読む。

 応接間に沈黙が訪れ、時計が時間を刻む音と時折便箋に指が触れるカサリとした音だけが響く。

 暫くするとその音に鼻を啜る音と嗚咽を堪えているような音が混ざった。

 俺は嗚咽を堪えて口を手で押さえた。

 彼女からの初めてで最後の手紙を読んだ俺は、読み進める毎に後悔が身の内に溜まっていき、絶望に染め上げられていった。


 あの時……。そう何度も思って
 いくら後悔してもし足りない。

 何故なら……、


 遅すぎたからだ。



  ──  完  ──


~~~~~~~~~

 これにて終わりです。

 長々とお付き合い(お読み)いただき、ありがとうございました。
 そして、お疲れ様でした。

 またまた暗~いバッドエンド。

 にも拘わらず読んで下さった方々!
 ありがとうございます!
 嬉しくて小躍りしてしまいます。
 ヽ(´▽`*)ゝあ~ぃ!

 では、また!!
 次作でお会いしましょう!
 (*・ω・人・ω・)
 
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