もう、嫌だ!!

雫喰 B

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── 繰り返しの章 ──

4.

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    その女の名はローゼ。年は二十歳だという。
 
「国王の生誕祭なんて、クソッ食らえよ!!」

 その言葉を聞いて、自分が不幸だから“人の祝い事”に腹を立てる奴の、よくある暴言等の類いだと思って聞き流そうとした。

 か、次に耳に入って来た言葉が何故か引っ掛かったのだ。

「あんなの、人攫いの書き入れ時じゃないの!!迷惑なだけよ!!」

 俺は隣に座っている奴が何か知っているかもしれないと思い、

「えらく荒れてるな。生誕祭に何か恨みでもあるのか?」

 と、話を振った。

「あぁ、何でもその日に、親と逸れたところを人攫いに遭ったらしいぜ。」
「…そいつぁ…。」
「けど、祭りで親と逸れて…なんて、よくある話さ。」
「だな。」

 結局、その話はそこで終わったのだが、何故か分からないが、何かが引っ掛かっていた。

 だが、それが何なのか調べる前に、時が巻き戻ってしまった。

 

~~~~~


 またか……。

 いい加減、腹が立ってきた。
 どうすれば彼女が幸せなままでその一生を終え、巻き戻らずに済むのか……。

 巻き戻りの条件は、人生半ばでの“彼女の死”だと分かった。

 だから、彼女が死なないように最善を尽くしている筈だった。
 なのに彼女は死んでしまう。

 前回、初めて俺の前に姿を現した人物……。

 あの女……ローゼという名の女が関わっているような気がした。
 だから、探す事にしたのだが……。

 結果から言えば、未だ見つける事が出来ていない。

 当然だ。

 王都のように大きな街で、どれ程沢山の人が暮らしているか、それを考えれば当たり前の話だった。

 今生ではエリーとは一切関わらないように生きてきた。
 これまでの巻き戻りでも、その方が彼女が長生き出来ているからだ。

 とは言っても、二十一才までなのだが……。

 俺が彼女と関わらない事で、彼女が長生き出来ているから、俺が誰かに恨みを買っているのかと、思い違いをしていた。

 俺と彼女が関わりを持つ事で、彼女は十八才という若さで死ぬ。

 だから、俺も無関係ではない。
 
 そして、何度も繰り返す巻き戻りの中で、共通している事があった。

 それは彼女の結婚だった。

 どの巻き戻りでも、彼女の結婚が決まった後に、彼女が亡くなっているのだ。
 しかも、毎回惨い死に方をしている。

 俺との結婚が決まった時に亡くなるのが早いのは、巻き戻りの中で、結婚が決まるのが一番早いからだった。

 彼女を殺した犯人は、彼女が幸せになる事が赦せないのだろう。

 だが、動機が分かったところで、犯人が誰なのか?
 それさえ分かれば、彼女を死なせずにすむのに……。

 何処だ?何処にいる?
 犯人は誰なんだ?

 彼女の身辺に目を光らせるも、影も形も見当たらない。

 気持ちだけが焦る中、運命の強制力なのか、これまでにも何度もあった、彼女の人生と俺の人生が交わろうとする。

 だが、俺との結婚が決まった(十八才で彼女が亡くなる)年令を過ぎると、その強制力みたいな物は無くなる。

 その後、次に結ばれる予定の人物との結婚が決まる。

 毎回、そんな感じで巻き戻りの人生は進んでいくのだ。

 けど、正直辛い……。

 彼女の人生と交わろうとする力が働く時、愛しているのに優しく接する事が出来ない、態と嫌っているように振る舞わなければならない。

 おまけに、傷ついた彼女の顔を見ても、何とも思っていない風を装う。

 俺自身の力で、彼女を幸せにしたい、いつも笑顔でいられるようにしたい……。

 だが、彼女が惨い死に方をしなければならないと思うほどの恨みを抱いている人物を見つける為に、心を鬼にして探すのだ……何度も巻き戻りながら……。

 もう、嫌だ!
 巻き戻りたくない!

 なのに……何度も彼女の惨い遺体を見せつけられる。

 俺に如何しろというのか?
 俺に何をさせたいんだ?

 何度巻き戻っても分からない。

 数え切れないほど巻き戻っているのに……。

 如何すれば終わりを迎える事が出来るのか……。

 

 そして遂に、見つけた!

 ローゼだった……。

 彼女だったのだ。
 関わりがあるなんて物じゃ無かった。

 ある悪徳商人の妾になった彼女が、一方的にエリーに恨みを抱いて、あの様な惨い目に遭わせていたのだ。

 何がローゼにそうさせるのか、全く分からなかった。

 何故ならば、エリーとローゼの間には、何の接点も無かったからだった。

 そして、それが分かるまでに、俺はまた何度も巻き戻る事になる。

 

~~~~~~~

すみません!
ヒロインの名前を間違えていました。

アリス ではなく、
  ⇩
エリー がヒロインの名前です!

(ヒロインの名前を間違えるとか……!無いわぁ……。byギデオン)
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