apocalypsis

さくら

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tu fui, ego eris

viginti unus

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 天弥が深くため息を吐く。
「僕の代わりですよ……」
 見下げ果てるような視線を羽角に向けながら答えた。
「……クローン……?」
 代わりと言われ、思い付くものが他には無かった。
「それならまだマシなのですが……」
 クローンをマシだと言う。それ以上のものとは何なのかを考える。
「僕の子供ですよ……」
 心底呆れ果てたような口調だ。
「子供……?」
「僕の代わりの鍵を作るため、自分の研究と実益を兼ねたんです」
 斎も羽角に視線を向ける。
「相手は……?」
 天弥の代わりが欲しかったのなら、クローンの方が確実ではないのかと思うが、研究と実益とはなにかを考える。
「相手は……」
 言いにくそうに口ごもる様子に、斎は最悪の想像を浮かべる。
「先生です」
「俺?」
 予想とはまるで違う答えに、斎は思考が一瞬、停止する。
「無理だろう?」
 天弥は再びため息を吐く。
「マウス実験では、メス同士、オス同士は成功していてね。それなら人間も可能だろう」
 横槍を入れるように羽角が口を挟んできた。確かに、メス同士のマウス実験は日本で、オス同士のマウス実験は中国で成功している。理論的には可能だろうが、それを行うという倫理観の無さが恐ろしかった。
「由香子の身体も使える状態だったというのも幸運だった」
 何が幸運だと言うのか、斎には理解できなかった。胃の奥底からなにかがこみ上げてくる。
「クローンでも良かったのだが、寿命が短い。その点、子供なら寿命の問題はクリア出来る上に、能力と身体のバランスが良いものが出来るかもしれない」
 本当に、自分の子も孫も、ひ孫さえも道具でしかないのだと知る。
「天弥……」
 低く何かを押し殺したような斎の声に、天弥は視線を移した。
「送ってやれ……。お前が望むところに……」
「そうですね」
 天弥は、再び視線を羽角に移す。
「もう、会うことはないでしょう」
 言い終わると同時に、羽角が闇に包まれる。
「ハズミ!」
 サイラスが闇に包まれる羽角に駆け寄る。
「どこへ送る気だ?」
「幻夢境ですよ」
 羽角の問に、天弥は望む答えを与える。
「ただし……」
 羽角を包む闇が収束すると、そこには人影もなく、最初から人など居ないように思えた。
「土星のですが……」
 羽角が消えた場所に呆然と立ち尽くすサイラスがゆっくりと天弥へ顔を向ける。
「天弥……俺も行かせてや……」
 ゆっくりと天弥へ近づいてくる。
「ハズミと同じところへ行かせてや!」
 切羽詰まった様子で天弥に食って掛かる。だが、天弥はクビを横に振った。
「なんでや? なんでダメなんや?」
「貴方には、本当のご家族が居るでしょう?」
 ハッとした表情を浮かべた後、サイラスは力なく俯いた。知りたいと思っていた家族が、今は足かせになっているのだ。本当の家族と過ごす時間よりも、羽角と過ごす時間の方が長かった。
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