apocalypsis

さくら

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tu fui, ego eris

undecim

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「どうした?」
 突然のことに、斎が問う。
「先生、あれ食べたいです」
 チラリと天弥が指差すものを見る。昨日のファストフードのチェーン店だった。
「あそこでいいのか?」
「はい」
 天弥が食べたいと言うのならと、斎は店の駐車場へ車を入れる。少し変わっているとは言え、この天弥は十六歳なのだ。やはり、こういう店が良いのだろうと納得する。
「僕、ちゃんとご飯を食べたのって、昨日が初めてだったんです」
「そうか」
 斎の記憶にある限り、この天弥が何かを食べていることが無かったことを思い出す。もう一人とは違い、あまり亮を食べてはいなかったが、それでも食べることには興味があるようで安心をした。
 店内に入ると、天弥は開いている席に着く。
「なにが食べたいんだ?」
 天弥に尋ねる。
「おまかせします」
 それが困ると思いながら、斎は注文場所へ向かう。適当に、限定商品というのを二人分、注文をする。支払いをしてから、そう待たずにハンバーガーなどが乗ったトレイを受け取り、天弥の元へ向かう。机の上にトレイを置くと、天弥と向い合せになるように斎も着席した。
「先生は……」
 トレイの上からハンバーガーを取りながら天弥は口を開いた。
「どういう結末を望んでいますか?」
 包装紙から取り出したハンバーガーに口を付ける。斎は考え込む氷女をして、答えを口にしなかった。というよりは出来なかったのだ。
「お前こそ、どんな結末を望んでいる?」
 質問に質問で返すのは失礼だとは思うが、答えられなかったことと、知りたいことがあるということで、思わず尋ねてしまった。
「そうですね。あの二人には、絶望の底へ案内したいのですが、それはどうすれば良いのでしょうか?」
「考えている訳では無いのか?」
 斎もハンバーガーに手を出す。
「望みを叶えないことが最良かと思っていましたが、諦めが悪い二人なので……」
「そうみたいだな……」
 天弥がダメなら、代わりを用意すればというようなことを平気で言っていた。
「そう思ったら、先生が言っていたことの方が良いのかなと……」
 点やはドリンクの紙コップを手にし、ストローを口に入れる。
「なんですかこれ? ものすごく甘いのですが……」
「甘いものは嫌いか?」
 つい癖でジュースを選択してしまった。
「嫌いというか……。あまり積極的に飲みたいものでは……」
 同じ身体でも、好みは違うのかと納得する。
「悪かった。聞けば良かったな……」
 天弥は紙コップをテーブルに置く。
「なにか買ってくる。紅茶とかの方が良いか?」
 そう聞かれ、天弥はテーブルに置かれている斎のコーヒーを手にした。
「これで良いです」
 手にしたコップを手にし、口を付ける。だが、すぐに口を離した。
「これ、熱くて飲めません!」
 手にしたコップをテーブルに置く。
「お前は、結構、可愛いんだな」
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