apocalypsis

さくら

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alea jacta est

viginti novem

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「分かった。だが、絶対に無理はするな。ダメだと思ったら、すぐに止めろ。いいな?」
「はい」
 天弥を守りたい。それは紛れもない事実だ。だが、その他を捨てる選択は出来なかった。両親、姉夫婦に姪、生徒たち、たくさんの者たちとか変わっている。天弥もそうだろう。それらを見捨てることは選べないのだ。
「あの二柱の神の間に空間を開けるか?」
 あまりにも神が巨大すぎて、距離感が掴めない。目視できるのだけが救いだった。
「やってみます」
 神々の近くに暗い闇が現れる。だが、おそらくそれは手前過ぎるだろうと予測される。
「もう少し奥」
「はい」
 なんどか位置の調整が行われ、ほぼ狙い通りの場所に出現させることが出来た。
「次は、空間を広げられるか?」
「やってみます」
 真剣な二人のやり取りを、肩をすくめ胡桃沢が見つめた。空間の出入り口の広さがどれぐらい必要なのか検討も付かなかったのだ。
「先生、どこへ移動させればいいんですか?」
 斎が少し考える。可能なら、フォーマルハウトにでも飛ばして、三つ巴の争いをしてくれれば良いのだが、そこまで移動させられるのかも分からない。それに、場所を知らないと移動できないようだというのもある。
「とりあえず、前回の南極なら出来るか?」
「たぶん……」
「なら、そこへ」
 広がった闇の空間が、神々を引きずり込もうとするが、二柱共、大人しくされるがままになるはずもなく、抵抗を始める。風は更に荒れ、海面も激しく唸る。すぐ近くというのに、この場所はあまり被害を受けていないが、陸地はどうなっているのか分からず、斎は視線を陸地方面へ向けるが、様子が分かるわけもなかった。
「せ、先生……」
 激しく抵抗し暴れまくる二柱の神に対抗し、なんとか空間の入り口へ押し込めようとするがかなり厳しい状態である。
「天弥! 無理はするな!」
「でも……」
 このままではどうなってしまうのか、天弥も理解していた。そのため、身体が悲鳴をあげるような状況でも止めようとはしなかった。
「もういい! やめろ!」
 天弥の顔色、小刻みに震える身体。つらそうな声音などから、斎はすぐにでも止めるように叫んだ。この二柱の争いは、無限に続くわけではない。ある程度の争いのあと、クトゥルーはルルイエに、ハスターはヒアデス星団へ帰るだろう。互いに、相手を完膚無きまで叩きのめすのは無理なのだと思いたかった。
「せんせ……ごめんなさい……」
 天弥の限界が来たのだと思われる。謝罪を口にした後、まぶたがゆっくりと閉じられ、なにかに引っ張られるように背後に倒れていく。斎は慌てて支えるように天弥の身体を抱きしめる。急ぎ確認をして、呼吸があり鼓動が動いていることに安堵した。無理をさせたのは分かっていた。だが、他に選択肢が無かったのだ。
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