apocalypsis

さくら

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alea jacta est

viginti quattuor

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「そうじゃ」
 なら、天弥は何だというのか。それが分からない。胡桃沢が斎を見る。その様子から、まだ全てを知っている訳では無いことを知る。天弥が話していないのだとしたら、これ以上、この話題に触れるのは止めた方が良いと判断した。
「あ!」
 天弥が空を仰ぎ見る。道標を辿るように、強大な存在が降りてくる。
「あれがハスターかのぉ」
 興味深げに胡桃沢が足を踏み出し近づこうとした。人々の輪から、歓喜の声があがる。斎自身も、かなり興味を惹かれ、もっと近くで観察をしたいという欲求に駆られる。だが、天弥が抱きつきその衝動を止めた。
「先生……もう一匹? 来ます」
 神の数え方が間違っていると思うが、今はそれを問い質している暇は無かった。
「どっちだ?」
 天弥は、東京湾の出口方向を指差す。それと同時に、舞い降りてきていた神が動きを止めた。しばし、周囲を確認するような様子が伺えたのち、天弥が指差す方へと移動を始める。それを見た輪を形成する人々から困惑が湧き上がる。
「なんじゃ?」
「天弥が呼んだ神が来ました」
 周囲と同じく困惑する胡桃沢に答える。
「呼ぶところを見たかったのぉ……」
 何かを要求するような視線を、胡桃沢は天弥へ向ける。
「特に、これといったのは無かったですよ」
 斎自身、なにか特別な演出みたいなものがあると思っていた。なによりも、呼べばすぐに来るものだと思っていたから、拍子抜けした。まさか、海の中を自力で移動するとは思っていなかったのだ。距離を考えれば。かなりのスピードではあるのだが。
「それでも、その場に居合わせたかったのぉ」
 おそらく、これが最後の召喚になる。斎はさせる気が無く、もう道標になる媒体も無い。
「なら、なぜ姿を消したのですか?」
「野暮用がのぉ……」
 野暮用が何かは分からないが、間違いなく望みを叶えるためのことなのだろう。訪ねても答えてはくれないだろうと、斎は問い詰めることをやめ、風の神が向かった方を見る。海中をなにか巨大なものが移動しているからなのか、波が高くなり荒れている。
「ハスター相手なら、クトゥルーじゃな」
「はい」
 いきなり、強風が吹き抜けた。まるで、存在を敵対する相手に誇示しているように思える。
「先生……」
「どうした?」
 手にゃが考え込むように目を伏せる。
「先生とコモちゃんは守れるけど、あそこにいる人たちは……」
 流石に人数が多すぎるのだ。天弥自身は影響を受けないとしても、他の者までは流石に無理があるのだろう。気にするなとは言えなかった。斎は教団の者たちを見る。今の状況に不安や嘆きなどは見られず、むしろ狂気と歓喜に支配されているように見えた。あの集団をどうすれば良いのか斎も分からなかった。危険が迫っているから逃げるように促してもあの場所から動くことは無いだろうと思えた。
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