apocalypsis

さくら

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alea jacta est

viginti unus

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「 fhtagn」
「ふたぐん」
 全て言い終わった。だが、目に見えて天弥になにか変化があるわけではない。いきなり発光したり姿が変わったりとかなにかの変化があるのかもと期待をしていたのだが、SF小説やファンタジー小説でもあるまいしと、斎は気を取り直す。
「これで全部だが……」
 少し不安そうな表情を浮かべ、斎が尋ねる。もしかして、なにか間違いがあったのではと不安で仕方がないのだ。
「神様って海から来ますか?」
「おそらくは……」
 天弥はジッと南の方を見ている。
「来るのか?」
 無言で天弥が頷く。
「そうか……」
 成功はしたみたいで、斎は安堵した。たいそれたことをして安堵というのも変だが、それしか気持ちの表しようがなかったのだ。
「なら、今、どういう状況なのか確かめに行きたいんだが?」
 いつのまにか、激しく吹き荒れる風が収まっていた。
「はい」
 揃って立ち上がると、外に向かう。外へ出ると、あれだけの強風が収まり、むしろ無風と言っても良い状態だった。まるで凪のようだと斎は思うが、時間的にそれはありえず、不気味さが漂っているように感じた。
「召喚場所が分かれば……」
 斎は構造を思い出し、どこが最適か。自分ならどこを選ぶかを考えた。あまり選択肢はなく、確実にこの上の階だというのは予想できた。
「とりあえず上に」
 斎は天弥の手を取り、しっかりと握りしめた。その手を天弥も握り返す。互いにその手を離さぬようにと、祈りにも似た想いを描く。少し、気持ちを落ち着け、斎は足を踏み出した。エスカレーターはもちろん止まっている。一段ずつ階段を緊張しながら登って行く。登りきったとき、前方から歩いてくる人影が見えた。同じく、相手も斎たちに気がついたようだった。用心深く、斎は相手の出方を待つ。
 ゆっくりと歩み寄って来る相手の姿が確認でき、斎は庇うように天弥を後ろに隠す。
「来たのか」
 あまり驚きも無い様子で、羽角恭一郎は足を止めた。
「返事を聞こうか。由香子」
 斎の後ろに隠れている天弥に視線と言葉を向ける。天弥は黙って目を伏せた。
「なら、その男に選んで貰おうか?」
「だめ!」
 急に大きな声で天弥が否定をする。
「お前に損は無いだろう?」
「でも、天弥が……」
 甘い誘惑の言葉に乗ろうとしていた。そのときは知らなかったのだ。もし、自分が居なくなれば本来の天弥がどうなるのか……。
「天弥がどうなろうと構わないだろう?」
 首を横に振り答える。
「なにがどうなってるんだ?」
 斎は振り向き、背中の天弥に視線を向ける。
「由香子の身体はまだ生きている。望みを叶えるのなら、その身体をくれてやると言っているのだ」
「身体……?」
「でも!」
 天弥は、斎のシャツを強く握りしめる。情報が欲しくて、本来の天弥の記憶を深く探った。そして知ったのだ。
「僕が居なくなったら……天弥が死んじゃう……」
 天弥の発言に斎が凍りつく。
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