apocalypsis

さくら

文字の大きさ
上 下
200 / 236
alea jacta est

undeviginti

しおりを挟む
 斎を危険な目に合わせたくはないと思うが、ここに来てしまった以上、むしろ一緒に居るほうが安全なのではと考え、天弥は頷いた。
「あ……」
 突然、天弥はなにかを思い出したような声を発する。
「どうした?」
 なにか救いを求めるような視線を、天弥は斎に送っている。
「えっと……僕……」
 少し困ったように視線を落とした。
「どうやって神様を呼べば良いのかわかんない……」
「は?」
 突然のことに、斎は驚きの表情を浮かべ、その後は考え込むような表情へと変わる。
「南極ではどうしたんだ?」
 確実に二柱を召喚している。あれは、どうやって呼んだというのか。
「えっとね。闇の神様は、普通に来てくださいって言ったら来てくれた」
「そうか……」
 闇の神は、本来の天弥とつながりがあるようだから、それは頷けた。
「クトゥグアはどうした?」
 天弥が小首を傾げながら斎を見る。あまり理解していないことはすぐに理解できた。とりあえず話を聞こうと室内への移動を考える。異常気象と判断されたのであろう。周囲の店舗には人がいる気配はなかった。とりあえず、一番、近い場所を目指す。天弥は大人しく手を引かれ付いて行った。向かい風ではなかったため、そう苦労せずに辿り着くことが出来た。店内に風は吹いていないが、強い風が窓を揺らし大きな音を立てている。二人は揃って椅子に腰掛ける。
「それで、クトゥグアはどうしたんだ?」
「くとぐあ……?」
 そこからかと斎は軽く肩を落とした。
「火の神だ。燃えているのはどうしたんだ?」
 言われて理解できたと言わんばかりに天弥の顔が輝く。
「あれは、サイラスくんが言う変なのを続けてまねしたら来たの」
「もしかして、呪文だけで召喚出来るのか?」
 再び、天弥が小首を傾げる。
「Ph'nglui mglw'nafh Cthugha Formalhaut n'gha-ghaa naf'l thagn! Ia! Cthugha! これか?」
「あ! 変なの! それを真似したら来た!」
「そうか……今は言うなよ」
 天弥が頷く。サイラスのアドバイスだとい言うのならさもありなんだ。でなければ、対立する神も知らず呪文も知らない、この天弥には無理だっただろう。
「今回も呼べるか?」
 首を捻り、天弥は考える。
「えっと……たぶん……?」
 ハッキリとしない返事だが、おそらく天弥にも分からないのだろう。何も知らず、何も理解せずによく前回のようなたいそれたことが出来たものだと感心をする。
「前と同じのを呼べば良いの?」
「いや、今回は別のだ」
「はい」
 天弥の返事を聞くと、もう一人、神ではないが眷属を呼んだ者が居たことが脳裏に蘇る。眷属とはいえ、呼び出すには色々と制約がある。おそらくは、呪文だけで呼んだのだ。だとすると、北川絢子は風に関する何かがあるのかもしれない。そして天弥はなにが関係するのかと考える。まず間違いなく、北川絢子とは比べ物にならない力を持っているのだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...