apocalypsis

さくら

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errare humanum est

quattuordecim

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「デートは無理だが、行きたいところがあるなら連れて行く」
 正直、家に帰すのは不安だった。天弥の母親は、義理というのを差し引いても不信感がある。平日は学校があるが、週末はずっと一緒に居させるのは止めた方が良いように思えた。
「別に行きたいところはありません」
 この天弥は、ずっと閉じ込められていたと言っていた。それなら、やりたいことや行きたいところがあるのではと思ったのだが、違ったのだろうかと美しすぎる横顔を見つめる。
「でも、先生が連れて行ってくれるのなら、付いて行きますよ」
「分かった」
 今は、斎かサイラスのどちらかの傍に居るのが確実なのだ。しかし、サイラスは入院中であるため、消去法で斎しか居ないと決断をした。
「じゃあ、着替えたらなにか食べに連れて行って下さい」
 朝食を食べていないことを思い出す。
「なにが食いたい?」
 尋ねながら、無意識に甘いものを食べられる所を脳内で探す。
「栄養とカロリーが取れるのなら、特に指定はありません」
 色々と思考したことが無駄になった。
「食うことに興味が無いのか?」
「そうですね」
 だからと言って、他に思い付くところが無く、以前、連れて行った店に行くことに決める。
「そうか」
 本当に別人なのだと納得をせざるを得ない。もしかすると、そう微かな望みを抱いていたのだ。

 夜の21時すぎ、斎と天弥の自宅近くの公園で、揃ってベンチに腰掛けていた。直接、天弥を家に送るつもりであったが、天弥が歩きと公園への寄り道を望んだのだ。特に話すこともなく、ただ揃ってベンチに腰掛け続けている。
「先生、明日は学校ですか?」
 突然、静けさを破るように天弥が尋ねてきた。
「そうだな」
 さすがに、明日も休むと言う訳にはいかない。
「では、僕も明日は学校へ行きます」
 なぜと疑問に思うが、近くに居てくれるというのなら、と安心を覚えた。もし、入れ替わることがあっても見逃す機会が減るのだ。
「分かった。待っている」
 返事が合図であったかのように、天弥は立ち上がると移動し、向かい合うように斎の前に立つ。そして、手を伸ばすと邪魔くさそうに眼鏡を外し、唇を重ねる。
 すぐに倦怠感が斎を襲うが、手加減をされたのか動けなくなるほどでは無かった。
「おやすみなさい」
 唇が離れると一言だけ残し、天弥は公園を去っていった。斎は、黙って後ろ姿を見送る。いつ、終わるとも知れぬ今の状況に、少し疲れを覚えた。
せめて、天弥たちのことを知ることが出来たらと願うが、今の天弥ではなに一つ知ることは叶わないだろうと思う。一つため息を吐くと立ち上がり、家路をたどる。

 朝、教科室のソファに座り、斎は施策に耽っていた。手にした煙草からゆるりと紫煙が立ち上っている。今にも落ちそうな灰に気が付き、灰皿へ落とす。今日、天弥は学校へ来ると言っていたが、ここに来ることは無いだろうと思い、煙草を灰皿に押し付け火を消すと立ち上がった。廊下へ出ようとした瞬間、ドアがノックされる。思わず、期待が胸を過る。
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