apocalypsis

さくら

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errare humanum est

undecim

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「そうですね。取引を持ちかけるのではなく、こう言えば良かったのでしょうか?」
 斎を見つめながら、天弥はゆっくりと向かい合う膝に手を置く。
「責任を取ってください」
 天弥は喜びと期待に満ちた顔を斎に向けた。それに反し、斎は天弥の顔をまともに見ることが出来ない。負い目があるのは確かだ。だが、一つの身体に二人の人格があり、別の存在なのだと言われても納得はできなかった。
「分かった……」
 こう答えるしか出来ないことを分かっている問に、困惑を覚えながらも承諾をする。
「ありがとうございます」
 嬉しそうに笑みを浮かべた表情がいつもの作ったものとは違う、とても自然なものに見えた。
「そういえばこの指輪、なかなか情熱的な言葉が掘ってありますね。これって僕への告白ですか?」
「違う」
 たしかにそう思われても仕方がないが、英語だとすぐに知れてしまうと思い、恥ずかしさも手伝ってラテン語にした。ただそれだけなのだ。
「違うのですか? ラテン語だから僕への告白だと思いました」
 獲物を追い詰めるような楽しさを思わせる笑みを浮かべながら、斎と視線を合わせる。
「愛している。お前だけだ」
 指輪に掘られた言葉を訳され、斎はおもむろに視線を反らす。
「先生が僕のものなら、僕も先生を愛していますよ」
 以前なら、その言葉が何よりも望むものであったが、今は違う。
「悪いが、俺が愛しているのは一人だけだ」
「そうですか」
 斎の返事にさして興味が無いような答えを返す。
「ラテン語と言えば、『彼女』って誰だ?」
 この天弥に殺されかけたとき、口にしていた言葉を確認できる機会が来たことを残念に思うが、謎は一つでも解明しておきたかった。
「ヤキモチですか?」
「いや……」
 天弥の様子から、答える気が無いのは分かるがこのまま引き下がるつもりもない。
「それは残念です」
 露程も残念とは思っていない声音が響いた。
「それよりも、外へ行きたいです」
 話を反らしたいのかと考えたが、そもそも天弥にとってはどうでも良い話題なのだろうと思えてならない。
「退院許可はまだだろ?」
 天弥が不思議そうに斎の顔を見つめた。
「それって必要なのですか?」
 確かに、今の状態は普段と変わりないように見える。だが、見えるだけで回復しているのかどうかは分からなかった。あと、退院許可の前にクリアしておかないとならないことがある。
「退院の前に、家へ連絡はしたのか?」
「家族でもない人たちに連絡をしないとならないのですか?」
 逆に質問を返される。母親と妹は義理だろうが、父親も家族と思っていないのか不思議に思う。
「まぁ、先生が連絡しろと言うならしますが」
「なら、連絡をしろ」
 天弥が斎に向かい手を差し出す。その手を不思議そうに見つめた。
「僕の携帯、充電が切れてるので、先生のを貸してください」
 斎は、自分の携帯を差し出す。それを受け取ると、天弥は自宅の番号を押した。呼び出し音が鳴り、すぐに繋がった。
「もう少ししたら帰ります」
 それだけ言うと、通話を切る。そして、携帯を斎に向かって差し出した。
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