apocalypsis

さくら

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date et dabitur vobis

sedecim

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 昼休み、昼食を取りながら斎は妙にテンションの高い天弥に違和感があった。いつもの物静かな受け身とは違い、かなり積極的にしがみ付き離れようとしない。口数も多く、まるで時間を惜しむかのような印象を受ける。
 昨夜も、電話をしている途中で反応がなくなってしまった。眠ってしまったというのは簡単に理解できたが、そうなるまで天弥が会話を続けたことが以外だった。普段はあまり会話が続かず、電話はすぐに終わりを告げてしまうのだ。
 斎は自分に向けられている視線を感じ、天弥を見た。
「どうした?」
 じっと自分を見つめる天弥に向かい、声をかけた。天弥は斎に笑顔を返す。
「先生、放課後ドライブに行きたいです」
 絶対に変だと斎は思う。今まで、天弥から放課後や休日の希望を言ってきた事などなかった。
「どこか行きたい所があるのか?」
 天弥が少し考え込む。
「えっと、海とか夜景とか見たいです」
 その答えに、さらに疑問を持つ。天弥はどちらかといえば食い気が優先で、そのようなデートの定番のような場所を望んだ事は無かった。
「じゃあ、海でも見に行くか?」
「はい」
 嬉しそうに微笑みながら答え、天弥は再び弁当に箸を付ける。
「あ、先生。女の子が喜びそうな物って分かりますか?」
 箸を持つ手が止まり、何かを思い出したかのように、天弥が尋ねる。なぜ、女の子の喜びそうな物を自分に尋ねるのかと斎は少し苛立ちを覚えた。
「女の子って?」
 苛立ちと、問い質したい気持ちを押さえ込み、斎は平静を装った。
「もうすぐ、花乃の誕生日なんです。プレゼントは何が良いのか、まったく分からなくて……」
 斎の感情が落ち着く。
「土曜日にでも色々見てみるか?」
「ありがとうございます」
 さらに斎に寄り添い、天弥は嬉しそうに礼を述べた。
「そういえば、先生の誕生日っていつなんですか?」
 斎の顔を見上げ、天弥が尋ねる。
「俺は四月だから、もう終わっている」
 その言葉に、天弥は残念そうな表情を浮かべた。
「天弥はいつだ?」
 斎は自分の弁当のおかずを天弥に差し出しながら尋ねる。
「二月なので、僕も終わってます」
 答えた後、天弥は自分に差し出されたおかずを口に入れた。
「なら、来年は今年の分も一緒に祝うか」
 返って来た斎の言葉に、天弥の表情が一瞬愁いを帯びる。その表情を見逃しはしなかったが、理由が分からないため問い質す事はしなかった。天弥は斎の言葉に答えることなく、弁当に箸を付けはじめた。
 あきらかに天弥の様子がおかしい事は分かるが、それに対してどう対応すべきか思い悩む。そもそも、天弥の様子がおかしい原因は何なのかを考えてみる。
 最初は、離れていた間の時間を埋めようとしているのかと思ったのだが、誕生日の話の時はそれとは感じが違った。
「はい」
 天弥の言葉と共に差し出された玉子焼きへと、斎は視線を移した。口に入れたそれは、いつもと変わらない恐ろしいほどの甘さをしている。黙って玉子焼きを食べる斎を、天弥は嬉しそうに見つめた。
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