apocalypsis

さくら

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date et dabitur vobis

decem

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 斎の、天弥を取り戻すという言葉から、天弥はそこで寝そべっている神に連れ去られたのだと思っていた。だが、目の前の状況を見る限り、そのような様子は見受けられない。斎は、何から天弥を取り戻そうとしているのかが分からない。
 そもそも、斎が天弥以外の誰を好きだというのかが謎である。つい先程までの様子では、天弥の事しか頭にないようだった。斎はハッキリと俺の天弥を取り戻すと言っていたぐらいだ。二人の関係が終わっているとは思えない。
 今の考えの中に引っかかりを覚え、思考を巻き戻す。わざわざ、斎は俺のという言葉を付け加えていた。天弥が言った言葉と照らし合わせて考えてみる。もし、斎が好きだというのが普段の天弥だとすれば、話は繋がる。
 斎の中では、それぞれの天弥が別人として認識されており、取り戻したいのは普段の方で、取り戻す相手は本来の方という事になる。それなら、天弥の自分が出て来られなくなった時の元凶が斎だというのも理解できる。
「引き受けてもええで」
 いずれにせよ、天弥を取り戻した後は斎と争うつもりでいた。それなら得点が付いていた方が良い、そう判断をする。
「ありがとうございます」
 天弥は笑みを浮かべながら、礼を述べた。
「そんで、排除ってどこまですればええんや?」
 今の斎を相手にするのは、容易な事ではないと想像できる。おそらく、手加減などしている余裕はない。
「僕の目の前で消えてもらうのが一番良いのですが、その辺はお任せします」
 そう答えると天弥はソファーから立ち上がった。続いて気だるそうに黒豹が身体を伸ばし、ソファーから降りた。
 サラリと恐ろしい事を口にしながらも、天弥の表情は何一つ変わる事は無い。笑みを浮かべたまま、軽く頭を下げた。
「それでは、お邪魔しました」
 頭を上げると天弥はドアへと向かいだす。
「ちょー、羽角はどこに居るんや?」
 急いで立ち上がったサイラスは、天弥を引き止める。天弥は足を止め、サイラスへと視線を向けた。
「先に教えてしまったら、取り引きにならないでしょう?」
 天弥の言葉に、サイラスはもっともだと思うが手がかりを失うわけにはいかず、食い下がろうとする。
「せやけど、目的を達成した後に教えてくれるっちゅう保障もないやろ?」
 寧ろ、このまま天弥を手元に置いておく方がより確実だ。そう考え、サイラスは手を伸ばし天弥の腕を掴む。
「では、前金代わりに少しだけ」
 そう言うと天弥は自分の腕を掴んでいるサイラスの手に、自分の手をそっと重ねた。
「祖父は今、日本に居ます」
 天弥の言葉に、サイラスはさして驚きもしなかった。真っ先に予想はしていた事だったのだ。だが、その予想が確定してしまった事で、新たな不安がサイラスの中を占めていく。
「大丈夫です。祖父は別に貴方の事を忘れているわけでも、必要としなくなったわけでもありません」
 サイラスの中にある不安に答えるかのように、天弥は艶を含んだ笑みと共に言葉を向けた。
「なら、何でや? 何で、連絡が来ないんや……?」
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